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破産会社従業員らによる関連会社への損害賠償


(事件概要)
Y1社から製版業務を受注していたフジ製版で就労していたXらが、
不当な値引き等によりフジ製版の経営を悪化、
破産させて組合員の排除を図ったと主張
Y1社ら(Y1社、取締役会長Y3、Y3の子である代表取締役Y2)
フジ製版の破産手続開始申立時の代表取締役であったY4(Y3の兄弟で、Y1社の元常務取締役)
破産手続開始申立直前までの代表取締役であったY5
の共同不法行為に当たるとして、
賃金相当額と弁護士費用などの損害賠償
任意懈怠による会社法429条1項に基づく損害賠償を請求

(判決)
Xらの請求をすべて棄却

経営悪化の主な原因は値引きではなく製版業界全体の経営状況の悪化にあったことも踏まえると、
Y1社への請求の値引きによる影響は極めて限定的
仮に下請け法に違反する値引きの事実があったとしても、
Xらとの関係で当然に違法性を基礎づけ、不法行為を構成するものではなく、
フジ製版の破産を企図し、Xら組合員の排除を狙った意図は認められないとして請求を退けた。
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休憩時間、仮眠時間、業務の準備行為等に対する時間外労働の可否


(考察)
仮眠時間、休憩時間については、当たり前のことを言っているようで、かなり厳しい文言であると思われる。着替えについては、防塵服などではない普通の制服への着替えについても必要であるという、今後の就業規則の作成で覚えておいた方が良いと思われる。

(重要文言)
<不活動時間にかかる判断基準>
労基法上の労働時間に該当するか否かは、
労働者が不活動時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まる。

実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているということは出来ず、
労働から離れる事を保障されて初めて指揮命令下に置かれていないと評価でき、
労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たる。

労働契約上の薬務の提供が義務付けられていると評価される場合、
使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当

<業務の準備行為等>
業務の準備行為等を事業所内において行う事を使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、
特段の事情がない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、
当該行為に要した時間は、社会通念上必要と認められるものである限り、労基法上の労働時間に該当すると解される。

<配置転換>
業務上の必要性との比較において、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるか否か
給与の手取り額の減少は認められるものの、時間外労働及び深夜労働の減少という利益を享受している。
不利益は業務内容の変更に伴い反射的に生じるものにとどまり、不法行為を構成するものでもない。

(事件概要)
Y社の従業員であるXが、平成25年4月から27年5月までの時間外労働に対する割増賃金及び、その遅延損害金、
労基法114条に基づく付加金とその遅延損害金、
Xに対する配転命令・業務命令がパワーハラスメントなどに当たる事による損害賠償(500万円)及び、その遅延損害金の支払いを求めた。

(判決)
仮眠時間の間も防災センターを離れることが許されていなかった
寝巻に着替えて仮眠をとることもなかった
8か月間に仮眠時間中に緊急対応のため出動したことが少なくとも4回
休憩時間についても実際には機器類の発報等があった場合には即応することが求められていた

休憩時間については、出動が皆無であったが、休憩時間が短かったこと、実質的に義務付けがされていないと認めることができるような事情が存するという事はできない

不活動時間について
① 警備員に交付されていた手帳の記載内容
② 侵入事案対応訓練の内容
③ 発報時および震度3以上の地震があった場合には基本的に仮眠者を起こして対応するといった運用
④ 休憩時間に防災センターを離れる場合には所在を明確にする旨の記載
⑤ 防災センターを離れる警備員は、防災センターにいる警備員と連絡が取れる状態を確保する

労働契約に基づく義務として、近辺における待機と発報などに対して直ちに相当の対応をすることが義務付けられていた。

実際に仮眠中に発報に対する対応を求められたことが少なくとも2回
深夜の発砲が少なくとも3回

対応を求められる可能性が著しく乏しい状況にあったという事が出来ない
従事する必要が生じることが皆無に等しい状況にあったとまでいうことは出来ない。

労基法上の労働時間に当たる。

<準備行為等>
警備員は全員制服を着用して朝礼に出席することを義務付けられていた
制服の行為を事業場内で行うべきとされていた
朝礼に要する時間25分、
着替えに要する時間10分
1日当たり35分が労基法上の労働時間に当たる。

管理監督者の長時間労働に対する安全配慮義務違反

(考察)
安全配慮義務に関する判例を見れば見るほど、義務を果たすという壁が高いことを実感する。

(重要文言)
使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷などが過度に蓄積して労働者の心身を損なう事がないよう注意する義務を負うと解するのが相当
使用者に代わって労働者に対し、業務上の指揮監督を行う権限を有する者は使用者の上記注意義務の内容に従ってその権限を行使すべき
本件)
口頭聴取をしたのみで、具体的な改善策を講じなかった。
退勤時間が遅くなっている理由については特段の聴取すらしなかった
労働時間が長時間に及んだ原因を特段分析もしておらず、軽減する措置を採っていないといわざるを得ない。

定期健康診断を実施したり、口頭聴取をしたというだけでは、Y1社が安全配慮義務を尽くしたとはいえず、違反が認められる。

<過失相殺>
労災事故による損害賠償の場合においても民法722条2項の類推適用を認めている。

民法722条(損害賠償の方法及び過失相殺)2項
被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
本件)
死亡1か月前の業務時間は軽減されていた
喫煙をやめるよう指摘されていたのに喫煙を続け
肥満を解消することもせず、食事制限もせず
過失割合を3割

(事件概要)
Y1社の従業員であったKの死亡は、過重な業務に従事したことによるものであると主張
Xらが、
Y1社については、労働時間を適正に把握し、適正に管理する義務を怠った不法行為による損害賠償などの支払い
代表取締役であったY2らについては任務懈怠があったとして会社法429条1項に基づく損害賠償などの支払いを求めた。

会社法429条1項(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

Kは、課長代理であったが、店長も兼務していた。
店長の労働時間管理は、各従業員と同様、自身でパソコンに入力して自主管理するというもの
課長代理を兼務していたため、GPSによる時間管理が行われていた。
死亡する前月分の賃金は45万4,250円で、うち役割手当は6万円

(判決)
Kの労働時間は、発症前1か月間に59時間57分、
同2か月間の平均が93時間11分
同6か月間の平均は112時間35分
少なくとも約5か月間、Kは、平均120時間以上の時間外労働を続けていたので、既往症の影響よりも、むしろ長期かつ長時間の過重労働が強く影響していた可能性も高い。

Kの死亡により生じた損害について
逸失利益を4,983万余円
慰謝料を2,700万円
遺族であるXらの固有の慰謝料として各100万円
葬儀・葬祭関係費150万円

過失相殺は3割

従業員死亡の業務起因性


(考察)
認定基準を基準としてとらえ、満たないことが業務起因性を認める余地がない事までを意味しないという考え方は参考になる。
(重要文言)
 労災保険法の業務上疾病といえるためには、業務と疾病との間に相当因果関係が認められなければならない
 相当因果関係があるというためにはその疾病が当該業務に内在する危険が現実化したものと評価し得る必要があること
 その評価は当該労働者と同種の平均的労働者を基準とすべきこと
 発症の基礎となる血管病変などがその自然的経過を超えて著しく悪化し発症した場合は、相当因果関係を認めるのが相当

認定基準は、業務の過重性の評価を適正、迅速に行うために設定されたものであって、その基準を満たせば業務起因性を肯定しうるに過ぎず、その基準に満たないことが業務起因性を認める余地がない事までを意味するものではない

(事件概要)
虚血性心疾患により死亡したKの配偶者であるXが、Yに対し、Kの死亡は過重な業務に起因するとして、半田労働基準監督署長による遺族補償給付などの不支給処分の取消を求めた。

(判決)
Kの死亡と長時間労働との相当因果関係の有無を判断する上では、発症前1か月間の時間外労働時間が最も考慮すべき要因
発症前1か月間の時間外労働時間は少なくとも85時間48分であり、この時間外労働時間数だけでも、脳・心臓疾患に対する影響が発現する程度の過重な労働付加であるという事が出来る。
Kは、過重な時間外労働を余儀なくされ、それにうつ病による早期覚醒の症状が加わって更に睡眠時間が1日5時間に達しない程度にまで減少したことにより、血管病変などがその自然経過を超えて著しく増悪し、その結果心停止に至ったものと認められ、相当因果関係を認めることができる。

名誉毀損、情報漏洩を理由の懲戒解雇及び、普通解雇の転換の有効性

(考察)
認識の誤りは否定できないが、懲戒解雇の難しさを感じる判例だと思われる。普通解雇の転換については本判例と同じ判決が出ていることが多いように思われる。

(重要文言)
<金融商品取引法166条(会社関係者の禁止行為)1項5号の解釈>
上場会社等と契約締結の交渉をしている法人の役員等がその者の職務に関し重要事実を知ったとして同号に該当するというには、
職務の遂行上重要事実を知ったというのでは足りず、
他の役員などが知った重要事実が法人内部でその者に伝わったという事の出来る場合でなければならないというべきであるが、
その者の職務に関し知ったといえる限りは、重要事実の伝達ないし流出の方法や経路は問わないものと解される。

<懲戒解雇が無効である場合の普通解雇の転換>
懲戒解雇は、就業規則上企業秩序違反に対する制裁罰として規定
普通解雇とは制度上区別されている
懲戒解雇の意思表示に普通解雇の意思表示が予備的に包含されているという事はできない

辞令書にも、予備的にも普通解雇の意思表示をする旨の記載は認められない

懲戒解雇の意思表示に普通解雇の意思表示が内包されているものとは認められない

(事件概要)
Y社との間で労働契約を締結していたXが、平成24年6月29日付懲戒解雇は無効であるとして、労働契約上の地位にあることの確認
月例賃金などの支払いを求める。
懲戒解雇はXに対する不法行為に当たると主張
民法709条に基づき、慰謝料1,000万円などの支払いを求める。

平成21年11月5日 E社は、公募増資を行うことを決定
22年1月以降 E社及び主幹事証券会社であるY社の役職員らによって準備
同年9月29日 公募増資は公表
平成24年6月8日 証券取引等監視委員会は、公募増資に関して検査
結果、C社およびAが、Xから、
Y社の他の社員らが交渉に関して知り、
Xがその職務に関して知った、
E社の業務執行を決定する機関が株式の募集を行う事についての決定をした事実の伝達を受け、
公表された時点より以前に、E社株式を売りつけたもの
いずれの行為も、金融商品取引法175条1項に規定する行為に該当するという事実が認められた。
内閣総理大臣および金融庁長官に対し、課徴金納付命令を発出するよう勧告するとともに、その旨を公表
平成24年6月29日 Y社はXに対し、Xを懲戒解雇する旨の意思表示をした。
<懲戒解雇辞令書>
<懲戒事由①>社外の者に対し未公表の法人関係情報を伝え、受領者がそれをもとにインサイダー取引を行ったとして証券取引等監視員会の勧告を受け、報道された
<懲戒事由②>顧客の情報も漏洩していた
就業規則42条(懲戒事由に関する規定)
11号 会社の名誉又は威信を傷つけた場合、
14号 機密情報に関する会社の規則に反した場合および、
20号 この規則あるいは会社の他のいかなる規則、方針、規程、あるいは他の日本の法律に定められた業界を規制する規則、方針、規程に違反した場合
に該当する旨の記載

(判決)
地位確認請求ならびに月例賃金などの支払いを求める部分は理由がある
慰謝料の支払いを求める部分は理由がない

平成22年9月12日以前 XとY社におけるE社担当のアナリストであったIとの接触
同月22日から24日 XとYにおける募集担当者であったJとのやり取り
これらを合わせ考えても、Yの内部においてXに本件情報又は公募増資の実施公表の日が同月29日であるとの情報が伝わったとは認められない

以上の他にXに伝わったと評価すべき事情は認められない
金融商品取引法166条1項5号に該当すると認めることはできない

懲戒事由①は就業規則所定の懲戒事由に該当するものとは認められず、
懲戒事由②はその一部が就業規則所定の懲戒中に該当するものと認められるものの、
上記会話を懲戒事由として懲戒処分の中で最も重い懲戒解雇処分を行うことは重きに失することが明らかである。
客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認めることはできず、懲戒権の濫用したものとして無効

雇止めの適法性及び、時間外労働算出の有効性

(重要文言)
就業規則では、変形労働期間の各日、各週の労働時間、始業時刻および終業時刻は別に定めるシフトパターン表を組み合わせることにより行うとするだけ
シフトパターン表は証拠として提出されていない
Xに変形労働時間制が適用されることを認めるに足りる証拠はない
雇用契約書には6時間分の深夜割増賃金と3時間分の時間外労働賃金が含まれていることを示す記載があるものの、
明確区分性の要件に欠ける上に、支給対象の時間外労働の時間数が労働者に明示されていない

(事件概要)
平成4年4月1日までに期間の定めのある労働契約を締結
同月から20年ころまでは6か月に1回
同年以後は2か月ごとに雇用契約書の更新
最終の雇用期間は26年12月20日まで
平成26年10月30日、過労、軽度うつ状態および睡眠障害の診断
2週間休養
その後、何も連絡がなく、同日以降のシフトに入れてもらえなかった。
平成26年12月2日、勤務先のY社A5店に呼び出し
労働契約を27年1月20日までなら続けても良いが、それ以降は結ばないと伝えられた。

労契法19条1号又は2号に該当し、雇用期間が満了する日までに有期労働契約の更新の申し込みをした。
また、合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないから、地位確認請求ならびに賃金及び遅延損害金の支払いを求める。

(有期労働契約の更新等)
第19条  有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
一  当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

二  当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

(判決)
時間外割増賃金及び付加金の支払いを認めた。
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