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性的行為を行った准教授に対する懲戒処分

平成24年4月1日、今日はエイプリルフールでしたが、日が変わってしまったので、もう嘘はつけないですね。

今回は、停職処分を行った大学の話です。これだけ問題を起こした准教授に対して、懲戒解雇でも良いのではと思う私自身に対して、判決は次の通りでした。

少し残念な結論を見た気がします。

ただ、就業規則の取り決めについては、勉強になる話を頂くことができました。


(事件概要)
平成20年11月、週刊誌に被告Y大学の准教授である原告Xが、新入生歓迎会の後、帰ろうとしていた女子学生Aを自らの研究室に連れ込んでレイプをした旨の記事がXの実名入りで掲載(臨時教授会)→ Xの懲戒処分について審議を行った結果、Xの行為は大学の名誉または信用を傷つけ、また、大学の秩序、風紀または規律を乱したもの(就業規則37条1項5号、6号の懲戒事由に該当)→ 同条2項3号の停職6か月の処分を行うことが相当であるとの決議(不服審査委員会)→ 同様の決定(平成22年3月17日)→ Xに対し、停職6か月の懲戒処分を発令(Xの主張)→ 同処分の無効確認並びに停職期間中の賃金478万余円などの支払いを求めるとともに、不法行為に基づく慰謝料220万円などの支払いを求めた。(不法行為)→ Yに故意または過失があったとは認められない。(懲戒処分の公表)→ Xの氏名を特定しておらず、公表の内容も処分事由を要約して行ったに過ぎない。→ 不法行為責任が否定 → Yの裁量を逸脱した違法があるとしてこれを取り消した。(しかし)→ 不法行為に基づく慰謝料請求は棄却

(考察)
主張① 平成12年5月の時点、Yが認定したXの行為を懲戒する規定は存在しなかった。→ 現在の懲戒処分に関する規定をその制定以前の行為に適用することはできない。(判決)→ 法人化前のQ大学から法人化後のYに勤務するようになった際、別に辞令の交付を受けた事実は窺われず(法人化前にXが行った行為に対する就業規則の適用に関して)→ XとY間において別段の合意がされた事実も認められない。(Xは、Yが法人化される前に行った行為)→ 就業規則37条1項各号に該当する事実が明らかになった場合 → 同条2項各号に定めるところに従って懲戒処分を受けることについて合意したものと認めるのが相当

主張② Yが認定した「女子大学院生と深夜かなりの時間、二人きりで研究室で過ごした」という事実は、仮にそのような事実が明らかになったとしても、「性交渉が疑われる」ものではないから、懲戒事由に当たらない。(判決)→「研究室は、教育及び研究のための施設として教員に使用を許可しているもの」→ 学生が安心して教育を受け、研究を行うことができるように配慮すべき立場 → 自ら、深夜に大学院生であるAを研究室に誘い、密室である研究室において性交渉の事実をうかがわれるような状況を作り出した行為 → 就業規則所定の懲戒事由に該当 → 就業規則37条1項5号、6号に該当

主張③ Yが、不服審査手続きにおいて、Xの代理人弁護士の同席要求を許さなかったこと、および、Xに反論の機会が与えなかったことは、手続上、違法である。→ 不服審査手続は、内部手続きである。(不服審査手続きに関する規定)→ 代理人の出席を認める規定はない。(Yが代理人弁護士の同席を認めなかったとしても)→ 手続きとして不相当であるということはできない。→ Xは事情聴取において十な反論の機会が与えられた。(本件通知を受け取った後)→ 事情聴取を行うとして呼び出しを受けたにもかかわらず、2度にわたって欠席したことが認められる。→ 反論の機会が与えられなかった旨の主張は事実に反する。

主張④ 停職6か月の処分は重すぎるなどの理由から、Yのなした懲戒処分は違法であると主張 → 一定の非難は免れない。(平成10年4月にセクハラに相当する行為)→ 始末書を提出したにもかかわらず、その約2年後の12年5月に研究室において性交渉の事実を疑わせる状況を作り出している。(XがAと性交渉に及んだ当時)→ 配偶者がいたものであり、Xの行為は強い道徳的批判に値する。(事情聴取)→ Aとの性交渉も同意の上であれば問題ないとの開き直りとも受け取れる態度を示していた。→ 停職処分を選択したこと自体は相当(本件処分以前)→ Xに懲戒処分歴は窺われない。(一方)→ Xは同僚教員からも非常に有能な研究者と認められる存在 → AがXから交際を強要されたような事実も窺われない。(12年5月から約8年半が経過した時点)→ 引き続きXがYの准教授の地位にあることを考慮 → 記事が公表されたことによるY大学の社会的信用の低下は限定的なものに留まる。(停職期間中)→ 賃金の支払いがなされないのみならず、Yの施設の利用もできない状態 → Xが被る不利益も大きい。→ 停職期間としてはせいぜい3か月程度にとどめるのが相当(停職期間を6か月間)→ Yの裁量を逸脱した違法があるというべき(本件処分)→ 相当性を欠き、Yの懲戒権を濫用したものとして、違法、無効であるというべき
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