うつ病・自殺との業務起因性
(感想)
因果関係に対して、残業時間が大いに影響することが分かるが、安全配慮義務違反については、ここまで企業で行えるかは不安である。今回、代表者の損害賠償はないという判断ですが、今後の判例にも注目したい。
(重要文言)
<安全配慮義務違反とKの自殺との相当因果関係>
① Kの残業時間は、平成20年が1か月平均37.9時間
平成21年32.9時間
平成22年25.8時間
格別多いとはいえない。
② 担当業務は、現場管理で、主に書類作成業務が中心、原子力発電所の運転に係わるものではなく、必ずしも精神的負荷が多い業務とは言い難いもの
<安全配慮義務違反>
従業員であるKの体調不良を把握した以上、安全配慮義務の一環として、具体的に不良の原因や程度などを把握
必要に応じて産業医の診察や指導などを受けさせるなどとすべき
本件)これを怠り、その限度でKに対して慰謝料の支払い義務が生じたものと認められる。
<代表者などの損害賠償責任>
Y2およびY4はそれぞれの会社の代表者や従業員であり、個人的にKに対して損害賠償を負うものではない。
(事件概要)
平成19年2月5日 精神科医院で受診し、不安障害や不眠症と診断
21年10月下旬ころ以降 うつ症状
22年3月と4月 Kが休暇取得や早退をすることがあった
Y2が様子を確認
Y2がメールで体調を問い合わせ
Y4も面談して仕事の状況などを確認
Kは「薬を飲んでいるが、体調は大丈夫である」「以前より改善していると思い、薬は使用していない」旨等の話をする。
Y1社に派遣労働者として雇用、派遣先Y3社合わせてY1社らに従事していたKが22年12月9日に自宅で自殺
(訴え)
妻子であるXらが、Y1の代表取締役Y2および、Y3の出張所長Y4と合わせてY1社らに対し、YらはKのうつ病を認識しまたは認識することができたのに安全配慮義務などを怠り、Kを自殺に至らしめた
Y2およびY4にたいしては不法行為に基づき
Y1社に対しては債務不履行および会社法350条に基づき
Y3社に対しては債務不履行及び使用者責任に基づき
X1につき3,898万8,104円およびX2につき1,949万4,052円ならびに遅延損害金の支払いを求めた。
(判決)
因果関係はないものの、安全配慮義務違反によって精神的苦痛を慰謝するには200万円の損害賠償を認めるのが相当
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