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基礎疾患を有する従業員の心停止による死亡と業務起因性


(考察)
どんな形であっても業務起因性を認める状況が出来ている気がします。今後の判例も気になるところです。

(事件概要)
Kが心停止により死亡
Kの妻であるXが、Kの死亡は過重な労働に従事したことが原因であって業務に起因するものであると主張
宮﨑労働基準監督署長に対し、労災保険法による遺族補償給付及び葬祭料の請求ならびに労災就学など援護費の申請を行った。
本件各不支給処分を受けた。
その取り消しを求めた事案

(判決)
Kの職場において発症前6か月以前から平均して2時間を超える時間外労働が恒常化
1週間という短期間内に、出張が3回断続的に行われており、
出張先は、大口の取引先で本件クレームにかかる商品を販売した相手方であった。

基礎疾患として
Kにブルガダ症候群が存在
心室細動によって引き起こされた可能性が否定できない。
誘因の有無やその程度とは無関係に発症し得るものであるとしても、
本件発症はKが従事していた業務に内在する危険が現実化したものと評価するに十分
Kの業務との間に相当因果関係を認めることができる。

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うつ病悪化による自殺と安全配慮義務


(事件概要)
22年6月3日から8月31日 Kが、うつ病、適応障害の病名で89日間の病気休暇
職場復帰してから約半年後の異動
23年4月1日付 AセンターB係の業務主任として勤務
指導係であった業務主任のCから暴行(パワハラ)
同年12月14日 E所長に対し、体調が思わしくない旨申出
同月15日 F1医師作成の診断書を提出
診断書「90日程度の加療及び自宅療養が適切といった旨が記載」

うつ病を悪化させて自殺したなどとしてKの両親Xらが、Y市に対し
安全配慮義務違反の債務不履行または国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の支払いを求めた。

国家賠償法1条1項 :公務員が故意又は過失によって違法に他人に損害を与えた時、国又は公共団体がこれを賠償する。

(争点)
(1) パワハラの存否
訴えは一貫しており、裏付けるパソコンに保存された写真、録音等も存在
十分信用に値する。

(2) 安全配慮義務違反の成否
職場環境調整義務として、良好な職場環境を保持する義務
パワハラの訴えがあったときに、
調査し、
指導、
配置換えなどを含む適切な措置を講じるべき義務を負う。

本件)
Kのパワハラの訴えに適切に対応しなかった。
違反したものというべき

(3) 死亡との間の相当因果関係の有無
EがKから自殺念慮(死にたい)を訴えられた直後に主治医や産業医等に相談をして適切な対応をしていれば、Kがうつ病を増悪させ、自殺することを防ぐことができた蓋然性(確実性)が高かったものというべき
既往症があったとしても、素因(原因)として考慮すべきであっても、相当因果関係があるかどうかは別問題

(4) 損害の内容及び額
慰謝料2,000万円
逸失利益3,799万3,337円

(5) 過失相殺等の可否
うつ病の既往症による脆弱性(もろくて弱い性格)が重大な素因となっていることも明らか
Xらは、両親として、不安定な状況や病状悪化等について認識していたことが認められる。
主治医等と連携を取るなどして、Kのうつ病の症状が悪化しないように配慮する義務
合計7割としてこれを減ずることが相当


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