労災保険の不支給
平成24年4月23日晴れ
本日は、就業規則を作成した会社へ、従業員への説明会を行ってきました。
アンケート用紙を従業員へ配布し、今後従業員からのアンケート用紙の回収待ちです。
どんな質問や意見が寄せられるかが不安でもあり、楽しみでもあり、私の一番好きな瞬間です。
さて、今回の判例は、労災保険の給付請求を不支給とした案件です。
業務起因性について、自宅での仕事についても時間外労働と認めた事案としては、有効なものであると思います。
(事件概要)
同年7月2日早朝、リビングで胸を押さえてうつ伏せに横たわっているKをXが発見 → 救急搬送したが、既に心肺停止の状態 → 前日の午後11時頃に死亡したものと推定 → Xは、Yに遺族補償給付請求(Kの死亡前1か月の時間外労働)→「脳血管疾患及び虚血性心疾患など(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」→ 目安とされる100時間を大きく下回っている。→ 自宅での書類作成は量的にも質的にも過重なものとは言えない。(不支給とする本件処分)→ 労災保険審査官への審査請求、労働保険審査会への再審査請求も棄却 → 業務外としたY労基署長の遺族補償不支給処分の取り消しを、Kの妻の原告Xが請求 → 本件処分の取り消しを命じる。
日常業務 :押し出し機と仕上げ機を準備し、操作してチューブを製造する作業が全体のおよそ8割 → 梱包箱詰めや生産実績のPC入力作業がおよそ2割(原則)→ 午前8時30分始業、休憩を挟み17時30分就業で勤務(平成10年4月以降)→ 生産量の増加のため、夜間(15時から24時)の交代勤務を実施 → Kも4月中に6日間の夜間勤務(その後)→ Kは夜間勤務を担当しなかった。(時間外労働)→ 同年5月は約26時間、6月は約68時間(同年11月)→ 社内だけでなく自宅へ持ち帰ってこれらの書類を作成
(考察)
死亡の業務起因性 :Kの従事業務の内容、KがISO対応業務の完成期限を7月末として作業標準シート74通、機械操作マニュアル3通を作成 → Kの自宅作業時間の正確な記録は存しない。(Kが作成した文書の内容などから推計して算出せざるを得ない。)→ 作業標準シートが1通20分、作業標準書が1通10時間、機械操作マニュアルが1通5時間程度必要(合計)→ 約49時間40分(Kの日記の記載や同僚の証言など)→ Kは発症前1か月の間にその約95%の作業を行う。(そのうち70%)→ 自宅で行ったものと推計(KのISO対応業務のために自宅で行った作業)→ 従業員がそれをせざるを得ない状況にあった。→ 明治の指示の有無にかかわらず業務性が認められる。→ 時間外労働として計算すべき(Kの発症前1か月の時間外労働時間)→ 自宅での業務も合わせると100時間を超える量的に相当に過重なもの(通常業務)→ 物理的・精神的に相当の負担を伴うもの
業務上の疾病 :業務と疾病との間に相当因果関係を要す。(相当因果関係の有無)→ 当該疾病などが当該業務に内在する危険が現実化したものと評価し得るか否かによって決せられるべき(労働者の素因などを自然の経過を超えて増悪させたと認められる場合)→ 相当因果関係を肯定するのが相当
一般論 :自宅での作業と社内での業務従事を同等に評価することはできない。(しかし)→ 期限まで短期間のうちに完成させなければならない。(精神的負担)→ 多忙な製造業務の作業に並行してISO対応業務を行わなければならなかった。(業務の過重性)→ 社内におけるものと同等の評価をすることには十分な合理性がある。
リスクファクター :本件疾病発症を引き起こした何らかの素因または疾患を元々有していた。(程度)→ 極めて低いものであった。(ほかに疾病発症に至る確たる増悪要因が見当たらない本件)→ 過重な業務によってAが有する何らかの素因または疾患をその自然の経過を超えて増悪させ本件疾病発症に至ったと認めるのが相当
本日は、就業規則を作成した会社へ、従業員への説明会を行ってきました。
アンケート用紙を従業員へ配布し、今後従業員からのアンケート用紙の回収待ちです。
どんな質問や意見が寄せられるかが不安でもあり、楽しみでもあり、私の一番好きな瞬間です。
さて、今回の判例は、労災保険の給付請求を不支給とした案件です。
業務起因性について、自宅での仕事についても時間外労働と認めた事案としては、有効なものであると思います。
(事件概要)
同年7月2日早朝、リビングで胸を押さえてうつ伏せに横たわっているKをXが発見 → 救急搬送したが、既に心肺停止の状態 → 前日の午後11時頃に死亡したものと推定 → Xは、Yに遺族補償給付請求(Kの死亡前1か月の時間外労働)→「脳血管疾患及び虚血性心疾患など(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」→ 目安とされる100時間を大きく下回っている。→ 自宅での書類作成は量的にも質的にも過重なものとは言えない。(不支給とする本件処分)→ 労災保険審査官への審査請求、労働保険審査会への再審査請求も棄却 → 業務外としたY労基署長の遺族補償不支給処分の取り消しを、Kの妻の原告Xが請求 → 本件処分の取り消しを命じる。
日常業務 :押し出し機と仕上げ機を準備し、操作してチューブを製造する作業が全体のおよそ8割 → 梱包箱詰めや生産実績のPC入力作業がおよそ2割(原則)→ 午前8時30分始業、休憩を挟み17時30分就業で勤務(平成10年4月以降)→ 生産量の増加のため、夜間(15時から24時)の交代勤務を実施 → Kも4月中に6日間の夜間勤務(その後)→ Kは夜間勤務を担当しなかった。(時間外労働)→ 同年5月は約26時間、6月は約68時間(同年11月)→ 社内だけでなく自宅へ持ち帰ってこれらの書類を作成
(考察)
死亡の業務起因性 :Kの従事業務の内容、KがISO対応業務の完成期限を7月末として作業標準シート74通、機械操作マニュアル3通を作成 → Kの自宅作業時間の正確な記録は存しない。(Kが作成した文書の内容などから推計して算出せざるを得ない。)→ 作業標準シートが1通20分、作業標準書が1通10時間、機械操作マニュアルが1通5時間程度必要(合計)→ 約49時間40分(Kの日記の記載や同僚の証言など)→ Kは発症前1か月の間にその約95%の作業を行う。(そのうち70%)→ 自宅で行ったものと推計(KのISO対応業務のために自宅で行った作業)→ 従業員がそれをせざるを得ない状況にあった。→ 明治の指示の有無にかかわらず業務性が認められる。→ 時間外労働として計算すべき(Kの発症前1か月の時間外労働時間)→ 自宅での業務も合わせると100時間を超える量的に相当に過重なもの(通常業務)→ 物理的・精神的に相当の負担を伴うもの
業務上の疾病 :業務と疾病との間に相当因果関係を要す。(相当因果関係の有無)→ 当該疾病などが当該業務に内在する危険が現実化したものと評価し得るか否かによって決せられるべき(労働者の素因などを自然の経過を超えて増悪させたと認められる場合)→ 相当因果関係を肯定するのが相当
一般論 :自宅での作業と社内での業務従事を同等に評価することはできない。(しかし)→ 期限まで短期間のうちに完成させなければならない。(精神的負担)→ 多忙な製造業務の作業に並行してISO対応業務を行わなければならなかった。(業務の過重性)→ 社内におけるものと同等の評価をすることには十分な合理性がある。
リスクファクター :本件疾病発症を引き起こした何らかの素因または疾患を元々有していた。(程度)→ 極めて低いものであった。(ほかに疾病発症に至る確たる増悪要因が見当たらない本件)→ 過重な業務によってAが有する何らかの素因または疾患をその自然の経過を超えて増悪させ本件疾病発症に至ったと認めるのが相当
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