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委託契約に対する労働者性


(考察)
問題となっている委託契約の労働者性に対する分かり易い判例になっている。
(重要文言)
労契法上の労働者性の判断
(ア) 仕事の依頼、業務従事の指示などに対する諾否の事由の有無
(イ) 業務遂行上の指揮監督の有無
(ウ) 勤務場所・勤務時間に関する拘束性の有無
(エ) 代替性の有無
(オ) 報酬の労務対償性
(カ) 事業者性の程度
(キ) 専属性の程度
(ク) その他の要素(地域スタッフの報酬の源泉徴収、地域スタッフは労働保険の対象外であること、Yの就業規則の不適用)

(訴え)
Xが、Y協会との間で、平成9年1月29日に、放送受信契約の取次等を業務内容とする有期の委託契約を締結
3年ごとに計6回契約を更新
15年余にわたり業務に従事
Xの業績不良を理由として本件契約につき中途解約

Y協会に対し、Xは労契法上及び労組法上の労働者に当たり、本件中途解約は、
労契法17条1項違反、
民法90条違反(不法労働行為)、
本件契約の解約制限条項違反又は信義則違反により無効であると主張

労働契約法第17条(契約期間中の解雇等) 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

民法90条(公序良俗) 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

① 労契法上の地位確認
② 24年8月25日から25年1月24日までの休業見舞金などの支払い
③ 25年2月1日以降の事務費などの支払い
④ 25年6月20日以降の報奨金、特別給付金などの支払い
⑤ 不法行為に基づく損害賠償などを請求

(判決)
訪問する先や日時を自らの裁量で決定することができる等、包括的に業務を委託
Xに具体的な仕事の依頼や業務従事の指示などに対する諾否の事由がないと認めることはできない
指導・助言を行う体制を敷いているが、これに応じなくても、債務不履行責任を問われたり、経済的不利益を課されたりすることはない
稼働日、稼働時間、訪問区域、経路などは、地域スタッフの裁量に基づき決定
業務遂行上の指揮監督を受けているという事はできない

委託業務の代替性が認められ、
報酬の労務対称性は乏しく、
交通費は地域スタッフが負担
兼職も禁止・制限されていない
地域スタッフのYに対する使用従属性を認めることはできない

本件中途解約が公序違反(不法労働行為)、本件契約の解除制限条項違反、信義則違反であるとするXの主張がいずれも退けられ、業績不良を理由とする中途解約が有効

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セクハラ発言などによる懲戒解雇の有効性

(考察)
言葉によるセクハラに関して一例が出ているが、話をするときに気を付けないといけない。
(重要文言)
<セクハラ行為>
基本的に言葉によるセクハラについて就業規則所定の懲戒事由に該当する。
原告が自認したものとして
どうやってお客さんを攻略してるの?「枕」とかやったの?
誰と付き合っているの?彼氏はいるの?
婚約者と最近どうなの?
そのボッテガのバッグ可愛いね。自分で買ったの?高かったんじゃないの?
何人と付き合っているの?
どういうのがタイプなの?
この他に性交渉を持った男性の人数や
性交渉の際にどのような様子になるのかなどを尋ねたりしていたことが発覚

これに関連して、
アメリカの性犯罪被害者の対処行動に関する研究に依拠して
職場の同僚の間でのセクハラについては、
被害者が内心では不快感や嫌悪感などを感じていながら、職場の人間関係の悪化などを懸念して、加害者に対する抗議、抵抗や会社に対する被害の申告を差し控えたり躊躇したりすることも少なくないと考えられる

(訴え)
Y社に雇用された原告Xが、論旨退職の通知を受け、退職に同意しなかったため懲戒解雇された
解雇は無効であるとして雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認などを求めた
<論旨退職通知書>
① 同僚の訴外Aに対するセクハラ行為
② 平成25年6月の電子メールによる社外活動に関する相談
③ 26年1月の同様の相談
④ 改ざんした電子メール記録提出
⑤ 顧客に対するY社の承認を得ていない資料使用が記載

(判決)
Xのセクハラ行為は悪質であるが、被害者である訴外Aの不快感ないし嫌悪感や精神的苦痛については、必ずしもY社の主張する通りとは解されず、この点では、Xのセクハラ行為の悪質性を過大評価すべきでない

Xの各行為はそれぞれ懲戒事由に該当
相応の懲戒処分を受けても然るべきであるが、
いずれの行為についても考慮すべき事情などがあり、
従前注意、指導といった機会もなかった
これらの行為全てを総合考慮しても、
懲戒処分における極刑といわれる懲戒解雇と、その前提である論旨退職という極めて重い処分が社会通念上相当と認めるには足りず、
Xを降職までの懲戒処分にとどめ、然るべき注意、指導をするという選択肢があり得ないとは解されない
懲戒解雇は無効

論旨退職及び懲戒解雇が不法行為上違法な処分であるとまでいうことはできない
Xの請求を棄却

旧姓の使用不許の有効性


(考察)
人格権について、改めて確認できた判例であると思う。
(参考文言)
戸籍上の氏名について、
① 氏名が人格権の一内容を構成すること
② その氏名を他人に冒用されない権利を有すること
③ それを違法に侵害された者は、加害者に対し、損害賠償を求めることが出来る
④ 現に行なわれている侵害行為の差し止めを求めることが出来る
氏名を自ら使用することが、
いかなる場面で、いかなる目的から、いかなる態様で妨害されたとしても
法的な救済が一切与えられないとすることは相当ではなく、
氏名を自ら使用する利益は、民法709条に規定する法律上保護される利益であり、
「氏」についても同様といえる。

民法709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

しかし、
戸籍上の氏は戸籍制度という公証制度により支えられているもの
婚姻前の使用実績という事実関係を基礎とする婚姻前の氏に比して、より高い個人の識別特定機能を有している
職場という集団が関わる場面において職員を識別し、特定するものとして戸籍上の氏の使用を求めることには合理性、必要性が認めらえる。

(訴え)
Y学園に勤務するXが、業務に当たり通称として婚姻前の氏を使用することを希望
Yにより戸籍上の氏を使用することを強制されたと主張
① 人格権に基づき、時間割表などにおいてXの氏名として婚姻前の氏名を使用することを求める
② 人格権侵害の不法行為又は労働契約法上の付随義務違反による損害賠償請求権に基づき慰謝料などの支払いを求めた

(判決)
婚姻後に通称として婚姻前の氏を使用する利益は、
婚姻前に戸籍上の氏のみを自己を特定するものとして使用してきた期間における当該氏を使用する利益と比して、それと同程度に大きなものであるとはいえない

職場が関わる場面において戸籍上の氏の使用を求めることは、現時点でそれをもって違法な侵害であると評価することはできない
違法な人格権の侵害であると評価することはできない
人格権に基づく妨害排除請求も理由がないといわざるを得ない
労働契約法上の付随義務に違反したとは認められない

内部告発に対する懲戒解雇の有効性


(考察)
従業員の内部告発に対する考え方を示した一つの参考判例であると思われる。

(重要文言)
<告訴>
Yの社会的評価の毀損をもたらすもの
Yの事業活動に支障を来すおそれもある
告訴事実がないことを容易に認識し得たにも関わらず、Xが行った本件告訴は、非違行為
就業規則の「学園の秩序を乱し、学園の名誉又は信用を害したとき」に当たる

<公益通報後の懲戒解雇>
報復の可能性を否定できない
Yの社会的評価が大きく毀損されてはいない
懲戒解雇より緩やかな処分を選択したうえで、指導することも十分に可能であった
懲戒解雇は重きに失する

<地位保全>
Xは、教育・研究活動に従事する者
Yの教職員の地位を離れては、Xの教育・研究活動に著しい支障が生じることは明らか
Yとの間で、労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めなければ、Xに回復しがたい著しい損害が生じる
地位保全を認めた仮処分命令が維持

(訴え)
Y学園から懲戒解雇されたXが、Y学園に対し、
懲戒解雇が無効であると主張
労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めることの仮処分命令の申し立てをした。

XがYに対して、労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める旨の仮処分決定をした地位保全仮処分命令事件

本件仮処分決定を認可する旨の決定をした保全異議申立事件に対して、Yが両決定の取消しを請求

(判決)
本決定は、Xの仮処分申立を認容し、本件仮処分決定を認可した原決定は相当である。
Y学園の本件抗告を棄却

共同設立者の労働者性


(考察)
兼務役員の報酬の内訳の算出方法が面白い。
(重要文言)
<労働者性>
従業員としての地位を全く否定することは困難
少なからず、同地位を有していたものとみるのが相当
 勤務時間や場所などについて、これらを自由に決定出来る状況になく
 会計上、給与の名目で月額報酬を支給
 雇用保険に加入
 取締役としての就任登記がなされていない

会社組織の指揮命令下で美容師として稼働するという側面を有している以上、原則として従業員性が認められる

従業員の立場とは基本的に相いれない立場といえるような特段の事情がある場合でない限り、従業員性を否定することはできない
実質的に使用人兼務役員のような立場にあったといえるにすぎない

<報酬の内訳>
報酬月額57万円のうち、
少なくともXに次いで美容師としての稼働実績を残している一般従業員の賃金と同額の37万円が賃金相当額
残額20万円が実質的に役員報酬額に相当

<報酬額を変更する旨の合意>
XがYと共同して代表取締役となり、両者が同額の役員報酬を受領していることを前提
同報酬の減額を念頭においてなされたものというべき
抽象的な内容にすぎないものと推認される
賃金相当額の合意があらかじめ具体的にされたものという事は到底できない

(訴え)
Y社の経営する美容院において、少なくとも平成23年3月17日から25年2月末まで稼働していた原告Xが、
Yに対し、Yとの間に労働契約が成立している旨を主張
同契約に基づく賃金等の支払いを求めた。

(判決)
賃金相当額37万円から22万円への4割ほどの大幅な減額について、賃金減額の通告に納得していたものでない
真意に基づき同意していたことを認めるに足りる証拠はない
各月15万円(合計105万円)分に限り請求が認容

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