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定年再雇用規程の解釈


(考察)
定年再雇用規程の考え方を記した判例として参考になる。
(重要文言)
<定年後再雇用規程における定年後の再雇用契約について>
原則として契約期間を1年として締結し、
契約期間である1年が経過することにより終了
例外的に再雇用満了年齢に達した年月の月末を終期の上限として1年未満の契約を定めることが出来ると理解すべき

(訴え)
Y社に、60歳の定年後、嘱託社員として1年間の契約期間により継続雇用されていたX
再雇用満了年齢(満65歳)に達した日である平成26年11月7日の翌8日から同月末日までの再雇用契約の更新を拒絶された
就業規則などでは再雇用満了年齢に達した年月の月末までが再雇用期間とされており
契約更新について合理的期待があったなどと主張
賃金の支払などを求めた

(判決)
Xが再雇用満了年齢に達するとともに、本件雇用契約において契約期間の終期と定められた平成26年11月7日をもって定年後の再雇用契約が終了したというべき

Xの請求はいずれも理由がないとして控訴を棄却
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無期契約と有期契約の契約相違の合理性


(考察)
今後、同一労働同一賃金の話し合いがもたれるときに参考になると思われる。無期と有期の明確な違いをキッチリと考える必要がある。
(重要文言)
労働契約法20条の不合理性の主張立証責任
 有期契約労働者側
相違のある個々の労働条件ごとに
当該労働条件が期間の定めを理由とする不合理なものであることを
基礎づける具体的事実について主張立証責任を負う
 使用者側
労働条件が期間の定めを理由とする不合理なものであるとの
評価を妨げる具体的事実についての主張立証責任を負う
 労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
<不合理と認められるもの>
無事故手当
優良ドライバーの育成や安全の輸送による顧客の信頼の獲得といった目的は、両
社員のドライバーに対して要請されるべきもの
作業手当
正社員の基本給の一部と同視することはできない
給食手当
正社員の職務の内容や変更の範囲とは無関係に支給される
通勤手当
性質などに照らすと、合理性を肯定することはできない

<不合理と認められないもの>
住宅手当
正社員には転勤が予定されており
住宅コストの増大が見込まれる
有能な人材の獲得・定着を図るという目的自体は、人事労務上の判断として相応の
合理性を有する
皆勤手当
合理性を積極的に肯定することは困難であるとも考えられるが、不合理とまでは
できない
 無効と判断された労働条件の補充
労使間の個別的あるいは集団的な交渉にゆだねられるもの
無期契約労働者の労働条件を定めた就業規則などを適用しない場合は、不法行為による損害賠償責任が生じ得るにとどまる

(訴え)
Y社との間で、期間の定めのある労働契約を締結して配車ドライバーとして勤務したXが、
① XとYとの間には無期労働契約が成立しており、
仮にそうでないとしても、
無期労働契約を締結している労働者の労働条件と比較すると
無事故手当、作業手当、給食手当等の手当及び一時金の支給、定期昇給、退職金の支給に関して相違があり、
かかる相違は不合理であって公序良俗に反し、
平成25年4月1日以降は労働契約法20条にも違反して無効
② 労働契約上、上記各支給に関し、Yと無期労働契約を締結している労働者と同一の権利を有する地位にある旨主張
同地位にあることの確認を求め、
手取り賃金として最低でも月額30万円を支払う旨約したとして
③ 支払われた賃金との差額などを求めた

(判決)
Yの対応は、民法709条の不法行為を構成すると認められ、各手当の不支給額と同額の損害を被ったものと認められる。
 民法709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

契約期間途中の整理解雇の有効性


(考察)
労働契約法の改正(平成25年4月1日施行)有期契約社員の無期転換制度による2018年問題に伴って、企業間でのルール化が必要になると思われる。今後はこのような判例を多く目にするだろうと思われる。

(重要文言)
労働契約の有効期間中は労契法17条に拘束されるのが原則
 労契法17条(契約期間中の解雇等)
1. 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
2. 使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。
 やむを得ない事由とは、期間満了を待たずに直ちに契約を終了させざるを得ないような重大な事由

人員削減の必要性
債務超過や赤字の累積など高度の経営上の困難から人員の削減が必要であり、
企業の合理的な運営上やむを得ないものとされるときには、
これが存在すると解される。
 本件)
累積赤字が減少傾向にあり
人員削減計画の具体的内容についてまったく主張疎明がない
債務者の経営合理化のために人員削減をすることにあったと認められる
人員削減の必要性を認めることはできない

労働契約法19条(有期労働契約の更新等)
有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
1 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
2 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。
本件)
19条2号の場合に当たると解するのが相当
 5年余りから8年余りにわたり有期労働契約の更新を多数回にわたり更新
 契約期間の設定に合理的根拠は見られない
 債権者らの業務が恒常的業務であることが一応認められること
 更新手続きは形式的なものであったこと

(訴え)
Y社に雇用され、工場で就労していた債権者有期労働契約労働のXらが、
① 整理解雇の無効
② 労働契約存続
③ 労働契約上の地位保全及び、賃金仮払い

(判決)
賃金仮払いの保全の必要性のほか、就労機会の確保、社会保険の被保険者資格継続などの必要性から地位保全の必要性が認められる。

慣習による定年再雇用拒否の有効性


(考察)
就業規則の有効性を争われた事案であると思われる。慣習による法的拘束力についての考え方が示されている。
(重要文言)
<慣習として法的拘束力を認める場合とは>
就業規則が全く形骸化しているような事情のもと
就業規則を改廃する権限を有する者が慣行を規範として認める意思を有していたような例外的な場合に限られる。
本件)
定年の再雇用について、理事会の裁量は全くの自由裁量であるとは解されず、
その権限を逸脱濫用するような運用をすることは権利の濫用として許されるものではない

<定年再雇用の拒否について>
再雇用をすることなく定年により雇用が終了したものとすることは、
他にこれをやむを得ないものとみるべき特段の事情がない限り、
客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められず、
再雇用規定に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものとみるのが相当

(訴え)
Y学園の経営する大学の専任教員Xが、満65歳に達し、就業規則所定の定年により退職扱い
① 定年を満70歳とする合意
② 満70歳とする労使慣行
③ 70歳まで特別専任教員として再雇用する旨の合意
④ 仮に①から③まで成立しなかったとしても、70歳まで特別専任教員として1年ごとの嘱託契約を締結すると期待
合理的理由があり雇い止め法理が類推適用されることを主張

特別専任教員としての地位確認
労働契約に基づく賃金及び賞与などの支払いを求めた

<就業規則その他の規定>
① 専任教員の定年は65歳に達した日の属する学年度の末日
② 理事会が必要と認めた時は、定年に達した専任教員に、満70歳を限度として勤務を委嘱することが出来る(1年契約の特別専任教員)
③ 定年に達した専任教員が引き続き勤務を希望する場合は学部長及び学長を通じて理事長宛にその旨を書面により申請しなければならない
④ ③の申請があった場合には学部長は直ちに審査の上、学長に上申書を提出し、理事長会の義を経て理事長が決定する
⑤ 特別専任教員の待遇は定年時の基準給与月額の70%

(判決)
Xの請求をすべて認容

歩合給と残業代の計算方法に対する労基法37条の有効性


(考察)この頃、歩合給と残業代との算出根拠が裁判で争われるケースを目にするが、歩合給を給与に反映する企業には参考になる。
(重要文言)
労基法37条の趣旨
同条等に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付けるにとどまる。
使用者に対し、同条等に定められた算定方法と同一のものとし、これに基づいて割増賃金を支払うことを義務付けるものとは解されない
<支払ったか否かの判断>
通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とに判別することができるか否かを検討
 判別できる場合
算定した割増賃金の額を下回らないか否かを検討
<計算根拠>
売上高等の一定割合に相当する金額から労基法37条に定める割増賃金に相当する額を控除したものを通常の賃金とする旨が定められていた場合
当該割増賃金の支払いが同条の定める割増賃金の支払いといえるか否かは問題となり得るものの、
当然に同条の趣旨に反するものとして公序良俗に反し、無効であるとはいえない

(訴え)
Y社に雇用され、タクシー乗務員として勤務していたXらが、
歩合給の計算に当たり、残業手当に相当する金額を控除する旨を定めるYのタクシー乗務員賃金規則上の定めが無効
Yは控除された残業手当等に相当する金額の賃金支払義務を負うと主張
Yに対し、未払賃金等の支払いを求めた

<割増賃金の計算方法>
歩合給=対象額A-(割増金+交通費×出勤日数)
対象額A=(所定内揚高-所定内基礎控除額)×0.53+(公出揚高-公出基礎控除額)×0.62
割増金=深夜手当+残業手当+公出手当
基本給や服務手当の額を基準とした金額に一定乗率を乗じた額
対象額Aを基準とした金額に一定乗率を乗じた額との合計

パワハラとうつ病自殺による損害賠償


(重要文言)
<過失相殺①>
民法722条2項の類推適用に際し、「ある業務に従事する特定の労働者の性格が
同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでない場合
業務の負担が過重であることを原因とする損害賠償請求において
使用者の賠償すべき額を決定するに当たり
その性格及びこれに基づく業務遂行の態様などを心因的要因として斟酌(酌(く)んであげる)することはできない」
 民法722条2項(損害賠償の方法及び過失相殺)
被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

<過失相殺②>
以下の内容から損害額を3割減じることとする。
 KがY1の本部に申告するなどしなかったことから
YらがKの健康状態の悪化に気づきにくかったこと
 Kが昼食を抜くなどして休息時間を適切に確保し
自己の健康維持に配慮すべき義務を怠った面があること
 同居していた両親に悩みを相談することがなかったこと
 消防団に参加を強制されることも一つの悩みであった

(訴え)
Kの自殺は、A支店長(Y2)とY1農協が、営業上の業務成績を上げるよう叱責を繰り返し、さらには暴行を加えたことにより
職務に耐えきれなくなったことが原因であると主張
Y2に民法709条(不法行為による損害賠償)
 民法709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

Y1に民法715条(使用者などの責任)
 民法715条
1. ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2. 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3. 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
 求償権
他人の債務を弁済した者が、その他人に対して返還の請求をする権利。連帯債務者や保証人が債務を弁済したときなどに生じる。
Xら(Kの両親)それぞれに対し、連帯して4313万8074円の支払いを求めた

(判決)
損害額
 X1に合計1485万4033円
 X2に合計2001万6651円
 Kに発生した損害4627万6148円(逸失利益2477万6148円+慰謝料2000万円+葬儀費用150万円)
×(1-0.3(3割減))
=3239万3303円÷2(Xら2人)-労災保険給付の損益相殺


退職手当不支給の相当性


(考察)
全額不支給が認められるケースは珍しい気はするが、前例や他の管理職らとの均衡を示しているところは重要

(訴え)
在職中に懲戒免職事由に該当する行為があったとして不支給とした処分の取り消し

(運用方針)
懲戒処分相当の場合に退職手当を全額不支給とすることを原則
→ 処分庁に広範な裁量を委ねたと解される

処分者が運用方針に則って処分をしたといえるかどうかによることが相当

本件)Kの行った非違行為は非難の程度が大きく、公務に対する信頼を大きく損なうもの
金銭着服
その隠ぺい行為
Kの勤務実績は良好とはいえず、分限降任処分、減給処分
Kの非違行為に関連して管理職らが戒告
町長と副町長が減給処分

(判決)
Xの請求を棄却
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