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自殺に対する安全配慮義務

(参考文言)
<予見可能性>
適応障害の発症及びこれによる自殺は、長時間労働の継続などにより疲労や心理的負荷などが過度に蓄積し、労働が心身の健康を損なう態様の一つ
使用者はそのような結果を生む原因となる危険な状態の発生自体を回避する必要がある。
就労環境などに照らし、労働者の健康状態が悪化する恐れがあることを容易に認識しえたというような場合には、結果の予見可能性が認められるものと解するのが相当

<不法行為>
Y2はY1に代わって業務上の指揮監督を行う権限を有する者として、注意義務の内容に従ってその権限を行使すべき義務を負っている。

<逸失利益の算定>
Y1における給与体系が男性大卒全年齢平均年収よりも相当程度低い水準であることに鑑みれば、男性学歴系全年齢平均年収を基礎収入とするのが妥当

<損益相殺>
労働福祉事業の一環として、被災労働者の援護などによりその福祉の増進を図るために行われるものであるため、Xらが受領した遺族特別支給金及び意足特別一時金を損害額から控除することはできない。


(経緯)
平成21年5月頃まで Y2(C1営業所長)からC1営業所における従業員の増員の要請
同年6月 LをC1営業所に勤務
同年8月 Fを勤務
平成21年9月中旬 適応障害を発症
平成22年11月30日 C労働基準監督署長は、K(大卒者)が業務上の心理的負荷により適応障害を発症した結果、自殺に至ったものとして、自殺が業務災害に当たるものと認定し、遺族補償一時金837万6千円、遺族特別支給金300万円、遺族特別一時金13万6千円および葬祭料56万6,280円を支給

(業務起因性)
蓄積した疲労と相まって、正常な認識、行為選択能力及び抑制力が著しく阻害された状態となり、自殺
 自殺前3か月前の時間外労働 月129時間50分に上る
 自殺5か月前 月100時間程度か、それを超える恒常的な長時間労働
 内容的にも肉体的・心理的負荷を伴う業務に従事
 適応お生涯発症後も引き続き長時間の時間外労働への従事を余儀なくさせられ、状態が悪化

(予見可能性)
Kの業務の過重から、勤務状態がKの健康状態の悪化を招くことは容易に認識し得た。

(安全配慮義務)
Kの業務の負担や職場環境などに何らの配慮をすることなく、その長時間勤務などの状態を漫然と放置し、Y1の行為は、不法行為における過失を構成する。

(Y2の不法行為)
Y2の権限の範囲内で期待される相応の行為を行っていたと評価でき、義務に違反したとまでいうことはできず、不法行為法上の責任を負うものとは認めることができない。
 従業員に対し、業務に余裕ができやすい夕方の時間帯などに各自適宜休憩を取るように指導
 増員してもなお、長時間労働が解消されていないことを認識することができた。
 Y1における人員配置の権限があったとは認められない
 他の営業所においても報告とは異なる長時間労働が常態化していたものと伺われる。
 毎月の残業時間の報告によって、従業員の長時間労働が解消されていないことをY1に認識させていた。

(損害額)
<過失相殺>
出勤前の飲酒や自殺前日の出勤前の飲酒も、適応障害を発症したことによる問題行動と評価でき、業務の付加以外の私的な出来事や個体側の要因に起因してこのような問題行動に至ったとはいえないことから、Kの過失として評価することはできない。

Kの損益相殺後の死亡逸失利益残元金4,110万6,580円および慰謝料2,200万円と、弁護士費用630万円が認容
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