使用者の責めに帰すべき事由と休業手当
(考察)
休業手当の支払いに関して、新たな発見があった判例である。今後の不利益変更について考えさせられる。
(重要文言)
ノルマ未達成を理由の配転命令につき、
賞罰規程の目的は、困難な売上高の達成を求めるもの
達成できなかった場合には、直ちに固定給を月額10万円減額するか、他の支店に異動させるという制裁を課すもの
過酷に過ぎ、著しく不合理
本件配転命令が権利の濫用に当たる
破壊されたXとの信頼関係は、本件配転命令を撤回し、誓約書を提出しただけでは回復したとは認められない
撤回後も出勤していないのは、Yの責めに帰すべき事由
民法536条2項により、本件配転命令の撤回後も賃金支払い義務を負う
労基法26条は、使用者の責めに帰すべき事由によって不能となった場合、
使用者の負担において労働者の最低生活を6割以上の限度で補償しようとする趣旨に出たもの
使用者の責めに帰すべき事由により、違法に配転命令を受け、これにより発令前の勤務部署に出勤することが出来なくなった場合
適用ないし準用される
Xが他社から支払いを受けた給与などを控除すべきであるが、
その限度は、XがYから受けた給与の4割に相当する額にとどまる
(参考条文)
民法536条(債務者の危険負担等)
2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
労基法26条(休業手当)
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
労基法114条(付加金の支払)
裁判所は、第20条、第26条若しくは第37条の規定に違反した使用者又は第39条第6項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から二年以内にしなければならない。
第20条(解雇の予告)
第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第39条(年次有給休暇)
(事件概要)
平成24年7月1日付でY社に入社
平成25年9月12日付
「M社員」を対象とする賞罰規定
月間受注ノルマを200万円
ノルマを達成できなかった従業員に対して、Y側で決定する支店へ異動または、
雇用条件を変更(固定給が月額約10万円低い「S社員」等)
同年9月度に売上高200万円を達成できなかったところ
平成25年10月18日、本件配転命令が発令
以後、Yに出勤しなかった。
Xは、他社において就労し収入を得ていた。
Yは、本件訴訟継続中の平成26年8月15日、配転命令を撤回、福井市店への出勤命令を発令
誓約書を提出
信頼関係が確立しているとはいえないとして、出勤を拒否
(訴え)
Xが、福井市店から長野支店への配転命令を受け、その有効性を争ったことを契機にして出勤していない
① 1か月あたり29万円の未払い賃金
② 未払いの時間外労働賃金
③ 労基法114条所定の付加金及びこれらに対する遅延損害金
(判決)
Xは、50年近く福井市内で暮らし、発令当時は妻子と同居していた
内示もないまま突如として長野支店への異動を命じられることは、X及びその家族にとって生活上著しい不利益となることは明らか
権利の濫用によるものであって、違法
未払い賃金額を算定するにあたって、他社から支払いを受けた給与などを控除するべき
XがYから支払いを受けていた月額29万円の4割に相当する11万6,000円にとどまる
6割が休業手当
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