部長に対する懲戒解雇などの有効性
(参考文言)
<労働者の職位や役職を引き下げる降格処分>
人事権の行使として就業規則などに根拠規定がなくても行い得る。
使用者が有する人事権といえども無制限に認められるわけではなく、その有する裁量権の範囲を逸脱、またはその裁量権を乱用したと認められる場合は、その降格処分は無効
特に、給与も減額されるなど不利益を被る場合には、その降格に合理的な理由があるか否かは、その不利益の程度も勘案しつつ、それに応じて判断されるべき
<懲戒権>
顧客リストの送信により、Yに実害が生じた形跡は認められない
<不法行為>
Xの行為も懲戒事由に該当する行為であって、責められるべき点があることも否定できないことに鑑みると、解雇後の賃金損失は填補されており、賃金相当額以上に損害賠償を命ずべき特段の事情はない
(経緯)
部長職として、賃金を月額48万円とする期間の定めのない雇用契約を締結
平成21年12月14日 分析のため必要である旨を告げて、Y社取締役からY社顧客リストのデータを受け取った。
同月18日および24日 訴外B2社の代表取締役CにメールでY顧客リストを送信(上司への相談なし)
平成22年1月19日 Yの退会済の過去の顧客から、Yの宣伝メールが送信されたと苦情メールが送信され、Xに対して注意をし、Xもその注意を受け入れた。
平成22年3月30日 部長職降格・月額給与5万円(部長職手当相当額)降給処分
平成22年4月7日 Xの送受信メールの内容の調査を行い、顧客リストを送信したCへのメールを発見し、XがB2に転職して、顧客情報を不正に利用することを企図していると推測
平成22年4月8日 Xを問いただしたところ認めたが、転職を検討したこともあるが取りやめた、CがYの顧客情報を利用したことはないはずであるなど述べた。
顧客データ送信行為について、就業規則61条および62条に基づいて、Y社から懲戒解雇処分
(訴え)
解雇が無効であるとして、地位確認および解雇後の賃金の支払いを求める。
降格・降給処分が無効であるとして、部長の地位にあること及び降格・降給処分前の額である月額48万円の基本給の支払いを受ける地位にあることの確認並びに平成22年4月以降本判決までの賃金支払い
懲戒解雇などが不法行為に当たるとして、損害賠償を請求
(判決)
降格・降給処分を裁量権の濫用により無効
具体的事実のうち、顧客からの苦情のみで、どの程度広範囲の顧客に対し送信したかについては証拠上明らかでなく、役職手当相当額5万円の賃金減額を伴う処分の合理性を基礎づけることはできない。
懲戒権の濫用に当たり、無効
顧客リストの送信には、Y商品の販売代理店の営業を促進させ、Yの売上を伸ばすという面があったこと
当時行い得た調査を十分に行わずに踏み切っている。
不法行為の成立を否定
<労働者の職位や役職を引き下げる降格処分>
人事権の行使として就業規則などに根拠規定がなくても行い得る。
使用者が有する人事権といえども無制限に認められるわけではなく、その有する裁量権の範囲を逸脱、またはその裁量権を乱用したと認められる場合は、その降格処分は無効
特に、給与も減額されるなど不利益を被る場合には、その降格に合理的な理由があるか否かは、その不利益の程度も勘案しつつ、それに応じて判断されるべき
<懲戒権>
顧客リストの送信により、Yに実害が生じた形跡は認められない
<不法行為>
Xの行為も懲戒事由に該当する行為であって、責められるべき点があることも否定できないことに鑑みると、解雇後の賃金損失は填補されており、賃金相当額以上に損害賠償を命ずべき特段の事情はない
(経緯)
部長職として、賃金を月額48万円とする期間の定めのない雇用契約を締結
平成21年12月14日 分析のため必要である旨を告げて、Y社取締役からY社顧客リストのデータを受け取った。
同月18日および24日 訴外B2社の代表取締役CにメールでY顧客リストを送信(上司への相談なし)
平成22年1月19日 Yの退会済の過去の顧客から、Yの宣伝メールが送信されたと苦情メールが送信され、Xに対して注意をし、Xもその注意を受け入れた。
平成22年3月30日 部長職降格・月額給与5万円(部長職手当相当額)降給処分
平成22年4月7日 Xの送受信メールの内容の調査を行い、顧客リストを送信したCへのメールを発見し、XがB2に転職して、顧客情報を不正に利用することを企図していると推測
平成22年4月8日 Xを問いただしたところ認めたが、転職を検討したこともあるが取りやめた、CがYの顧客情報を利用したことはないはずであるなど述べた。
顧客データ送信行為について、就業規則61条および62条に基づいて、Y社から懲戒解雇処分
(訴え)
解雇が無効であるとして、地位確認および解雇後の賃金の支払いを求める。
降格・降給処分が無効であるとして、部長の地位にあること及び降格・降給処分前の額である月額48万円の基本給の支払いを受ける地位にあることの確認並びに平成22年4月以降本判決までの賃金支払い
懲戒解雇などが不法行為に当たるとして、損害賠償を請求
(判決)
降格・降給処分を裁量権の濫用により無効
具体的事実のうち、顧客からの苦情のみで、どの程度広範囲の顧客に対し送信したかについては証拠上明らかでなく、役職手当相当額5万円の賃金減額を伴う処分の合理性を基礎づけることはできない。
懲戒権の濫用に当たり、無効
顧客リストの送信には、Y商品の販売代理店の営業を促進させ、Yの売上を伸ばすという面があったこと
当時行い得た調査を十分に行わずに踏み切っている。
不法行為の成立を否定
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