整理解雇
こんにちは。
少し、労働条件の不利益変更について、これまでの判例をまとめておりましたところ、余りにも色々ありすぎて現在格闘中です。
また、まとまり次第、本ブログに載せることができれば幸いです。
ということで、久々のブログへの記載ですが、整理解雇に関する判例となります。
どちらかというと、整理解雇というよりも、普通解雇に近い気がするのですが、このような争い方もあるのかと思い、取り出してみました。
結局のところ、かなり細かい個所までキッチリと話し合いをしなければ、労働者側に有利な判例が出るのだと改めて考えさせられました。
(事件概要)
原告Xは、平成10年2月、Y社のパート社員として雇用(12年6月)→ 準社員(平成21年3月頃)→ 翌22年3月をもってMP製造部(Xを含む30名が所属)を廃止(Xを除き)→ 同部の所属従業員は、21名が他部署に配転、7名が希望退職に応じて退職、1名が定年退職(平成21年7月)→ 労働組合との間で希望退職者の募集に関する労使協定 → 募集対象は40歳以上の正規社員、募集人数は30名(賃金の期限付き減額に関する協定)→ 減額期間は同月19日から最長で22年5月まで(減額幅)→ 本給の10%に相当する額を毎月の給与から減額 → 準社員は賃金減額の対象とされていなかった。(平成21年8月から同年12月まで)→ 派遣社員ないし請負会社の従業員(計41名)を新規に受け入れ → 22年7月の時点で、計29名が継続して稼動(22年1月)→ 求人の募集(同年2月頃)→ 登録派遣型派遣社員3名の派遣を要請(訴え)→ 本件解雇が整理解雇の要件を満たしておらず無効 → 雇用契約上の地位があることの確認及び、賃金等の支払を請求
Xを退職勧告の対象
平成21年7月から8月にかけて、4回の面接 → 希望退職の提案と条件提示 → Xは、雇用の継続を希望(Xは労働組合に加盟)→ 平成21年8月から22年3月までの間に、計10回程度の団体交渉が実施(21年8月20日)→ 1回目の団交の際に、Xに対して、同年9月19日を持って普通解雇する旨の意思表示(平成11年度から20年度までの人事評価(S,A,B,C,D及びEの6段階評価))→ B以上を1度も取ったことがなく、D,Eを4回以上取った。→ このような評価は従業員の下位8%に当たるもの(平成16年頃から20年4月頃)→ アルバイトをしており、就業規則に違反することを認識 → Yにはこれを報告していなかった。(本件解雇後)→ 平成22年4月から23年3月までAで稼動し、収入を得ている。
配転先の候補 :配転先には夜勤務があると考え、難しいと答える。
廃止となる平成22年3月まで胴部においてパートで働くことを提案 :Xは、これに納得できないと回答
経営状態
18年6月から19年5月まで :営業利益約369万円
19年6月から20年5月まで :営業損失約1,071万円
20年6月から21年5月まで :営業損失約4億1,800万円
21年6月から22年5月まで :営業利益約3,986万円
準社員 :パート社員から昇給するもの → 準社員は同組合の組合員ではない。
準社員就業規則 :いずれも正規社員に適用される就業規則が適用(退職金を除く給与)→ 正規社員に適用される給与規定が適用
(考察)
整理解雇の有効性 :(以下の4要件により判断)経営不振を理由として準社員一人に対してなされた解雇が整理解雇に該当(本件解雇時点)→ 切迫した人員削減の必要性があったとまでは認められない。→ 解雇に先立ち、解雇回避努力を十分に尽くしたとは言いがたい。(対象者の人選)→ 合理性を認めることは出来ない。→ 手続きの相当性について直ちにこれを欠くものとはいえないことを考慮 → 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められない。
イ. 人員削減の必要性 :受注状況の改善傾向、経営状況の回復、派遣社員などの受け入れ → 本件解雇の4ヵ月後における正規社員の求人募集、Xが配属されたMP事業部の廃止時期(本件解雇の6ヶ月以上先)などの事情 → 本件解雇の時点で、Xただ1人を解雇すべき切迫した人員削減の必要性があったまで認めることは出来ない。(実態)→ Yの行動は正規社員や準社員から派遣社員などへの従業員の入れ替えであったと評価(必要性の有無という観点から)→ このような実体を容易に容認することは出来ない。
ロ. 解雇回避努力 :YがXに対して昼勤務のみに従事するという条件提示をしていなかった。(Xを配転し昼勤務のみで稼動させること)→ Yの体制面においてもXの能力面においても十分に受け入れ可能だと認識 → Xは昼勤務のみの条件が提示されればこれを受諾する可能性があったことなどを指摘 → Xの解雇を回避することが出来る可能性がある提案の不行使に当たると評価 → 解雇回避努力の履行が十分ではなかったと判断
ハ. 人選の合理性 :準社員には退職金を除き全て正規社員に適用される就業規則及び給与規程が適用される。(準社員と正規社員との差異)→ 企業内組合の組合員でない点程度しか存しない。(会社との結びつきの面)→ 正規社員と全く同一ではないもののこれに準じた密接な関係にある。→ 準社員であったことが解雇対象者選定の事情として合理的であると認める事はできない。→ 労働組合との間での希望退職者募集に関する協定の締結、希望退職者の募集定員への到達といった事情の下では、正規社員に対する解雇に踏み切れなかった。→ 組合員でないことを理由として解雇の対象とするもの
ニ. 手続きの相当性 :解雇に先立って行なわれた個別の面接、本件解雇後に実施された団交等に言及 → 直ちにこれを欠くような事情までは認められない。
中間収入の控除の当否 :労働者に対して負う解雇期間中の賃金支払義務のうち平均賃金額の6割を越える部分から当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することは許される。→ その範囲内でXの中間収入を控除することを認め、賃金支払い請求の一部を認容
少し、労働条件の不利益変更について、これまでの判例をまとめておりましたところ、余りにも色々ありすぎて現在格闘中です。
また、まとまり次第、本ブログに載せることができれば幸いです。
ということで、久々のブログへの記載ですが、整理解雇に関する判例となります。
どちらかというと、整理解雇というよりも、普通解雇に近い気がするのですが、このような争い方もあるのかと思い、取り出してみました。
結局のところ、かなり細かい個所までキッチリと話し合いをしなければ、労働者側に有利な判例が出るのだと改めて考えさせられました。
(事件概要)
原告Xは、平成10年2月、Y社のパート社員として雇用(12年6月)→ 準社員(平成21年3月頃)→ 翌22年3月をもってMP製造部(Xを含む30名が所属)を廃止(Xを除き)→ 同部の所属従業員は、21名が他部署に配転、7名が希望退職に応じて退職、1名が定年退職(平成21年7月)→ 労働組合との間で希望退職者の募集に関する労使協定 → 募集対象は40歳以上の正規社員、募集人数は30名(賃金の期限付き減額に関する協定)→ 減額期間は同月19日から最長で22年5月まで(減額幅)→ 本給の10%に相当する額を毎月の給与から減額 → 準社員は賃金減額の対象とされていなかった。(平成21年8月から同年12月まで)→ 派遣社員ないし請負会社の従業員(計41名)を新規に受け入れ → 22年7月の時点で、計29名が継続して稼動(22年1月)→ 求人の募集(同年2月頃)→ 登録派遣型派遣社員3名の派遣を要請(訴え)→ 本件解雇が整理解雇の要件を満たしておらず無効 → 雇用契約上の地位があることの確認及び、賃金等の支払を請求
Xを退職勧告の対象
平成21年7月から8月にかけて、4回の面接 → 希望退職の提案と条件提示 → Xは、雇用の継続を希望(Xは労働組合に加盟)→ 平成21年8月から22年3月までの間に、計10回程度の団体交渉が実施(21年8月20日)→ 1回目の団交の際に、Xに対して、同年9月19日を持って普通解雇する旨の意思表示(平成11年度から20年度までの人事評価(S,A,B,C,D及びEの6段階評価))→ B以上を1度も取ったことがなく、D,Eを4回以上取った。→ このような評価は従業員の下位8%に当たるもの(平成16年頃から20年4月頃)→ アルバイトをしており、就業規則に違反することを認識 → Yにはこれを報告していなかった。(本件解雇後)→ 平成22年4月から23年3月までAで稼動し、収入を得ている。
配転先の候補 :配転先には夜勤務があると考え、難しいと答える。
廃止となる平成22年3月まで胴部においてパートで働くことを提案 :Xは、これに納得できないと回答
経営状態
18年6月から19年5月まで :営業利益約369万円
19年6月から20年5月まで :営業損失約1,071万円
20年6月から21年5月まで :営業損失約4億1,800万円
21年6月から22年5月まで :営業利益約3,986万円
準社員 :パート社員から昇給するもの → 準社員は同組合の組合員ではない。
準社員就業規則 :いずれも正規社員に適用される就業規則が適用(退職金を除く給与)→ 正規社員に適用される給与規定が適用
(考察)
整理解雇の有効性 :(以下の4要件により判断)経営不振を理由として準社員一人に対してなされた解雇が整理解雇に該当(本件解雇時点)→ 切迫した人員削減の必要性があったとまでは認められない。→ 解雇に先立ち、解雇回避努力を十分に尽くしたとは言いがたい。(対象者の人選)→ 合理性を認めることは出来ない。→ 手続きの相当性について直ちにこれを欠くものとはいえないことを考慮 → 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められない。
イ. 人員削減の必要性 :受注状況の改善傾向、経営状況の回復、派遣社員などの受け入れ → 本件解雇の4ヵ月後における正規社員の求人募集、Xが配属されたMP事業部の廃止時期(本件解雇の6ヶ月以上先)などの事情 → 本件解雇の時点で、Xただ1人を解雇すべき切迫した人員削減の必要性があったまで認めることは出来ない。(実態)→ Yの行動は正規社員や準社員から派遣社員などへの従業員の入れ替えであったと評価(必要性の有無という観点から)→ このような実体を容易に容認することは出来ない。
ロ. 解雇回避努力 :YがXに対して昼勤務のみに従事するという条件提示をしていなかった。(Xを配転し昼勤務のみで稼動させること)→ Yの体制面においてもXの能力面においても十分に受け入れ可能だと認識 → Xは昼勤務のみの条件が提示されればこれを受諾する可能性があったことなどを指摘 → Xの解雇を回避することが出来る可能性がある提案の不行使に当たると評価 → 解雇回避努力の履行が十分ではなかったと判断
ハ. 人選の合理性 :準社員には退職金を除き全て正規社員に適用される就業規則及び給与規程が適用される。(準社員と正規社員との差異)→ 企業内組合の組合員でない点程度しか存しない。(会社との結びつきの面)→ 正規社員と全く同一ではないもののこれに準じた密接な関係にある。→ 準社員であったことが解雇対象者選定の事情として合理的であると認める事はできない。→ 労働組合との間での希望退職者募集に関する協定の締結、希望退職者の募集定員への到達といった事情の下では、正規社員に対する解雇に踏み切れなかった。→ 組合員でないことを理由として解雇の対象とするもの
ニ. 手続きの相当性 :解雇に先立って行なわれた個別の面接、本件解雇後に実施された団交等に言及 → 直ちにこれを欠くような事情までは認められない。
中間収入の控除の当否 :労働者に対して負う解雇期間中の賃金支払義務のうち平均賃金額の6割を越える部分から当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することは許される。→ その範囲内でXの中間収入を控除することを認め、賃金支払い請求の一部を認容
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