慣習による定年再雇用拒否の有効性
(考察)
就業規則の有効性を争われた事案であると思われる。慣習による法的拘束力についての考え方が示されている。
(重要文言)
<慣習として法的拘束力を認める場合とは>
就業規則が全く形骸化しているような事情のもと
就業規則を改廃する権限を有する者が慣行を規範として認める意思を有していたような例外的な場合に限られる。
本件)
定年の再雇用について、理事会の裁量は全くの自由裁量であるとは解されず、
その権限を逸脱濫用するような運用をすることは権利の濫用として許されるものではない
<定年再雇用の拒否について>
再雇用をすることなく定年により雇用が終了したものとすることは、
他にこれをやむを得ないものとみるべき特段の事情がない限り、
客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められず、
再雇用規定に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものとみるのが相当
(訴え)
Y学園の経営する大学の専任教員Xが、満65歳に達し、就業規則所定の定年により退職扱い
① 定年を満70歳とする合意
② 満70歳とする労使慣行
③ 70歳まで特別専任教員として再雇用する旨の合意
④ 仮に①から③まで成立しなかったとしても、70歳まで特別専任教員として1年ごとの嘱託契約を締結すると期待
合理的理由があり雇い止め法理が類推適用されることを主張
特別専任教員としての地位確認
労働契約に基づく賃金及び賞与などの支払いを求めた
<就業規則その他の規定>
① 専任教員の定年は65歳に達した日の属する学年度の末日
② 理事会が必要と認めた時は、定年に達した専任教員に、満70歳を限度として勤務を委嘱することが出来る(1年契約の特別専任教員)
③ 定年に達した専任教員が引き続き勤務を希望する場合は学部長及び学長を通じて理事長宛にその旨を書面により申請しなければならない
④ ③の申請があった場合には学部長は直ちに審査の上、学長に上申書を提出し、理事長会の義を経て理事長が決定する
⑤ 特別専任教員の待遇は定年時の基準給与月額の70%
(判決)
Xの請求をすべて認容
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