fc2ブログ

精神障害の発症に関する業務起因性

(考察)
残業に関する明記のない判例として、興味があります。
労働者のストレスによる脆弱性について考慮され、それが尚且つ相当因果関係が認められています。
今後の会社運営として、各従業員の配慮が一段と必要であると思われます。

(本文)
平成20年7月 Xは臨床検査技師として本件病院の検査室において勤務を開始
平成22年6月1日 Eが入社
Eは、Xに対して退職を勧める発言をし、他社の募集要項まで渡すこともあった。
同年10月1日 Eが技師長に昇格しXの上司となった
同年11月5日 Xは「退職を勧められている件と仕事の状況」と題する37ページにわたる文書を提出し、検査室の状況の把握と職場の環境改善を要請
平成23年1月27日 4者面談において、C事務部長らは冒頭からXに対して本件病院として辞めてもらいたい旨を明確に申し入れ、Xが円満退職に応じない場合は顧問弁護士を依頼する。揉めるようなら弁護士と話すように一方的にB会の意思を伝えた。
Xは、本件4者面談日のころから3時間程度しか眠れない日が続き、平成23年1月末日頃までの間に本件疾病を発症し、その後しばらく働き続けた後、求職した。

Xがパワハラや退職勧奨ないし強要を受けて精神障害を発病
労働者災害補償保険法に基づく休業補償給付を請求
処分行政庁である半田労基署長から業務上の疾病とは認められないとして同給付を支給しない旨の処分を受けたため、取消を求めた。

(判決)
Xの心理的負荷は、社会通念上、客観的にみて精神障害を発症させる程度に過重なものであったと評価することが相当とされた。

疾病が業務上のものであるといえるためには)
業務と当該疾病との間に相当因果関係が認められることが必要
当該危険が現実化したと評価し得る場合に、相当因果関係が認められる。

業務に内在又は随伴する危険の程度)
通常の勤務に就くことが期待されている者を基準とすべきであり、ここでいう通常の勤務に就くことが期待されている者とは、
安全な健常者のみならず、一定の素因や脆弱性を抱えながらも勤務の軽減を要せず通常の勤務に就き得る者
平均的労働者の再下限の者も含む。

労働省労働基準局長通達「心理的負荷による精神障害の認定基準について」)
法令と異なり、行政上の基準(通達)にすぎない
参考資料と位置付けるのが相当

スポンサーサイト



年金の受給者条件は差別的取扱いに当たるか?


(考察)
憲法趣旨として、年金の支給は国の国民に対する生活面の向上及び、増進に努めるための一種として考えられているようです。女性の社会進出が増進することで今後の法改正が考えられそうです。

(本文)
地方公務員災害補償法に基づく遺族補償年金が対象とする遺族のうち、
配偶者につき、妻には受給資格年齢を設けず、夫にのみ年齢要件を設けている区分が、差別的取扱いとして憲法14条1項違反となるかが争われた事案

憲法14条1項 :すべての国民は法の下で平等

Xの妻は、公立中学校の教論として勤務していた平成10年10月に自殺
死亡は22年4月に公務災害として認定
Xは、Y基金らに対し、遺族補償年金の支給請求
同年金の受給権者に該当することを支給要件とする3つの給付の支給申請

3つの給付とは)
地方公務員災害補償基金業務規定に基づく遺族特別支給金
遺族特別援護金
遺族特別給付金

地公災法32条1項)
遺族補償年金を受けることができる遺族として
生計維持関係にある配偶者(内縁関係を含む)
子、 父母、孫、祖父母、兄弟姉妹を掲げる。
但し書で、妻以外の者には一定の年齢または障害状態にあることを求めている。
夫に関する年齢要件は、職員死亡時に夫が55歳以上で、60歳から受給が可能

51歳であったXは、受給権者に該当しないとして、請求した給付のいずれも不支給処分

争点)
遺族補償年金の受給要件として、配偶者のうち夫にのみ年齢要件を付加していることが、憲法14条1項に違反するか否か

(判決)
Xの主張を否定

遺族補償などの年金化の趣旨)
基本的に社会保障制度の性格を有する
損害補償の性格は従たるものにとどまる
憲法25条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講じるかの選択決定は、立法府の広い裁量に委ねられている。
憲法25条 :すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は全ての生活部面において、社会福祉、社会保障及び、公衆衛生の向上及び、増進に努めなければならない。

何ら合理的理由のない不当な差別的取扱いをするときは別に憲法14条1項違反の問題を生じ得る。



専門業務型裁量労働制に関する労使協定の有効性


(考察)
労使協定の労働者代表の選出に関して話が出ており、今後代表の選出に関しては細かい対応が必要になる可能性がある。
周知方法についても、具体的に説明を求められるため、説明会などの方法が望ましいように思われる。
管理監督者に関する考え方についても記載されており、参考になる。

(本文)
Xらが、
① 未払時間外手当があるとして未払時間外手当元金及び遅延損害金
② 各未払時間外手当に対応する労基法114条に基づく付加金及び遅延損害金の各支払い
③ A1について、同意のないままなされた賃金の減額変更が無効であるとして未払賃金差額及び遅延損害金、有給休暇を消化したにもかかわらずY社がその分の賃金を支払わないとして当該未払賃金額及び遅延損害金
④ A1について、長時間労働によりうち病に罹患したとして不法行為または債務不履行である安全配慮義務違反による損害賠償として、慰謝料および弁護士費用のうち相当額ならびに遅延損害金の各支払い

A1は、C部技術課課長職であったが、
平成25年12月度に係長に降格
月4万円の役付手当の減額
26年4月にも賃金減額
A1は同年6月4日にうつ病との診断

平成23年4月20日 Yの従業員であるBとの間で専門業務型裁量労働制にかかる労使協定
労基署に届け出
同月21日 就業規則を改定して専門業務型裁量労働制を採用
当該就業規則を労基署に届け出

平成27年2月10日 A1はYに対して、同年3月20日をもって退職するとの記載のある退職届を提出したが、撤回し、同年3月31日をもって退職することを通知
同月21日から同月31日までの労働義務日すべてについて有給休暇を取得する旨を通知

(判決)
Xらの請求をいずれも認容

専門業務型裁量労働制を採用するためには、
① 労基法38条の3第1項に従って労使協定が行われることに加えて、
② 個別の労働者との関係では、専門業務型裁量労働制を採用することを内容とする就業規則の改定などにより、専門業務型裁量労働制が適用されることが労働契約の内容となることを要する。

本件)
① 労働者の過半数を代表する者とされた際の選出の手段、方法は不明
② Yは、労働者代表の選出の具体的な選出方法について何ら説明することができない。
③ 従業員の過半数の意思に基づいて労働者代表が適法に選出されたことをうかがわせる事情は何ら認められない。
④ 保管場所が従業員に周知され、いつでも閲覧し得る状態になっていたということは出来ない。

回覧資料について
① 専門業務型裁量労働制に関して、労働時間等について変更との記載のみであり、周知といえるかは疑問
② 具体的な説明がなされたことを認めることのできる客観的な証拠はない。

実質月額4万円の役職手当
総合考慮して、管理監督者性が否定
① 時間外手当が適用されず経営者に準じる管理監督者に当たる役職に対する対価とは考え難い。
② タイムカードの打刻を行わず時間管理が労働者に任されている外形を取っているとしても、実際に労働時間管理が原告A1に任されていた実質がない
③ 事業について何らかの裁量を有し、労務管理、人事、予算などについての決定権限を持っていたものと認めることのできる事情がない

退職届
合意解約の申込みの撤回は有効である。
① 労働契約の合意解約の申込みと解釈
② 合意解約に伴うその他の条件について交渉を開始したものと解することができ
③ 未だA1の合意解約の申込みに対するYの承諾の意思表示があったものと解することができない。


プロフィール

roumutaka

Author:roumutaka
毎日、2時間以上の勉強を欠かさず、一歩ずつでも前進致します。
顧問先様への新しい情報の発信及び、提案の努力を怠りません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる