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妊産婦の業務軽減措置に関する損害賠償


(考察)
妊産婦の業務軽減措置について、義務違反に対する責任は追及されるものの、実質的な損害額については、かなり低い印象を受ける。

(重要文言)
面談から1ヶ月経っても、業務軽減に対応しなかったことが、
妊婦であったXの健康に配慮する義務に違反
Y2の不法行為責任及びY1社の使用者責任が肯定

業務軽減措置については、
指示をしてから1か月を経過してもXから申告がないような場合には、
Xに状況を再度確認したり、医師に確認したりして、Xの職場環境を整える義務を負っていた

Y2が面談から1ヶ月経っても何等の対応をしていなかったことが、職場環境を整え、妊婦であったXの健康に配慮する義務に違反したもの

平成25年8月以降適切な対応をすることがなく、同年12月まで業務軽減などの措置を執らなかったことが、就業環境整備義務に違反したものとして、債務不履行責任を肯定

(結論)
使用者責任及び債務不履行責任に基づき、連帯して35万円の損害賠償

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出向元による長時間労働の安全配慮義務違反


(考察)出向元に対しても、不法行為が発生するという所が参考になる。
(重要文言)
亡Kの自殺
出向労働者を指揮命令下に置いて使用するに際し、
① Kの労働時間、業務の状況
② Kの心身の健康状態を適切に把握し、

労働時間が長時間に及ぶ等業務が過重であるときは、
③ 人員体制の拡充などの措置により業務負担を軽減する措置

労働契約上の安全配慮義務があったとして、不法行為に基づくY2社の賠償責任が認められた。

出向元・Y1社は、
① 出向労働者が長時間労働をしていないかを定期的に報告させること
出向労働者が長時間労働をしているときは、
② その旨を報告するよう指示すること
③ 業務負担の軽減の措置を取ることができる体制を整える義務

不法行為に基づくY1社の賠償責任が認められた。

(重要条文)
民法709条(不法行為による損害賠償) :故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(事件概要)
Kの死亡は業務上の疾病によると認定
自死の直前約2ヶ月、月172時間及び月186時間

(判決)
Y2には、損害の賠償責任を負う(民法709条)

逸失利益 :4,105万3,000円
死亡による慰謝料 :Kに2,000万円、Xら各200万円
葬儀費用 :150万円


歩合給と割増賃金の調整に対する有効性


(考察)歩合給と割増金の算出に当たり、画期的な判例であると思われる。
(重要文言)
賃金規則
歩合給の算定に当たり、時間外・休日・深夜労働による「割増金」に相当する額が
対象額A(算定基礎額)から控除される結果、
「割増金」が支払われても、その分だけ歩合給が減少することになる
本件規定は労基法37条および公序良俗に違反しない

賃金の算出方式をどのように定めるかは、強行法規に違反しない限り当事者の自由というべき

揚げ高から経費に相当する部分を控除する算出方法をとることは不合理ではなく
揚げ高が同じであったとしても、時間外労働等がされた場合における労働の成果は、
時間外労働等に伴う残業手当等の増加により経費が増加する結果、相対的に低くなる

労使間で、あらかじめ、これを見越して残業手当等その他の経費に相当する金額を控除する方法で歩合給を算出するような方式について合意することを否定すべき理由はない

対象額Aから「割増金」などを控除した金額がマイナスになった場合でも、歩合給をゼロにするにとどめていて
残業手当等は、時間外労働等が行われていれば、必ず支給されることになる
労基法37条の趣旨を没却し、同条による規制を潜脱するものとは認められないとされた

交通費自体は必ず支給されるのであり、歩合給の算出に当たって交通費相当額が経費として差し引かれるにすぎないとして違法ではない

同じ揚げ高の場合に時間外労働等が少ないほど、歩合給が高くなるような算出方式を定めることも合理性がある

<賃金規則>
基本給
服務手当(タクシーに乗務せずに勤務した場合の賃金)
深夜手当
残業手当
公出手当
歩合給(1)=対象額A-{割増金(深夜手当、残業手当および公出手当の合計)+交通費×出勤日数}
最低補償給
交通費

対象額A={(所定内揚げ高-所定内基礎控除額)×0.53}+{(公出揚げ高-公出基礎控除額)×0.62}

「割増金」と歩合給(1)を合計した実際の支給額には変動はない
歩合給(1)がゼロ以下になることはない

<法解釈>
歩合給は、労働基準法27条の「出来高払い制その他の請負制」の賃金であると解され、
同条は、出来高払いその他の請負制の賃金制度の下で、
出来高が少ない場合でも、労働者に対し通常の実収賃金とあまり隔たらない程度の収入が保障されるよう、
労働時間に応じ一定額の賃金の保障をすることを要求している。

行政通達レベルでは、歩合給制度のうち特に累進歩合制度については、これを廃止すべきものとされている(平成元年3月1日基発第93号)
趣旨は、累進歩合制度は、営業収入などをその高低に応じて段階的に区分し、
階級区分の上位になるほど歩率を逓増させるものであるところ、
このような累進歩合制度の下では、歩率の変動する営業収入の直前の労働者に次の段階に到達するため長時間労働やスピード違反等を誘発させる結果になり易いという点にある

労基法37条は、割増賃金を支払うべきことを定めた規定であって、歩合給の算出方法について規制している規程ではない

就業規則等の定めによる計算方法が法定(労基法施行規則19条1項6号)の算定方法と異なっていても、算出される金額が法定の割増賃金額を下回らない限り、労基法37条違反ではない(昭和24年1月28日基収第3947号)

労災認定された自殺についての安全配慮義務違反の有無


(考察)
労災保険の決定とは異なる判決を示しているところが大きい。

(重要文言)
労災保険の支給決定がなされた家電量販店のフロア長であった亡Kの自殺
遺族が行った安全配慮義務違反を理由とする民事損害賠償請求
使用者に安全配慮義務違反は認められないとして棄却

業務の負荷を検討するにあたって、体感前に喫煙所や事務所内でほかの管理職と雑談するなどの時間があり、
体感までずっと作業に従事していたわけではない
勤怠記録の出退勤記録ではなく、就業時間ないし時間外労働時間を算定すべき

労働時間のみをもって極めて強い業務上の負荷を受けていたと直ちに評価することはできず、業務に関する諸般の事情を考慮する必要

(判決)
作業期間中の具体的業務に就いて、特段の負荷が生じる内容であるとは認められず、
Y社の支援・協力体制に不備があったとはいえない
人間関係についても特段問題はなかった
Kが精神障害を発症していたか検討するとして、労災医員意見書には直接これを裏付ける証拠は示されておらず、
同僚らのアンケートによれば、うつ病の症状があったとは認められず、発症を認める証拠美ない

Xらの主張は前提を欠く。
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