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退職年金の減額

こんばんは。
本日は、昨日のスキーのために、足が筋肉痛になっています。
動くのすら辛い現状に、年を感じる今日この頃です。

さて、本日の判例は、退職年金の減額についてです。

昨今、会社の倒産が多く聞かれる中、その会社が年金の積立を行っている団体に対する年金支払請求権の範囲(?)について、参考になる気がしました。


(事件概要)
平成11年11月、中央労使団体は、確認書を作成(港湾労働者年金制度)→ 12年5月以降、年金額を従来の30万円から25万円に減額することなどを合意(被告Y協会)→ 本件規程における年金額の定めを、30万円から25万円に改定 → これに対し、Xらは、Yに対して、年金額の一方的な減額は無効 → 年金の減額分の支払いを求めた。(判決)→ Xらの請求を認容

中央労使団体 :A協会は、全国の港湾運送事業者などを構成員とする事業者団体(他方)→ B協議会及びC同盟は、港湾運送事業に従事する全国の港湾労働者で組織される労働者団体

港湾労働者年金制度 :AとBおよびCとの間で合意された協会に基づいて制定(年金額の増額、支給方法などの変更)→ 中央労使団体の協定に基づく本件規定の改正や、確認書の作成といった方法(受給資格者:原告X1からX47およびX48からX50)→ Yから港湾労働者年金制度規定に基づき年金受給権を有する旨の裁定(港湾労働者年金証書の交付)→ 年額30万円の本件年金を受給

被告Y協会 :港湾関係の産業界の労使の団体が合意して創設された港湾労働者年金制度を運営する財団法人

登録事業者 :年金原資を負担することを義務づけられ、労働者の登録義務、労働者の変更・脱退届出義務 → 裁定請求の手続き義務などをYに対して負っている。


(考察)
本件減額の効力 :年金支給に関する法律関係は、登録事業者を要約者、Yを諾約者、受給資格者を第三者とする第三者のためにする契約(受給資格者が取得する年金支払請求権)→ 裁定請求という受益の意思表示によって生じると解するのが相当 → 事業者が加入申請手続き(Yがその加入申請を承諾)→ 当該加入契約の締結を承諾 → 年金制度に加入(適用対象者として労働者を雇用などした場合)→ 年金制度に登録し、受給資格要件を満たした上でYに対して裁定請求 → Yが裁定(本件規程)→ すでに裁定を受けた受給傾斜の年金額が当然に変更される旨の裁定はない。(裁定後)→ 年金額の減額がありえることを予定した留保条項などは全くない。→ 本件留保合意の存在を認めることは出来ない。

本件留保合意の存否 :本件規定の内容だけでなく、本件規定の位置づけ、中央労使団体の協定書の内容、従前の年金額などの改定経緯などを考慮して決定すべきであるという主張(本件年金制度)→ 多数の権利者につき集団的・画一的処理を要するもの → 本件規定の解釈によって受給権者の権利関係が大きく影響を受けるもの(解釈)→ 規程の文言から離れた解釈を求めることそれ自体が受給権者の法的地位を著しく不安定にすること(減額請求権の留保)→ 文言により明らかにされていない。(中央労使団体の交渉)→ 将来の年金減額のための規定を設けることが議題になったことや検討されたこともない。(本件減額の問題)→ Y、登録事業者および、中央労使団体のいずれも、将来における年金額の減額変更を年金受給権者の承諾なくして行なうことが可能であるとは考えていなかった。

本件年金制度に関する法律関係 :公的制度を構築することを目的として行なわれる多数当事者間での複合的な契約関係があるという主張(本件年金制度)→ 労働者の福祉に寄与する公的な性格をもつ。(可能な限り集団的・画一的処理が要請されて、個別の年金受給者が受給)→ 自らの意思に従って契約内容を選択・決定する余地がないという実態が認められる。(しかし)→ 直ちに、本件年金支給の法律関係を多数当事者による複合的な契約関係であるととらえなければならないわけではない。

事情変更の法理 :権利の変更が認められるという主張(適用される場合)→ 客観的な権利変更の必要性のみならず、権利者に対して権利変更に関する適正手続きが保障されている必要(本件減額)→ 受給権者との関係で個別同意の取得、協議の実施、意見の聴取、説明の実施などがなされていない。(労働者側の意見が労働組合を通じて反映されている場合)→ 受給権者と現役労働者との利害は一致しているとはいえない。→ 年金減額を否定

(年金原資の未納と年金支払請求権)
年金原資の納付が年金支給義務履行の停止条件でありまたはこれと先履行の関係にあるという主張

原資負担者が年金原資の負担額を納付することが年金支給義務の履行の停止条件又は先履行の関係にあることを定めた規定は存在しない。(倒産などにより年金原資を負担する事業者が消滅した場合)→ 年金受給資格者が年金裁定請求の手続きを行い又は地区港湾協会と協議の上で決定すると規程されている。(年金原資相当の負担額が納付されていない場合)→ 年金の支給が停止されることを予定していたとは認められない。

年金原資の納付が年金支給義務履行と同時履行の関係にあるという主張

受給資格者が事業者と勤務して規程期間労務を提供して退職した後に受給する年金(受益の意思表示(裁定請求)をした後)→ 全く知らない事情によって、年金支給額が左右されるのは相当でない。(登録時業者が倒産などにより原資負担能力を喪失した場合)→ 原資負担者を変更することにより年金支給義務を尽くすとされている。→ 年金原資負担者の年金原資の納付とYの年金支給義務との間に対価的な関係を認めることは出来ないとして、これを退けている。
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