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恋愛関係のあった者へのセクハラに対する不法行為


(考察)
責任の範囲を明確にしている判例あると思われる。
(事件概要)
Y4社の子会社であるY3社の契約社員であるXが、Y4社の子会社で会ったY2社の正社員であったY1のなした一連のセクハラ行為等により多大な精神的苦痛を被った
① Y1に対しては、不法行為に基づく
② Y2社に対しては、Y1の不法行為にかかる使用者責任に基づく
③ Y3社に対しては、雇用契約上の安全配慮義務違反又は雇用機会均等法11条1項所定の措置義務違反を内容とする債務不履行に基づく
④ Y4社に対しては、安全配慮義務違反ないし不法行為に基づく損害賠償として、
慰謝料300万円などの支払いを求めた。

Xは、平成20年11月頃Y3社に契約社員として採用され、Y4社の事業場の一つであるA1事業場の敷地内にある建材工場で作業に従事した。

Y1から12万円を借り入れ、
平成21年10月下旬ころから毎月1万円ずつを任意に返済
Y1とXとの間に平成22年1月頃までは親密な関係があった。
同年2月頃からは客観的に親密な交際関係は両者間に存在していない。
平成22年3月頃までには、Xの同僚であるDに対し、Y1から付きまとわれている旨相談
本件借入金を完済できるまでは、関係をはっきり断ることができないものと我慢

借入金を完済できるようになった同年7月頃まではY1からの一方的な働きかけに耐えていた。

(判決)
Y1は、民法709条、710条により、不法行為に基づく損害賠償責任を負う

Y1を雇用していたY2社は、本件セクハラ行為にかかるY1のXに対する不法行為につき、民法715条により、使用者としての損害賠償責任を負う。

Y3は、自ら雇用する労働者に対する雇用契約上の安全配慮義務を負担し、
雇用機会均等法11条1項に基づき、
① 労働者からの相談に応じ、
② 適切に対応するために必要な体制の整備
③ その他の雇用管理上必要な措置を講ずるべき事業主としての措置義務を負担している。

平成22年9月上旬ころ、G係長にセクハラ行為について訴えて対応を求め
同月22日にはDを通してG係長に同様の申出
同年10月5日及び同月12日にも、FないしGに対しセクハラ行為を訴えるなどしたにもかかわらず、
Xの訴えに真摯に向き合わず、
何らの事実確認も行わず、
事後の行為に対する予防措置を何ら講じなかった
Y1が管理職であったことから、Dの方を工場街へ転出させるなどして、不祥事を隠ぺいしようとした疑い

Xに対する安全配慮義務違反があり、かつ債務不履行に基づく損害賠償責任を負う。

Y1のXに対する本件セクハラ行為が行われた当時、この両名がいずれもY4社のグループ会社の従業員である。
DがXのためにY4社の相談窓口に電話で連絡をして調査及び善処を求めたのに対し、
Y4の担当者らがこれを怠ったことによって、Xの恐怖と不安を解消させなかったことが認められる。

Xに対し債務不履行に基づく損害賠償責任を負う。

損害額は、慰謝料200万円及び弁護士費用20万円であり、連帯して支払う義務を負う。

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付加金支払義務の必要性


(考察)
付加金の支払いの有無については、判決確定までではなく、口頭弁論終結時までに金銭の支払いが完了していることが重要であると思われる。

(重要文言)
付加金支払義務の発生は「事実審の口頭弁論終結時において、付加金支払いを命じるための要件が具備されていれば足り」、
「当該判決が取り消されない限りは」、
その事情から影響を受けない

付加金支払義務を免れるためには使用者は控訴の上訴訟手続きにおいて支払いの事実を主張立証することが必要

<要点>
労働者が付加金支払いを申し立てるためには、口頭弁論終結時までに労働基準法114条所定の金銭が支払われていないことを要するという実務上の扱いはほぼ定着している。
本判決は、付加金支払いを命じた判決は口頭弁論終結後の事情に影響を受けないとした先例判断として重要であると思われる。

(事件概要)
X社に対して、未払割増賃金と約154万円の付加金支払いを命じる地裁判決が言い渡された。
Xが未払割増賃金を供託し、控訴せず判決が確定
付加金について、YがX社の銀行口座債権を差し押さえた。
X社が執行不許を求めた請求異議事件

<Xの主張>
甲野堂薬局事件最高裁判決で、
付加金は裁判所が支払いを命ずることによって初めて発生するとされている
判決確定前に任意の支払いが行われれば付加金支払いを命じることはできないと解すべきで、
そう考えないと、控訴せずに未払金を支払った使用者は付加金支払いを要するのに、
控訴した使用者は控訴審の口頭弁論終結前に未払い金を支払えば付加金支払いを免れることになり、
公平を失し速やかな賃金支払いを確保するという付加金の趣旨に反する

(判決)
請求異議が棄却

宮大工の労働者性

(考察)
今回の判例では、詳細に労働者性についての仕分けが行われており、今後の考え方に参考になる
(重要文言)
労災保険法にいう労働者は、労基法9条にいう労働者と同一と解するのが相当

労基法9条の労働者とは、
職業の種類を問わず、事業又は事業所に使用される者で、賃金を支払われる者をいうと定義
① 使用者の指揮監督下に置かれているか否か
② 報酬が提供された労務に対するものであるか否か

によって判断するのが相当

労基法は刑事法でもある
使用従属性は、明確かつ厳格に解釈しなければならない

雇用契約、委任契約、請負契約といった契約の形式にとらわれるのではなく、労務提供の形態や報酬の労務対償性及び、これらに関連する諸要素を総合考慮し、実質的に判断する必要

<使用従属性を判断する要素>
① 労務提供の形態
仕事の依頼、業務従事の指示などに対する諾否の事由の有無、
業務遂行上の指揮監督の有無、
勤務場所・勤務時間に関する拘束性の有無
代替性の有無
等に照らして判断するのが相当

② 報酬の労務対償性
報酬が一定時間労務を提供していることに対する対価と判断される場合、補強すると考えられる。

③ 労働者性の判断を補強する要素
次のことを総合的に判断する必要がある。
事業者性の程度
 機械、器具の負担関係
 報酬の額
 損害に対する責任
 商号使用の有無等
専属性の程度
その他の事情
 報酬について給与所得として源泉徴収を行っている
 労働保険の適用対象としている
 服務規律を適用しているなど

<本件において>
1.仕事の依頼、業務従事の指示などに対する諾否の事由の有無
本件全証拠を精査しても、KがCから本件各工事の仕事を依頼された際、これを断ることが困難であったことをうかがわせる個別具体的な事情は認められない

2.業務遂行上の指揮監督の有無
Cの具体的な指揮命令を受けていたことを認めるに足りる的確な証拠は認められない

3.勤務場所・勤務時間に関する拘束性の有無
本件各工事はそれぞれ現場が定まっていたが、業務の性格上当然
作業時間について契約上の拘束があったとまで認めることはできない
出退勤自国の記録なども見いだせない

4.報酬の労務対償性
大工手間作業について、
品名として大工手間など、終了として人数を記載するなどした請求書を提出
確定申告書における給与所得の内訳欄にKの商号として使用している甲野工務店から426万3,000円(収入額全額)と記載している。

(事件概要)
Kは、23年7月頃独立し、一人親方などとして、特別加入
Cは、F神社の修理工事を請負、Kに対し、1日2万円の支払いを条件として、契約
大雪によりFが倒壊したため、修理工事とは別に1日2万円の支払いを条件として解体撤去工事も依頼

Xの夫であるKが、工事に従事中、屋根から落下し死亡
労基署長に対し、遺族補償給付及び葬祭料の支給を請求
Kが労基法9条に定める労働者とは認められない。
不支給処分
これを不服として、本件各処分の取り消しを求めた。

Xは、特別加入者としての遺族補償給付などの支給を請求し、支給決定されている。

(判決)
Kが、C工務店の指揮監督のもとに労務を提供していたものと言えないことに加え、
CからKに支払われた報酬については労務対償性があるとは言えない
Kが労災保険法上の労働者に該当するとは言えない
原告Xの労災不支給処分取消請求が棄却

公務起因性


(考察)
公務起因性について、量的要因ではなく、質的要因を重視した判例であると思われる。
(重要文言)
公務上の災害とは、公務に起因する災害、すなわち公務員が公務に起因して負傷、疾病、傷害又は死亡した場合をいう。
公務と災害との間に相当因果関係が認められることが必要
公務と災害との間の相当因果関係の有無は、その疾病が当該公務に内在する危険が現実化したものと評価し得るか否かによって決せられるべき

脳・心臓疾患が発症した場合、公務に内在する危険が現実化して脳・心臓疾患が発症したものとして相当因果関係を認めるのが相当

(事件概要)
Kが死亡したことについて、Kの父であるXが、地方公務員災害補償基金愛知県支部長に対し、過重な公務に起因すると主張
地方公務員災害補償法に基づく公務災害認定請求をしたところ、
Kの死亡を公務外の災害と認定する処分を受けたため、本件処分の取り消しを求めた。

(判決)
発症前1ヵ月目の時間外勤務時間数は少なくとも95時間35分
民間認定基準において業務と発症との関係性が強いと評価できるとされている水準のいずれにもやや満たないもののほぼ同じ水準に達しているという事が出来る

<職務の質的過重性>
① 指導担当者の取りまとめ役、学校の実績や生徒の就職に影響する授業を担当し、担当授業に関する精神的負荷は相応に強いもの
② 全国的に非常に優秀な成績を収めており、同様の成績を収めることが期待、精神的負荷を受けていた
③ 公務及び担当授業時間数が他の教員と比較して多いものであったこと、精神的な負荷は、相当程度強いもの
④ 1日体験入学が次年度の入学者数に結びつき得る重要の職務、精神的負荷がかかるもの

以上の4点から、本件疾病の発症及びKの死亡と公務との間には相当因果関係があり、公務起因性を認めるのが相当

職種限定契約社員に対する配置転換の有効性


(考察)
職種限定契約についての一つの考え方として参考になる。提示内容に変化があれば、別の判決も考えられる気もする。
(重要文言)
十分協議しつつ、可能な限り従前のSPLの業務と同等かそれに近い職種や職場に移行することができるよう丁寧で誠実な対応をすることが信義則上求められる。

提示された職種
① 全国移動を伴い
② 自らも営業活動を行う必要があり
③ 収入が格段に減るなど

いずれもXにとっては応じがたいもの

(訴え)
Xが、職種をSPLに限定する合意があり、保険販売を行う業務は含まれていないため、Xを営業社員に配置転換したことは無効
懲戒解雇されたことについて、懲戒解雇理由は存在せず、無効
地位確認
判決確定の日までの賃金及び、遅延損害金
不法行為に該当するとして、慰謝料、弁護士費用及び、遅延損害金

(判決)
請求を認容
入社後のXの業務実態に関して、新たに事実認定
平成22年8月1日採用
平成24年1月1日をもって、合併に伴ってASP事業部ならびに同部特有の職種であったSPM、SPL及びSPが廃止
少なくとも固定給の保証された入社後2年程度の間、Xの職種をSPLに限定
職種限定合意は存在したものという事が出来る

少なくとも意に沿わない転勤がない事が保証されていたものと認められ、少なくとも職場をA近辺とすることの限定合意があった

管理職から一般社員への懲罰的な降格人事とも解されるから、人事権の濫用として無効

配置転換が無効である以上、本件懲戒解雇もまた理由がなく許されない。

労働契約上の権利を有する地位にあり、平成24年7月以降の月額50万円の賃金請求が認められる。
民法709条、710条の不法行為責任を負う
Xの精神的苦痛に対する慰謝料100万円及び、弁護士費用50万円

自己都合退職の有効性


(考察)自己都合退職に対しては、2週間の期間を守られると対応が難しい事を示された判例であると思われる。
(重要文言)
民法627条2項所定の期間の経過後においては、雇用の解約申し入れの効力が生ずる
X社主張の損害とYの行為との間に因果関係は認められない
就業規則に定める引継ぎも行わなかった事等を理由とした損害賠償請求が棄却

<本訴の提起による不法行為>
通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起したなど、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に限り、相手方に対する違法な行為となる。

本件)Yの収入の5年分以上に相当する1,270万5,144円もの大金の賠償を請求することは、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠き不法行為に該当する
慰謝料請求が認められた。

(事件概要)
X社が、Yが虚偽の事実をねつ造して退職
就業規則に違反して業務の引継ぎをしなかったことが不法行為に当たる
Yに対して1,270万5,144円の損害賠償などを求めた。
<反訴>
Yが、X社ないしその代表取締役による退職妨害、人格攻撃が不法行為ないし、違法な職務執行に当たる
330万円の損害賠償などを求めた

(判決)
平成27年1月7日に不安抑うつ状態と診断
同年6月20日は希死念慮を訴えてストレス障害により医療保護入院
28年5月2日には躁うつ病
まもなく自殺を図っている
虚偽のものであるとはいい難い
X社が主張するような損害は生じない
プロフィール

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Author:roumutaka
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