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嘱託職員の差別的取扱いに対する違法性


(考察)
現在では、
労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
業務の内容、業務の責任、職務の内容、配置の変更の範囲、その他の事情について不合理と認められるものであってはならない。
通勤手当、食堂の利用、安全管理などについての相違は特段の理由がない限り合理的とは認められない。

による争点が多いように思いますが、どちらにしても、労働基準法13条のような規定がある訳ではないので、損害賠償請求権としての主張に至ると思われます。

旧パート法9条1項の賃金除外による退職金を嘱託職員にだけ支給しないことについては、差別的取扱いとされており、参考になる。

(本文)
平成27年3月31日 Y1の解散に伴い解雇
同年4月1日 Y1は存続期間満了により解散
同月10日 その旨の登記を行った。
Y2は、京都市立翌場を設置し、Y1の財産の全額を拠出してこれを設立した普通地方公共団体である。

雇用先の法人の解散に伴い解雇された原告のうちX正規職員ら10名が、
 Y1財団に対し、
Y財団の退職金規程に基づき算出された退職金に未払いがあるとして、Y2市と連携して未払退職金の支払いを求め
 Y2に対しては、
(i) 主位的に、Y2市は実質的にはY1財団の共同経営者の立場にあったとして、Y1と連帯して未払退職金の支払い
(ii) 予備的には、Y2がXらの退職金を含むY1の財源を確保する義務を負っていたにも関わらず怠ったことが違法
Y1との共同不法行為が成立するとして、国賠法に基づき、Y1と連帯して未払退職金相当額の支払い

解雇された原告のうちX嘱託職員ら4名が、
旧パート法8条2項及び、同法8条1項該当性を主張
Y1は、労働契約は同法8条2項に該当せず、同法9条1項は退職手当を賃金から除外しており、退職金にかかる差別は同法8条1項が禁止する差別的取扱いには含まれないと主張

旧パート法9条1項 :職務の内容、成果、意欲、能力又は経験を勘案し、賃金(通勤手当、退職金を除く)を決定するように努める。

 Y1に対し、
嘱託職員の退職金規程を定めていなかったことは、短時間労働者の雇用管理の改善などに関する法律8条1項に違反する差別的取扱いであるとして、

旧パート法8条1項 :短時間労働者の待遇と通常労働者の待遇を相違する場合、業務の内容及び、責任の程度、職務の内容及び、配置の変更の範囲、その他を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

(i) 主位的に、退職金規程に基づき、
(ii) 予備的には、不法行為に基づき、Y2と連携して、退職金規程が定められていればX嘱託職員らに支払われたであろう退職金相当額の支払いを求め、
 Y2に対しては、
Y1のX嘱託職員らに対する上記違法な差別的取扱いについて、共同不法行為責任を負うとして、国賠法に基づき、Y1と連携して、退職金相当額の支払いをそれぞれ求めた。

(判決)
 X嘱託職員らの期間1年の有期労働契約が5回から13回にわたって更新されてきた。
 更新時には契約内容の交渉もなく、X嘱託職員らがY1の用意した文書に押印して提出すると更新通知書が送られていた。
 X嘱託職員らの給与は正規職員のそれに比して月10万円程度低かった。
 業務内容及び責任の程度は全く同じであり、嘱託職員でも主任になるものがいた。

X嘱託職員らが、正規職員には退職金が支給されるのに対し、何ら退職金を支給されないことについての合理的理由は見当たらない。
X嘱託職員らに退職金を支給しないことは、旧パート法8条1項が禁ずる短時間労働者であることを理由とした賃金の決定に関する差別的取扱いであり、違法と言わなければならない
旧パート法には、労働基準法13条のような補充的効果を定めた条文は見当たらない。

労働基準法13条 :この法律で定める基準に達しない契約はその部分は無効
無効となった部分はこの法律で定める。

旧パート法8条1項違反によって、X嘱託職員らの主張するような請求権が直ちに発生するとは認めがたい。
損害賠償請求権のみが認められた。

Y1設立の経緯、Y1の運営に対するY2の関与、Y1の解散、その他本件に関する一切の事情を総合勘案
Y2がY1の実質的な共同経営者であるとは認められず、
Y2が法人格の異なるY1のX正規職員らの退職金を確保すべき義務を負うと認めるに足りる的確な証拠もない。
Y2がY1と共同して責任を負うと認めるには至らない。
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会社分割後の分社に異動した労働者と親会社間の合意解約の有効性


(考察)
いらなくなった従業員を分社した会社に異動させて、会社ごと潰してしまう方法をとった事例だと思われます。
分社前の会社の退職が有効といえるかが争点となっていますが、文書の記載をしてもらったとしても、それに至る協議の内容及び、プロセスを重視する必要があると思われる判例だと思われます。

(本文)
平成24年4月 従業員らに対して本件会社分割を実施することとその目的を公表
同年5月中旬頃 各説明に並行して、5条協議の実施が予定されており、B工場長から退職勧奨を受けた。
 5条協議:会社分割に伴う承継等に関する法律による通知をすべき日までに労働者と協議する。
労働組合からの脱退を条件にXを退職勧奨の対象から外し、オアスにてXの雇用を守ることを約束
同年5月上旬 Xら従業員に対し、A工場が分社化されること、分社化された後の従業員の労働条件には特段変更がない事を説明
同年6月4日 Xが労働組合を脱退したため、オアスがXの労働契約を承継することが決定し、書面にて本件会社分割に関する諸事項の通知を受ける。
同年6月7日 Y社の人事労務担当者がXらA工場の従業員に対して本件会社分割の概要を再度説明
 Xらは、生産・物流本部に属する従業員全員の労働契約がオアスに承継されること
 労働契約の承継が決定した者については承継されたくない旨を申し立てることは出来ないこと
同年7月2日 Y社は会社法上の新設分割の方法により、本件会社分割を行い、X・Y社間の労働契約は、Y社の100%子会社であるオアスに承継された。
Xはオアスとの雇用契約に署名押印
 新設分割:会社の営業の全部または一部の権利を他の会社に包括的に承継させる。
平成26年1月31日 一人株主であるY社がオアスの解散決議を行ったため、Xはオアスを解雇

XがY社に対し、主位的にオアスによる労働契約の承継はXとの関係で手続きに瑕疵がある。
 労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と賃金・賞与の支払いを求め、
 Y社が会社分割前の説明に反し、オアスの解散決議を行い、Xを失職させた等として、
不法行為に基づく損害賠償の支払いを求めた。

(判決)
承継法
労働契約の承継の如何が労働者の地位に重大な変更をもたらし得るものである
分割会社に対して、「承継される営業に従事する個々の労働者との間で協議(5条協議)を行わせることとし、当該労働者の希望などをも踏まえつつ分割会社に承継の判断をさせることによって、労働者の保護を図ろうとする趣旨に出たものと解される」
承継法3条は適正に5条協議が行われて当該労働者の保護が図られていることを当然の前提とするもの
 承継法3条 :労働者が分割会社との間で締結している労働契約、承継会社が承継する際、分割の効力が生じた日に承継される。

会社からの説明や協議の内容が著しく不十分であるため法が上記協議を求めた趣旨に反することが明らかな場合には、
当該労働者は当該承継の効力を争うことができる。

リストラや、労働組合に加入してリストラに抗う(争う)事でもって不利益を被る蓋然性が高いことを示唆される中で、
労働組合を脱退することと引き換えに労働契約のオアスへの承継の選択を迫られたにすぎず、
労働契約承継に関するXへの希望聴取とは程遠く、法が同協議を求めた趣旨に反すると判示している。
協議の内容及びプロセスを重視し、他方で、承継の有効要件として労働者の同意まで求めるものではない法の趣旨目的を蔑ろ(軽んずる)にするもので、失当と判断している。

本件会社分割に伴い、XはY社に対して、
Y社を退職することと、
以後、在職中に知り得たY社の機密事項を保持することを記した文書を提出している
<機密事項を保持した文書>
今般私は2012年7月1日付をもって、貴社を退職することになりましたが、業務上知り得た会社、関係会社、顧客または、他の社員に関する秘密事項、在職中知り得た機密事項及び貴社の不利益となる事項の保全に留意するとともに、退社後もこれを他に漏らさない事を確約いたします。

本判決は、上記文書は退職の意思表示というよりも秘密保持を誓約する内容のもの
X・Y社間の労働契約が承継されることになっていた状況下では、
退職という表現が、退社という事実上の意味を超えてXY社間の労働契約を将来に向けて合意解約するというような法的意味合いを持って用いられたものとはいえない。

Y社が未払賃金および賞与の支払義務を負うことが確認される。

内部告発に対する懲戒処分の有効性


(考察)
判断枠組みである次の文言が全てであると思います。
「仮に本件情報提供をしたのがXであったとして、その提供内容、すなわち本件告発内容を信じるにつき合理的な理由があったと認められる場合、本件情報提供は懲戒処分事由たる非違行為とすることは出来ない。」

(本文)
平成25年2月26日 Xは、当時Y1大学の理事長であったBに対し、
「岡山県立大学A学部入学実技試験採点結果改ざんについて」と題する本件告発書を提出

本件告発書
① 23年度入試の実技試験の採点では、上位得点者のデッサン1から2枚の得点を低く訂正するようにXに指示
② 24年度、採点責任者であったY4が、デッサンの得点を低く訂正するようXに指示
Yがこれに従わなかった。
本件内部告発を受けてY1大学では内部調査委員会を設置

平成25年3月18日 XおよびBへの取材が行われた。
1度採点していたデッサンの得点を低くなるように操作した疑いがある旨の報道
新たな調査委員会を設置

平成25年5月27日 23年度および24年度の入試において、実技試験の得点を変更する捜査が行われた事実はない旨の発表

平成25年5月30日 Xに対して、口頭で
① しばらくの間、授業をしないこと
② しばらくの間、学生の指導をしないこと
③ しばらくの間、教授会その他重要な会議に出席しない
しかしながら、翌31日、学生に対する授業・指導を行った。

Y2が議長を務めるY1大学教育研究審議会は、
本件内部告発の事実
E放送局に情報提供した行為が非違行為に該当
懲戒処分手続きを開始したことを書面で通知

平成25年9月13日 Xに対し停職3カ月とする懲戒処分。その理由とされた非違行為は、
① 23年度及び24年度入試において、実技試験の得点を低く変更する操作が行われたことはなかったのに、E放送局に本件情報提供をして、法人の名誉・信用を失墜させた。
② 24年度及び25年度の採点責任者による作品の並べ替えの終了宣言後にXが作品を移動したこと。
③ 授業禁止命令に従わず、Xが学生に対する指導を行ったこと


Y1大学の教授であるXが、停職3カ月の懲戒処分を受けた
① 本件停職処分は違法であるとして、無効の確認
② Y1大学に対し、
(ア) 停職期間中の給与等の支払い
(イ) 不法行為(民法709条)に基づく損害賠償金等
③ YらがXに対する授業の禁止等を内容とする命令が違法であること
及び、Y1大学の使用者責任を理由とする損害賠償金、慰謝料等

(判決)
 情報提供行為
仮に本件情報提供をしたのがXであったとして、
その提供内容、すなわち本件告発内容を信じるにつき合理的な理由があったと認められる場合、
本件情報提供は懲戒処分事由たる非違行為とすることは出来ない。

Y4もしくは他の人物が、得点が低くなるよう移動する旨の提案をし、
Xが反対して口論となっていたとする2名の第三者による供述
この供述はXの供述内容と合致している。

少なくともXが目撃した事実は、Xの認識においてそのような得点操作が行われた事実を疑わしめるに足りるものであったと認められる。

試験の得点を低く変更する操作が行われたと信じるにつき正当な理由があった。

情報提供は違法性を有しない。

 授業等禁止命令
本件情報提供が正当な行為と認められる以上は違法であるとして、懲戒事由として認められない

本件停職処分は違法であり、無効である。
未払給与等287万9,086円の支払いを命じた。

 Y1大学の不法行為責任、Y2~Y4の不法行為責任ならびにY1大学の使用者責任
その調査の過程や評価において、予断や偏見等に基づく不公正な手続、判断がなされた事をうかがわせるような証拠ないし事情は認められない。
大学に故意は認められない。
大学の過失を認めることもできないとして、停職処分に関して不法行為責任は認められない。

賞与の在籍要件の有効性

考察)
就業規則の作成をするに当たって、当たり前に記載されている賞与を支払する基準日の在籍要件について記載された判例です。
 賞与を将来の労働への意欲向上や将来の貢献への期待という要素を併せ持つ。
 賞与は賃金と同視することができず、また、企業が賞与の支給に関して基準日における在籍要因を設けること自体に合理性が認められる。
という考え方からすると、支給した賞与の返還請求も考えられそうですが、
労働基準法11条では、賞与についても賃金にすると明記されているので、難しいのかな?

本文)
原告Xら(いずれも4月生まれ)がY社の賃金規程が4月に定年を迎え同月末日で定年退職する者のみ期末手当を支給しない仕組みとしているのは合理性のない差別的取り扱いに該当し、
公序良俗に反し違法であると主張

Y社に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、平成28年度の下記手当相当額の賠償金及び遅延損害金の支払いを求めた。

昭和62年4月1日付で定めた就業規則
45条
① 社員の定年は満60歳
② 定年退職日は社員が定年に達する日の蔵する月の末日

141条1項
期末手当は、6月1日(夏季手当)及び12月1日(年末手当)(以下、両日を基準日)にそれぞれ在職する社員及び基準日前1か月以内に退職し又は死亡した社員に対して支給
142条
調査期間は、夏季手当については前年12月1日から5月31日まで、年末手当については6月1日から11月30日までとする。

平成元年4月1日付 → 期末手当の調査期間等の取扱に関する協定(同年6月1日付)を締結 → 28年4月1日付で、同年度の夏季手当の支給に関する労働協約を締結
141条1項改定
年末手当の基準日を11月1日
142条改定
調査期間を夏期手当については、前年10月1日から3月31日まで、年末手当については4月1日から9月30日まで

平成28年4月末日でXらは定年退職
退職日の属する年度の夏季手当の支給を受けられなかった。

判決)
Xらの主張を全面的に退けた。

① 賞与が査定対象期間における労働に対する報償的な性質を有するにとどまらず、将来の労働への意欲向上や将来の貢献への期待という要素を併せ持つ
② 企業においては多数の従業員に対する賞与の支給事務を迅速かつ画一的に行う必要がある。

企業が賞与の支給について、支給日に近接した基準日を設け、
当該基準日に企業に在籍していることを要求することは、当該企業の経営上の裁量に属する事項として合理性が認められる。

賞与は賃金と同視することができず、また、企業が賞与の支給に関して基準日における在籍要因を設けること自体に合理性が認められる。

正社員と有期契約社員に対する労契法20条の考え方


考察)
現場でも良くある話であり、正社員と有期契約社員の間で業務内容が大きく相違しないことの方が多い気がします。
それに対して、本判例は同一労働同一賃金ではなく、有期契約社員に適用される労契法20条で話が流れています。
同条では、一定の賃金の相違を許容しており、2から3割程度許容されており、手当については業務に起因しない手当の支払いを求めているように思います。

本文)
Y社との期間の定めのある労働契約を締結した原告Xらが、期間の定めのない労働契約を締結
Y社の正社員と同一内容の業務に従事していながら、手当などの労働条件について正社員と差異がある。
労働契約法20条に違反する。
Y社社員給与規程及びY社社員就業規則の各規定がXらにも適用される労働契約上の地位にあることの確認を求める。

労働契約法20条施行前においても公序良俗に反すると主張
同条施行前については不法行為による損害賠償請求権に基づき、
施行後については同条の補充的効力を前提とする労働契約に基づき、
予備的に不法行為による損害賠償請求権に基づき、
諸手当の正社員との差額と遅延損害金の支払いを求めた。

労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
業務の内容、業務の責任、職務の内容、配置の変更の範囲、その他の事情について不合理と認められるものであってはならない。
通勤手当、食堂の利用、安全管理などについての相違は特段の理由がない限り合理的とは認められない。

同条は、同一労働同一賃金の考え方を採用したものではなく、
同一の職務内容であっても賃金をより低く設定することが不合理とされない場合があることを前提としている
有期契約労働者と無期契約労働者との間で一定の賃金制度上の違いがあることも許容するものと解される。

労働契約法20条の不合理性の判断について
問題となっている労働条件の相違が不合理と評価されるかどうかを問題としている
合理的な理由があることまで要求する趣旨ではない。

労働契約法20条の効力(補充的効力の有無)
心得を示す規定ではなく、
同条に違反する労働条件の定めは無効というべき
民法709条の不法行為が成立し得る。

民法709条
故意または過失によって、権利または法律上保護される利益を侵害し、賠償を負う。

労働者の立証責任
不合理なものであることを基礎づける具体的事実についての主張立証責任を負う。

使用者の立証責任
不合理なものであるとの評価を妨げる(評価障害事実)についての主張立証責任を負う。
労契法20条の諸要素を総合考慮
労働条件の相違が不合理であると断定するに至らない場合、当該相違は同条に違反するものではない

就業規則の比較
適用される就業規則等が異なるのは、有期労働契約か無期労働契約かによる
労働条件の相違は、期間の定めの有無に関連して生じたものであると認められる。

正社員と契約社員に適用される就業規則および給与規程等が個別独立に存在し、
就業規則、給与規程等の合理的解釈として、正社員の労働条件が有期契約社員に適用されると解することは出来ない。

判決)
<相違する個別の労働条件の不合理性>
労働条件の相違について
不合理性が認められたのは、年末年始勤務手当、住居手当、夏期冬期休暇、病気休暇
不合理性が認められないと請求が棄却されたのは、外務業務手当、早出勤務等手当、祝日給、夏期年末手当、夜間特別勤務手当、郵便外務・内部業務精通手当
労契法20条に違反するもので、各手当の不支給は、Xらに対する不法行為を構成する。

Xらの損害
正社員に対する支給額の8割相当額
住宅手当については6割相当額を損害として認める。

リハビリ勤務中止後の休職満了による解雇の有効性


考察)休職に関する考え方で参考になる。
復職の検討としては、通常業務を想定した作業付加の元で勤怠がきっちりとできること
リハビリ勤務では、作業の成果や責任などを求めなければ、会社の指示に従わせること自体は当然であり、問題ない。

Xは、うつ病を理由に
20年2月25日から同年6月24日まで 傷病欠勤
20年6月25日から22年10月31日まで 傷病休職(22年2月25日から無給休職)
22年5月12日から テスト出局
22年11月1日 復職
うつ病に起因するとみられる頭痛又は体調不良を理由に
23年8月19日、同月25日及び26日 傷病欠勤
うつ病が再発したことを理由に
23年9月12日から24年1月13日まで 傷病欠勤
24年1月16日から 傷病休職
25年4月8日から テスト出局
25年7月26日 テスト出局が中止
25年9月16日から 無給休職
26年9月22日から テスト出局
26年12月19日 中止
27年4月15日 休職期間が満了し、解職

就業規則では、
傷病欠勤が4カ月を超えた場合には休職
休職期間の延長に関する規定
休職期間が満了した際には解職
4カ月の傷病欠勤中は賃金の95%
それに続く1年8カ月の傷病休職期間には90又は95%
その後の1年6カ月は無給
4カ月を超えた休職者には産業医が認定した場合に限り、復職を命ずる。

テスト出局制度
職場のメンタルヘルスケアガイドに詳細な定めがあり、リハビリを行うに当たってYが場を提供するもの
業務ではなく、リハビリの一環として位置づけられている。

 同期間満了前に精神疾患が治癒していたと主張
解職が無効
労働契約上の権利を有する地位の確認
テスト出局開始以後の賃金及びこれに対する遅延損害金を請求

判決)
テスト出局は、傷病休職中の職員に対する健康配慮義務(労働契約法5条)に基づく職場復帰援助措置義務の考え方を背景に、Yが制度化したもの

 労働契約法5条(労働者の安全への配慮)
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

その内容として、労働契約上の労務の提供と同水準又はそれに近い水準の労務の提供を求めることは制度上予定されていない。

原則24週間のプログラムで、後半12週間はフルタイムの出局をすることになっており、管理職がその管理監督を行うことを指摘

主治医による復職可能との判断を前提にし、段階的に出局時間を長くし、作業負荷を増加させて通常勤務に近づけていくこと自体は合理的

最後の2週間は職場の実態に合わせて通常業務を想定した作業を行うこととされている

テスト出局のほとんどの期間の作業内容は軽度のものが想定されており、職員、管理職及び産業医の3者で協議して決定・変更するもの

<復職の検討を行う状況の目安>
疾病の完治が条件ではなく、
通常業務を想定した作業負荷の元において、無断で遅刻、退勤、欠勤することなく、通勤を含めて安全に実施されていること
制度上、作業の成果や責任などが求められているとは認められない。

管理職の指示に従うこと自体は当然
テスト出局中にXが行った作業が、労働契約上の労務の提供といえるようなものとは認められない。

 テスト出局の中止や解職に違法性があると主張
不法行為に基づく損害賠償などを請求

判決)
対人関係を含めた日常生活上のストレス負荷に端を発した側面が大きいと考えられる。
テスト出局において定められた出退局時刻を守って出局することは、精神科領域の疾患に罹患した職員が復職するためのステップとして重要

平成26年12月18日にXの精神状態ないし健康状態が悪化し、同月19日も状態が回復していなかった

テスト出局を中止したことに違法な点はない事等を指摘

Xの地位確認及び賃金請求はその前提を欠き、不法行為も認められない。

公務員の不法行為に対する考え方

(考察)国家賠償法1条1項の考え方が重要となる判例であると思われる。私的な事と公的な事の仕分けが重要である。
<甲事件>
Y2法人が設置する大学、大学院の准教授であるXが、所属する教室の主任であったY1に対し、
Y1から度重なるハラスメント行為を受けたと主張
不法行為を理由とする損害賠償請求権に基づき、1,920万円等の支払いを求める
妨害活動及び、名誉棄損行為の差し止め

判決)
(i) Y1の行為の違法性について、主任としての裁量を逸脱または濫用した違法な行為である。
(ii) XのY1に対する請求は、XがY2法人のハラスメント防止委員会などによる解決ではなく、訴訟による解決を希望
提起したことが信義則に反し、訴権(国家に対して個人の権利の保護を要求する。)の濫用に当たるということは出来ない。
(iii) ①から⑤の行為は、私経済作用又は国家賠償法2条の営造物の設置管理作用に当たるものではないことは明らか
公権力の行使に当たり、Y1の職務行為そのものというべき
国家賠償法1条1項の適用があるため、Y1個人は、不法行為に基づく損害賠償責任を負わない。
① 間仕切り上のホワイトボード等を設置
② 鍵の管理にかかる行為
③ 鍵の紛失についての発言をした行為
④ 報告書を提出した行為
⑤ 授業の割り当てにかかる行為

国家賠償法2条
設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じた時は国又は公共団体はこれを賠償する。

Y1の公務員としての立場を背景とすることなく行われた私的な行為は国家賠償法1条1項の適用がないため、不法行為に基づく損害賠償責任を負う。

Y1はXに対し、本判決慰謝料の額150万円をもって相当と認める。

<丙事件>
Y2法人に対して、
Y2法人が、Y1のXに対するハラスメント行為に加担し、これを放置したとして、
内部告発者の保護義務ないし職場環境の整備義務違反の債務不履行に基づき、

Y1の行為について
民法715条ないし国家賠償法1条1項に基づき、合計1,500万円等の支払いを求める

民法715条(使用者責任)
他人を使用する者は、第3者に加えた損害を賠償する。
相当の注意を払ったときはこの限りではない。

国家賠償法1条1項
公務員がやったことは国が責任を取る。

(判決)十分な調査を行っておらず、具体的な対応もしていない。
Xの職場環境改善に向けた対応義務を尽くさなかったことについて、債務不履行を負う。
Y2法人がXの職場環境の破壊に組織的、積極的に加担したとする的確な証拠はない。
精神的苦痛に対する慰謝料の額を50万円とした。

経営悪化に伴う分限免職・給料表廃止


平成14年度以降 赤字経営
19年度以降 医業収入に対する人件費の割合が100%を超える
20年度以降 内部留保金が尽き、一般会計(租税を財源として、政府の一般的な収入と支出を経理する会計)からの繰入が行われていた。
その額は市の決算額の約2.5%に達していた。

平成20年 指定管理者(期間を定めて公の施設の管理運営を包括的に代行)として、Y市も出資して訴外医療法人A会が立ち上げられた。

平成22年4月 Y市が周桑病院の運営を指定管理者制度に移行

Y市は、指定管理者制度導入に伴い、医療部門関係職員151人全員を分限免職とする方針を決定
 職員への説明会や労働組合との交渉も経たうえで、
 他病院への就職あっせんを行うこと
 希望する者全員を分限免職の翌日に市長部局で任用

市長部局任用を希望したXらを含む47名は市長部局給料表の適用を受けるようになり、1から3割程度の給与減額

(訴え)
配置換えによって任用したならば、市職員の初任給、昇給、昇格などに関する各規定が適用ないし準用される
給与の定価が抑えられる
分限免職とした点で職員の身分保障への配慮を欠いており裁量権の逸脱・濫用がある

 Y市長がXらに行った分限免職処分(個人の責任は問わない。民間の解雇に相当)の取消
 従前適用されていた職員の給与に関する規程の定める給与表をY市が廃止した処分の取消

(条文)
地方公務員法24条1項(職務給の原則)
職員の給与がその職務と責任に応ずるものでなければならない。

1割ないし3割減というXらの給与上の不利益は、許容し得ないものであるとまではいえない。

地方公務員法28条(降任、免職、休職等)1項
その意に反して、これを降任、免職できる。
4号 職制もしくは定数の改廃又は予算の減少により、廃職又は過員を生じる場合

裁量権の逸脱・濫用があれば違法となること
その場合の裁判所の審査権は、違法性を有するかどうかという範囲に限られ、このような違法の程度に至らない判断の当不当には及ばない

(結論)
 配置換えによる任用も分限免職後の任用も適用される給料表は変わらないこと
 本件各処分は実質的に降任に近く、「公務員としての地位を失わせる通常の分限免職処分とは異なる」
 任用後の減給による不利益は許容し得ないものであるとまではいえないこと

本件各処分および本件給料表廃止処分の取消請求は理由がないとして、Xらの控訴を棄却
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