歩合給と割増賃金の調整に対する有効性
(考察)歩合給と割増金の算出に当たり、画期的な判例であると思われる。
(重要文言)
賃金規則
歩合給の算定に当たり、時間外・休日・深夜労働による「割増金」に相当する額が
対象額A(算定基礎額)から控除される結果、
「割増金」が支払われても、その分だけ歩合給が減少することになる
本件規定は労基法37条および公序良俗に違反しない
賃金の算出方式をどのように定めるかは、強行法規に違反しない限り当事者の自由というべき
揚げ高から経費に相当する部分を控除する算出方法をとることは不合理ではなく
揚げ高が同じであったとしても、時間外労働等がされた場合における労働の成果は、
時間外労働等に伴う残業手当等の増加により経費が増加する結果、相対的に低くなる
労使間で、あらかじめ、これを見越して残業手当等その他の経費に相当する金額を控除する方法で歩合給を算出するような方式について合意することを否定すべき理由はない
対象額Aから「割増金」などを控除した金額がマイナスになった場合でも、歩合給をゼロにするにとどめていて
残業手当等は、時間外労働等が行われていれば、必ず支給されることになる
労基法37条の趣旨を没却し、同条による規制を潜脱するものとは認められないとされた
交通費自体は必ず支給されるのであり、歩合給の算出に当たって交通費相当額が経費として差し引かれるにすぎないとして違法ではない
同じ揚げ高の場合に時間外労働等が少ないほど、歩合給が高くなるような算出方式を定めることも合理性がある
<賃金規則>
基本給
服務手当(タクシーに乗務せずに勤務した場合の賃金)
深夜手当
残業手当
公出手当
歩合給(1)=対象額A-{割増金(深夜手当、残業手当および公出手当の合計)+交通費×出勤日数}
最低補償給
交通費
対象額A={(所定内揚げ高-所定内基礎控除額)×0.53}+{(公出揚げ高-公出基礎控除額)×0.62}
「割増金」と歩合給(1)を合計した実際の支給額には変動はない
歩合給(1)がゼロ以下になることはない
<法解釈>
歩合給は、労働基準法27条の「出来高払い制その他の請負制」の賃金であると解され、
同条は、出来高払いその他の請負制の賃金制度の下で、
出来高が少ない場合でも、労働者に対し通常の実収賃金とあまり隔たらない程度の収入が保障されるよう、
労働時間に応じ一定額の賃金の保障をすることを要求している。
行政通達レベルでは、歩合給制度のうち特に累進歩合制度については、これを廃止すべきものとされている(平成元年3月1日基発第93号)
趣旨は、累進歩合制度は、営業収入などをその高低に応じて段階的に区分し、
階級区分の上位になるほど歩率を逓増させるものであるところ、
このような累進歩合制度の下では、歩率の変動する営業収入の直前の労働者に次の段階に到達するため長時間労働やスピード違反等を誘発させる結果になり易いという点にある
労基法37条は、割増賃金を支払うべきことを定めた規定であって、歩合給の算出方法について規制している規程ではない
就業規則等の定めによる計算方法が法定(労基法施行規則19条1項6号)の算定方法と異なっていても、算出される金額が法定の割増賃金額を下回らない限り、労基法37条違反ではない(昭和24年1月28日基収第3947号)
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