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安全配慮義務違反

皆さんこんにちは。
今日も怪しい天気が続いており、仕事がやりにくい日ですね。
今回は、アスベストによる被害に関しての事例です。
こういう事例を見ていると、労災保険だけではどうにも出来ない事が実際にあるのだと考えさせられます。


(事件概要)

亡Kは、被告Y社の下請会社の従業員として、昭和42年から平成18年までの約40年間、船舶の修繕作業に従事(平成19年8月)→ 良性石綿胸水と診断(21年8月頃)→ 中皮腫にり患(22年9月)→ 中皮腫により死亡 → X1らは、Kの訴訟承継人として、Yの安全配慮義務違反により、石綿粉塵に暴露(結果)→ 中皮腫などにり患しKが死亡 → 債務不履行又は不法行為に基づき、損害賠償を請求(結論)→ 以下の通りであり、損害額合計は4,624万5,952円と認められる。
<亡Kの被った損害額>
① 治療費 :7万3,695円
② 付き添い看護料 :164日間入院したことが認められ、付添看護費98万4,000円(1日当たり6,000円)
③ 入院雑費 :164日間の入院が認められ、少なくとも9万円
④ 休業損害 :治療のため、平成19年8月30日から同22年9月6日まで3年余りの期間(同19年1月から8月)→ 月額27万5,865円の収入を得ていた。(り患していない場合)→ 治療期間中949万1,760円(少なくとも月額26万3,660円)の収入を得ることができたことが認められる。
⑤ 逸失利益(本来得られるべきであるにも拘らず、不法行為や債務不履行などで得られなかった利益を指す。) :り患していなければ、平成19年当時の平均給与月額27万5,865円×0.4(生活費控除)×12か月×6,463(同22年9月時点での亡Kの就労可能期間8年間に相当するライプニッツ係数)=855万7,994円
⑥ 入通院慰謝料 :治療のために合計5か月間入院し、合計133日間通院(入通院期間に加え)→ 中皮腫には一般的な治療法がないことなど一切の事情を考慮 → 亡Kの通院慰謝料の額は361万円とするのが相当
⑦ 葬儀関係費 :98万5,538円
⑧ 死亡慰謝料 :亡Kが死亡するに至った経緯 → 安全配慮義務違反の内容など一切の事情を考慮 → 2,500万円とするのが相当
⑨ 労災支給分 :中皮腫り患などに基づいて休業補償などとして674万7,035円を得たことに争いがない。
⑩ 弁護士費用 :420万円
⑪ 過失相殺 :喫煙が中皮腫の原因となることを認めるに足りる証拠はない。

労災保険 :中皮腫り患などについて休業補償などを受給

原告X1からX4 :Kの妻と子であり、Kの相続人

訴訟上の因果関係の立証 :一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討 → 特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性を証明すること(判定)→ 通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とし、かつ、それで足りる。(判決)→ Kの石綿粉塵暴露と、その死亡との因果関係を認めた。→ 本件製造所で約40年間にわたって石綿に暴露していた一方、他にKが石綿に暴露する機会があったとは認められない。(本件全証拠)→ Kの本件製造所内での石綿暴露が中皮腫り患の原因であることと矛盾すると考えられる特段の事情は窺われない。→ Kの石綿暴露と中皮腫り患との間には、因果関係が認められる。


(考察)

安全配慮義務違反 :元請会社の直接の労働契約関係にない下請会社従業員に対する安全配慮義務(労働契約上の使用者)→ 支配下にある労働者に対し、労働者の生命及び健康などを危険から保護するよう配慮する義務を負っている。(安全配慮義務)→ ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきもの(元請会社が下請会社の労働者に対して実質的に支配を及ぼしている場合)→ 変わらないというべき(本件)→ Yの管理する本件製造所で船舶の修繕作業に従事 → Aの従業員はYの定めた本件安全規則…等を順守することを義務付けられていた。→ Yの従業員が、現場監督を務め、Kを含む作業員に対して作業や安全管理などについての指示(作業状況把握のための巡回を行っていたこと)→ 下請会社の従業員は、Yの作業員と同様に、Yによって作業などを管理されていた。→ YはKに対し、実質的に使用者に近い支配を及ぼしていたというべき → Yは、Kに対して信義則上、安全配慮義務を負っていたというべき(判決)→ 昭和42年頃、石綿の有する危険性を認識できた。→ 健康被害を被る恐れがあったことを予見できた。(同年以降、安全配慮義務の具体的内容)→ 石綿粉塵を吸引しないようにするための措置を怠っていた。(結果)→ Kは、本件製造所において石綿粉塵に暴露したものというべき → Kに対する安全配慮義務違反に基づく責任を免れない。
<安全配慮義務の具体的内容>
(ア) 石綿粉塵の生じる作業とそうでない作業を隔離するなどして可能な限り作業員が石綿粉塵に接触する機会を減少できるような作業環境を構築(加えて)→ 作業場に堆積した粉じんなどが飛散しないように撒水等をする設備ないし体制を整える義務(作業環境管理義務)(現状)→ 粉じん作業と非粉じん作業の隔離を徹底せず、粉じん作業によって生じた粉じんの飛散を十分に防止しなかった。
(イ) 作業員に対して防塵マスクを支給、その着用を支持指導(作業員の粉じんマスク着用を徹底)→ 粉じんの付着しにくい防護衣などを支給 → 作業後には必ず粉じんを落とすように指導する義務(作業条件管理義務)(現状)→ 防塵マスクを支給せず、着用を徹底せず、防護衣等を支給しなかった。
(ウ) 作業員にも石綿粉塵の危険性を認識させるため、必要な安全教育を実施する義務(健康管理義務)(現状)→ 必要な安全教育をしなかった。

Yの予見義務 :生命・健康という被害法益の重大性にかんがみ、安全性に疑念を抱かせる程度の抽象的な器具であれば足りる。→ 必ずしも生命・健康に対する障害の性質、程度や発生頻度まで具体的に認識する必要はないというべき(本件)→ 遅くとも第9回国際癌学会の結果が報告された同42年ころまで → 石綿が発がん性を有し、中皮腫とも強い関連性を有しているとの認識が相当程度深まっていた。(昭和42年ころ)→ 石綿が人の生命、身体に重大な障害を与える危険性があることを十分に認識することができる。→ 実際に作業中に石綿が飛散することがあった。→ Kを含む作業員が石綿に暴露することによりその生命、身体に重大な障害を与える危険性があることを十分予見することができる。
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