内部告発を理由とする懲戒解雇の有効性
(考察)
民法629条については、目次の更新について期間の定めのない契約に相当するという考え方は覚えておく必要がある。
(重要文言)
不法行為に該当するような退職勧奨行為などが認められることからすると
理事長兼校長から退任させようとしたこと
学園に反抗する姿勢を示したことには、酌量されるべき相応の理由があったと認められる。
29枚の文書を交付していた説明及び相談した行為
多少の混乱を生じさせ、心情を害したことは否定できないが、
懲戒免職処分にすべきほどの重大な実害が生じたとまでは認められない。
懲戒免職とすること
社会通念上相当なものとして是認することはできない
解雇権の濫用として無効
黙示の雇用契約更新について定める民法629条が、
期間の定めのない雇用の解約の申し入れに関する同法627条の規定により解約の申し入れをすることができると定めている
→ 雇用契約が黙示に更新された場合、更新された雇用契約は、期間の定めのないものになると解するのが相当
平成20年4月1日以降、期間の定めのないものになった
本件管理職規程として
管理職の任用期間は2年以内とされているが、
任用期間を更新することができるとされている
→ 民法629条と異なる法理が適用されるとも認めがたい
<就業規則懲戒規程記載の重大な反社会的行為、これに準ずる不都合な行為に該当>
学校法人外部の有力な第三者に説明し、当該部外者の力を利用して理事長を退任させようとする行為
理事長の名誉毀損、侮辱にわたりかねないもの
当該理事長の違法行為を含んでいる場合には、この限りではない。
(重要条文)
民法第629条(雇用の更新の推定等)
雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第627条の規定により解約の申入れをすることができる。
2 従前の雇用について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。ただし、身元保証金については、この限りでない。
民法第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三カ月前にしなければならない。
(事件概要)
平成17年10月7日 X2がY1学園の理事に選任
平成18年4月 X1はY1に参事として採用、雇用期間2年の雇用契約を締結
19年4月 X1は副校長に昇任し、学園理事に選任
20年3月31日までに雇用契約を更新するかどうかについて決議せず
20年10月7日 X2は理事に再任
同年4月1日以降 X1は副校長として勤務を継続し、Y1らは異議を述べなかった
22年4月1日以降 X1は副校長として勤務を継続し、異議を述べなかった
平成22年10月15日 X1を懲戒解雇し、X2を懲戒解任
X1はY1学園の教職員服務規則28条7号
重大な反社会的行為があったとき、その他、前各号に準ずる不都合な行為があった時などに該当
X2は役員規程16条各号及び寄付行為11条1項各号に該当する行為
(訴え)
本件解雇を不服として、雇用契約上の地位を有することの確認
本件解雇後の賃金などの支払いを求める
違法な退職勧奨及び違法な本件解雇をした旨主張
損害金550万円などの支払いを求め
違法な本件解任をしたY1学園及び本件解任を主導したY2に対し、共同不法行為による損害賠償請求権に基づき
連帯して、220万円などの支払いを求めた。
(判決)
本件解任を無効
不法行為を否定
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