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派遣労働者の黙示の労働契約

こんにちは。
昨日は、今年最後のスキーを満喫し、今日は朝から合気道に2か月ぶりに行ってきました。
おかげで、体がボロボロですが、気持ちは充実しています。

さて、今回はリーマンショック時に話題となった派遣切りについての判例を勉強しました。
派遣については、過去にも様々な判例があり、派遣先との黙示の労働契約があるとの主張が多い中で、その主張が却下される判決がほとんどです。
その中で、今回の判例も過去の判例に基づいて、却下されていました。


(事件概要)
Xらは、いわゆる「派遣切り」(その後)→ Yとの間で直接の有期労働契約を締結(更新されなかった事など)→ 精神的苦痛を被った。→ Yに対し慰謝料を請求(Xらの内4名)→ AによるXらの採用にYが関与したなど(XらとY 間)→ 就労開始当初から期間の定めのない黙示の労働契約が成立(Yに対し)→ 雇用契約上の地位を有することの確認、および未払賃金の支払いを請求

YとAの契約形態 :原告Xらは、平成16年4月から20年4月の間に訴外A社との間で労働契約を締結 → 被告Y社の姫路工場内で、自動車のベアリングの製造業務に従事(平成15年12月当時)→ YがAから出向の形態でAの社員を受け入れ(17年10月1日)→ 業務委託契約に変更(18年8月21日)→ 労働者派遣契約が締結(平成21年2月3日)→ リーマンショックのなかで、AとYの本件労働者派遣契約につき同年3月21日をもって中途解除する旨の通知 → Xらは、同日をもって中途解雇する旨の解雇予告通知をAから受けた。(平成21年3月23日)→ 所轄労働局は、Yおよび、Aに対して、派遣期間の制限違反の労働者派遣法違反、および、業として行われていた出向につき労働者供給事業を禁止する職安法違反があった。(同年4月23日まで)→ Xら派遣労働者の雇用の安定を図るための具体的方策を講じて報告するようにとの是正指導を行った。(本件派遣契約の解除)→ Yは、平成21年3月31日付から同年4月23日付へと変更 → Aも、前記解雇を同日付に変更(同年4月23日)→ Yは、Xらとの間で、期間を同月24日から同年9月30日までとして、有期労働契約を締結(Xらは、労働契約の期間について異議をとどめる旨を述べていた。)→ 本件期間雇用契約は、同年9月30日をもって更新されることなく終了

(考察)
黙示の労働契約 :事実関係などに現れた全事情を総合的に判断 → 発注元・労働者間の雇用契約関係が目次的に成立していたものと評価することはできないと判断 → Xら4名に対する作業場の指揮監督権や配置・懲戒の権限を有していた。(しかし)→ 解雇権限まで有していた訳ではなく、賃金や諸手当についても、Aが主体的に決定していたことが認められる。(Xら4名がAと正式な雇用契約書を作成する以前にYの工場を見学していた点)→ 同工場が油の臭いで充満した職場 → 就労者が金属アレルギーであったことが原因で、1日ないし数日で退職するものが少なからずいた。→ 主としてXらに就労する職場を見せてその体質などに合うか否かを判断(労働者派遣法26条7項)→ 派遣労働者を特定したり、Yが実質的にXらの採用不採用を決めたりすることを目的として行われたものとは認められない。(業務委託料の対価額の決定)→ 労働者一人当たりの時給を基準として決めていたことが不合理とは言えない。(派遣元であるA)→ 労働者によって、こうした対価の時間単価よりもかなり低額の賃金を支払っていた。→ Aが独自の判断でXらに対する賃金を決定していた。→ Xらの主張を退けている。

解雇(更新拒絶)の有効性、および解雇期間中の賃金請求権の有無 :Xらは、本件是正指導によって成立したもの → 本件期間の定めのない労働契約として実現されなければならず、期間の定めのないもの絵である旨の主張(本件是正指導にある「雇用の安定」とは)→ 期間の定めのない契約や、更新を前提とする有効契約の実現までをも意味するものではないと言わざるを得ない。(兵庫労働局に対し)→ Yは、既に平成21年4月7日の時点で、契約の更新につき、その旨の文言は入れるものの、契約更新自体は難しい旨を伝えていた。(仮に更新のための最大限の努力をする旨を伝えていたとしても)→ 景気動向を睨みながらの努力を意味するものであると考えるのが相当 → 同労働局が、それを超える「努力」を期待して、是正報告書を受理したかは、甚だ疑問 → 本件雇止めが無効であるとは認められない。

不法行為の成否 :Xらの就労実態が実質的には労働者派遣に該当 → 労働者派遣法違反の問題は生ずるとしても職安法44条違反の問題は認められない。(労働者派遣法)→ 行政上の取締法規(同法4条の規定する労働者派遣を行うことのできる事実の範囲や同法40条の2が規定する派遣可能期間などについてどのようにするか)→ 我が国で行われてきた長期雇用システムと、企業の労働力調整の必要に基づく労働者派遣とを以下に調整するかという、その時々の経済情勢や社会労働政策にかかわる行政上の問題であると理解される。(労働者派遣法によって保護される利益)→ 基本的に派遣労働に関する雇用秩序であり、それを通じて、個々の派遣労働者の労働条件が保護されることがあるとしても、派遣先企業との労働契約の成立を保障したり、労働条件を超えて個々の派遣労働者の利益を保護しようとしたりするものではない。(非許容業務でないのに派遣労働者を受け入れ、許容期間を超えて派遣労働者を受け入れるという労働者派遣法違反の事実)→ 直ちに不法行為上の違法があるとは言い難く、ほかにこの違法性を肯定するに足りる事情は認められない。

(参考判例)
積水ハウスほか(派遣労働)事件 : 成否の判断 → 派遣元の独自性、派遣労働者と派遣先との間の事実上の使用従属関係、労務提供関係、賃金支払関係等の総合判断(例)→ 派遣元が形式的な存在にすぎず、労務管理を行っていないのに対して、実質的に派遣労働者の採用、賃金額その他の労働条件を決定し、配置、懲戒等を行い、派遣労働者の業務内容・派遣危難が労働者派遣法で定める範囲を超え、派遣先の正社員と区別しがたい状況 → 派遣先が派遣労働者に対し労務給付請求権を有し、賃金を支払っている。→ 黙示の労働契約が成立(本件)→ Y1がXの賃金を決定・支給、出退勤の管理、派遣労働契約を締結するに当たっての更新手続き、契約締結に掛かる経緯 → 認められない。
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