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ホームヘルパーの頸肩腕障害・腰痛症発症と公務起因性

(認定基準)
 「上肢業務に基づく疾病の取り扱いについて」(平成9年4月1日地基補103号)
頸肩腕障害と認められるのは
① 上肢等に負担のかかる作業を主とする業務に相当期間従事した後に発症したものであること
② 発症前に過重な業務に従事したこと
③ 過重な業務への従事と発症までの経過が医学上妥当なものと認められること
を満たす場合

 「腰痛の公務上外の認定について」(昭和52年2月14日地基補67号)
① 「腰部に過度の負担のかかる業務に比較的短期間従事する職員に発症した腰痛
② 当該職員の業務内容、作業態様、作業従事期間及び身体的条件から見て、当該業務に起因して発症したものと認められ、
③ かつ、医学上療養を必要とするもの」

 頸肩腕症候群等に関する専門検討会の報告書(平成9年1月・労働省)
頸肩腕症候群は頸肩腕部に対する過大な作業量、長時間・連続作業、過大な重量付加あるいは力の発揮を要する作業、不適切な作業環境などが促進要因と考えられる

 腰痛認定基準
非災害性の腰痛は筋・筋膜・靭帯等の疲労現象から起こるものと考えられる。

(重要文言)
公務上の災害といえるためには、公務と災害との間に条件関係が存在するだけでは足りず、相当因果関係、すなわち社会通念上、当該災害が公務に内在または随伴する危険が現実化したものと認められる関係がなければならず、
このような相当因果関係すなわち公務起因性は、
① 当該地方公務員の公務の内容・性質、
② 勤務状況、疾病の発症の経緯、発症前の健康状態、
③ 症状の推移と公務との対応関係、
④ 同種公務に従事するほかの地方公務員にかかる類似症状の発症の有無、
⑤ 疾病についての医学的知見
など、諸般の事情を総合して判断すべき

介護労働者に頸肩腕部及び腰部の痛みなどの症状を訴えるものが多いことを示す研究報告は多数存在し、
中には経験年数・解除人数が多いほど腰痛の訴え率が上昇することを示すものもある

Xの日常生活において、ホームヘルパー業務のほかに本件疾病の原因となるような事情の存在はうかがわれない

多くの人が罹患している一般的な疾病であって、治癒や改善の見込みがない疾病とはいえず、生命の危険を直ちに招来する性質のものでもないから、公務災害と認定されないこと自体がもたらす不安や焦燥は、およそ一般的
直ちに不法行為法上違法上の保護の対象になるとは言い難い

(条文)
行政手続法6条
申請者側に処分に至るまでの期間について予測可能性を与えるものとはいえ、行政庁に努力義務を課したものに過ぎず、あくまで処分の迅速で公正な処理を確保することを目的とするもの

(参考判例)
損害賠償請求事件(最二小判平3.4.26民集45巻4号653頁)
公務上外の認定処分の遅延が国家賠償法上違法であるといえるためには、公務災害の認定を申請した者がそれに対する処分の遅延により不法行為法上保護されるべき利益を侵害されたと評価できる場合でなければならない。

(事件概要)
平成8年7月15日 頸肩腕障害および腰痛症と診断
同月18日 休職
Xが休業に入った後の平成9年5月から11年9月までの間に、他のホームヘルパー合計10名が頸肩腕障害、腰痛症、腱鞘炎で休職
11年1月5日付 公務災害認定請求にかかる請求書を提出
17年12月6日付 公務外認定処分

(訴え)
Y(公務員災害補償基金)に対し、同処分の取消を求めた。
役6年11か月にわたり公務上外の認定を行わず、かつ、当初は本件疾病を公務外のものと考えていたにもかかわらず、Yの反対意見を受けてこれを翻し、誤って公務外との認定を行ったことにより、Xに多大な精神的苦痛を与えたと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の支払いを求めた。

(判決)
認定基準の趣旨を尊重して、総合考慮して判断するのが相当
公務の負荷の程度とXの症状との間に対応関係が認められること、Xと同種同様の業務に従事していた多くの職員がXと同様の疾病を発症していることが窺われ、このことは、Xの従事していた公務とXの疾病との相当因果関係を推認させる事情であるとして公務起因性を肯定し、これと異なる判断をしていたYの本件処分が取り消された。

慰謝料を求めたXの請求につき、退けられた。
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