事業譲渡と解雇の有効性
(重要文言)
<譲渡に当たるか>
会社の目的の同一性、
光洋商事が譲渡した内容、
光洋商事の譲渡への関与に照らすと、
運送事業を有機的な一体としてY1社に譲渡したというべき
① 運送事業は目的が概ね同一
② 事業用車両の半数以上と什器備品の譲渡を受け、
③ 本店所在地、駐車場、給油設備は光洋商事が従来使用していた場所
④ Xらを除いた光洋商事の従業員を全員雇用したこと
⑤ 事業開始に必要な手続き、取引の承継の根回しをしたこと等
<法人格の濫用>
支配下にあるY1社に無償で承継させ、
Xらを排除したこと
法人格を濫用した不当労働行為というべき
解雇は労働組合法7条により無効
Y1は、信義誠実の原則に照らし、光洋商事とは別個独立した法人であるとして、労働契約の効力が及ばないと主張することはできない
労働組合法
第7条(不当労働行為)
使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
1. 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもって、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。
2. 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
3. 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
4. 労働者が労働委員会に対し使用者がこの条の規定に違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会に対し第27条の12第1項の規定による命令に対する再審査の申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立てに係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働関係調整法 (昭和二十一年法律第二十五号)による労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること。
<整理解雇との関連性>
労働組合法7条1号の不当労働行為に該当すると認められるため、無効と判断されるのであって、
整理解雇の4要件を満たし解雇権の濫用が否定されるかどうかと直接かかわるものではない
(訴え)
光洋商事の従業員Xらが、Xらの加入する労働組合を壊滅させる目的でXらを解雇
光洋商事の資産、Xらを除く従業員、取引先等を光洋商事の代表取締役Y2が支配するY1社に承継
本件解雇は、不当労働行為または解雇権の濫用に当たり無効
労働契約承継法4条の類推適用によりY1は労働契約関係を承継または、
法人格否認の法理によりY1は光洋商事と別法人であることを主張できない
Y1社に対して、労働契約に基づき、
① XらがY1社との間で労働契約上の権利を有する地位にあることの確認
② 未払賃金などの支払いを求めた。
労働契約承継法
第2条
第1項
第1号 当該会社が雇用する労働者であって、承継会社等に承継される事業に主として従事するものとして厚生労働省令で定めるもの
第4条 第二条第一項第一号に掲げる労働者であって、
分割契約等にその者が分割会社との間で締結している労働契約を承継会社等が承継する旨の定めがないものは、
同項の通知がされた日から異議申出期限日までの間に、当該分割会社に対し、当該労働契約が当該承継会社等に承継されないことについて、書面により、異議を申し出ることができる。
2 分割会社は、異議申出期限日を定めるときは、第二条第一項の通知がされた日と異議申出期限日との間に少なくとも十三日間を置かなければならない。
3 前二項の「異議申出期限日」とは、次の各号に掲げる場合に応じ、当該各号に定める日をいう。
① 第二条第三項第一号に掲げる場合 通知期限日の翌日から承認株主総会の日の前日までの期間の範囲内で分割会社が定める日
② 第二条第三項第二号に掲げる場合 同号の吸収分割契約又は新設分割計画に係る分割の効力が生ずる日の前日までの日で分割会社が定める日
4 第一項に規定する労働者が同項の異議を申し出たときは、会社法第七百五十九条第一項、第七百六十一条第一項、第七百六十四条第一項又は第七百六十六条第一項の規定にかかわらず、当該労働者が分割会社との間で締結している労働契約は、分割契約等に係る分割の効力が生じた日に、承継会社等に承継されるものとする。
(判決)
解雇は無効
退職金相当額と中間収入を控除した未払い賃金の支払を認めた
精神的苦痛を慰謝する金額として30万円が相当