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整理解雇

こんにちは。
明日からグアムへ行ってきます。
4日くらい間が空くと思いますが、また書きたいと思います。
今回の判例では、地裁の判決を無視した態度について、整理解雇に関する判決を揺るがしていると共に、不法行為を構成している事に新しさを感じました。


(事件概要)
Xは、平成16年4月15日、訴外A 社が保有するヘアケアのブランドの1つを担当するクリエイティブディレクター(CD)としてYに採用(平成18年3月7日)→ Xに対し、Yの業績悪化およびXの勤務成績不良を理由として退職勧奨(同年7月)→ Xを仕事から外した。(同年11月28日)→ 東京地裁に対し、Yを相手方として、退職勧奨の禁止及びXの仕事を取り上げないことを求める。(Yが雇用契約は終了した旨を主張)→ Xは、話し合いによる解決の余地がないと考え、別途、訴訟を起こす。(平成19年2月14日)→ Xに対し、同年1月25日限りで雇用契約は終了したので、立ち入ることを禁じる旨の通知 → 同年2月分以降の給料の支払いを停止 → Xは、賃金仮払いなどを求める旨の仮処分を東京地裁に申し立て。(同年4月13日)→ 同年4月から20年3月まで1か月48万円の仮払を命ずる仮処分決定(平成20年1月9日)→ XY間において、①19年12月分の賞与の内金として49万余円②20年4月から本案訴訟の第1審判決言い渡しまで1か月48万円をそれぞれ支払う旨の和解が成立(同年9月5日)→ 本案訴訟の控訴審判決があるまで1か月48万円の仮払を命ずる仮処分決定(平成19年6月6日)→ 雇用契約上の地位の確認、賃金・賞与の支払い、慰謝料の支払いを求める訴訟を提起(20年7月29日)→ 慰謝料額を60万円の限度で認容すること以外、Xの請求を全て認める旨の判決 → Yは、不服として控訴(21年4月23日)→ 控訴を棄却する旨の判決(Yは、上告受理申し立て)→ Xとの訴訟外での話し合いによる解決を図るべく交渉 → 解決に至らなかったことから判決を履行(同年7月3日)→ 申し立てを取り下げ(同月10日)→ Xに対し、上記判決で命じられた金額から木払い分を控除した額を遅延損害金とともにXに支払った。(平成21年7月16日)→ 企業年金・退職一時金、未消化の有給休暇の買い上げ、特別退職金の合計1,204万余円の支給を条件とする退職勧奨 → Yが同年2月から別途実施した希望退職募集の際に、Yが対象従業員に対して提示した条件と同じ。(同年7月24日)→ 職場復帰を求める通知を送付(同年8月28日)→ Xに対し、面談をして退職勧奨の提案の経緯や理由を直接説明 → Xは、退職勧奨には応じられない旨を回答(同年10月15日)→ Xに対し、同年11月15日をもって解雇する旨の通知

職務内容 :広告表現の企画と制作を担当するクリエイティブ部門において、クリエイターを統括するチームリーダーである。


(考察)
人員削減の必要性 :組織再編などに伴う企業の合理的運営上の必要性 → Yの経営状況が客観的に高度の経営危機下にあること、倒産の危機に瀕していることを認めるには足りない。

解雇回避措置の相当性 :人員削減の必要性が企業の合理的運営上の必要性という程度にとどまる。→ 相当高度な解雇回避措置が実施されていなければならない。(解雇回避措置)→ 希望退職者の募集、不利益緩和措置としての退職条件の提示 → 甚だ不十分と言わざるを得ない。

本件解雇に至るまでの紛争の経緯 :判決後にXを実際にYで勤務 → XY間の関係をいったんは原状に戻すという手続きを踏むべき。→ 本件解雇に至る手続き相当性を揺るがす大きな事情 → 整理解雇としても有効ではない。


能力不足ないし整理解雇に関する人選の合理性
① 相当程度高額の賃金の支払いを受けている。
② 中途採用者として、入社当初からCDとしての成果が求められる立場
③ 最重要の担当ブランドについて、特に躍進もない代わりに逆に急落もない。
④ シェアの漸減傾向が窺われるとも一定のシェアを維持していたともいえる。
⑤ いくつかのクライアントの新規開拓の成果を上げた。(しかし)→ それらの中には長くは続かないものもある。
⑥ 別のクライアントの新規開拓の成果 → それらの中には長くは続かないものもあった。
⑦ CDの人事評価 :平成17年まではむしろ良好(18年3月7日)→ 退職勧奨がなされ、それまでの間の評価期間が約4か月 → 7月にYから仕事を与えられなくなった。→ 同年の評価は必ずしもXの業績の実態を正しく示したものとは認められないと判断

精神的苦痛 :前件訴訟により、Xに関する雇用契約上の地位確認などにつきほぼ全部敗訴の判決が確定していた。(しかし)→ その後も約2年間にわたってXの出勤を許さず、再び退職勧奨 → 無効という本件解雇に及んだ。→ 不法行為を構成するというべき → 専業主婦の妻と幼い双子(一人は障害がある。)の児童を抱えている。→ こうしたYの行為によって著しい精神的苦痛を被った。→ 30万円の慰謝料の支払いが命じられた。
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