派遣労働者の黙示の労働契約の成否
(感想)
派遣法の改正もあるため、気にして見ておりましたが、派遣労働者の雇用に対しては、いつも通りの判断が出ていると思われる。
契約の転換方法については、一つの対策として参考になると思う。
(重要文言)
労働者派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合
そのことだけにより、派遣労働者と派遣元との間の労働契約が民法90条違反などの理由により無効になることはない
企業間の業務請負契約あるいは労働者派遣契約が同様の理由で無効となることもない
労働者派遣法は、同法40条の4の規定の実効性を確保するために、
厚生労働大臣による指導又は助言、
労働契約締結の申込の勧告、
それに従わないときは勧告を受けた者の公表という間接的な方法で労働契約締結の申込を促す
という制度を採用しているにとどまっている
同法40条の4の要件を満たした場合、
同条の直接雇用契約申込義務は公法上の義務
私法上の雇用契約申込義務が発生するものではない。
Y1が派遣可能期間が経過していることを知りながら同期間を超えてXの受け入れを継続したことを持って、Y1が直接雇用契約申込義務を履行したものと認めることはできない
(参考条文)
民法90条(公序良俗) 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。
派遣労働法40条の4(派遣労働者の雇用) 派遣先は、第35条の2第2項の規定による通知を受けた場合において、当該労働者派遣の役務の提供を受けたならば第40条の2第1項の規定に抵触することとなる最初の日以降継続して第35条の2第2項の規定による通知を受けた派遣労働者を使用しようとするときは、当該抵触することとなる最初の日の前日までに、当該派遣労働者であつて当該派遣先に雇用されることを希望するものに対し、雇用契約の申込みをしなければならない。
公法と私法 :公法とは、国家と市民との関係を規律する法をいい、私法とは、私人間の関係を規律する法をいう。具体的には、憲法や行政法が前者の典型であり、民法や商法が後者の典型とされる。
労働基準法6条(中間搾取の排除) 何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。
(事件概要)
Y2社は製造業務請負、人材派遣などを事業内容とする株式会社
両者の間に資本関係などはない。
Xは、Y2社との間で、雇用主をY2とし就労場所をY1とする内容の期間雇用契約書に署名
Y1・Y2間で平成21年1月13日、同年3月末日をもって労働者派遣契約を終了させるとの合意がなされた。
Xを含む派遣労働者に対して、Y1との労働契約の締結を希望する場合には、契約期間を3か月単位、最大でも2年11か月までとし、基本給を時給810円とする旨などの労働条件を提示
平成21年1月30日 Y2はXに対し、別作業をするように提案し、それができないのであれば休業してもらうことを伝える。
同年2月2日 Y2はXに対し、別作業をすることの提案に対する回答がないのであれば休業してもらうと伝え、Xは同日以降、Y1において就労していない。
平成21年2月13日 Y2は、派遣契約の終了に伴い
① 希望退職に応じる
② Y2あるいはAでの就労を希望する
のいずれを希望するかなどを訪ねるアンケートを配布
Xは回答を拒否
(訴え)
Xが、派遣先であるY1社に対し、
① 期間の定めのない労働契約上の地位確認
② 賃金請求権に基づく未払賃金の支払い
を求め、Y1社ら(派遣会社Y2含む)に対し、
③ 不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料100万円及び、遅延損害金の支払い
(判決)
Y1は「平成21年1月に有期とはいえ労働契約の締結を提案したが、Xはこれに応じなかったこと」を指摘し、その主張を退けた。
雇用契約申込義務違反の不法行為が成立するものと認めることができない。
<不法行為>
労働者派遣については「労働基準法6条違反の問題は生じないと解される」
平成21年1月に有期とはいえ労働契約の締結などを提案するとの限度では違法状態の是正を図った
Xはこれに応じなかった
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