就業規則の不利益変更の有効性
本日は、社労士業務とは異なりますが、自賠責保険の保険金請求について相談を受けました。
保険外診療についても、もう少し加味してもらえたら良いのにとつくづく思います。
さて、本日勉強をした判例は、就業規則の不利益変更です。
金額的には、些細な賃金減額であり、僕としては認められても良いのにと思いますが、判例では、やはり不利益変更に対する必要性、相当性、代償措置、話し合いといった毎回決まった内容の検討が認められました。
難しいというか、辛い現実です。
(事件概要)
(平成21年5月から22年9月)Xは東京都労働委員会から6回にわたり証人として呼び出しを受け出頭 → いずれの呼び出しとも午後2時からの出頭を求めるもの → Xには各日につき不就労が発生 → Y(社会福祉法人)は、給与から控除(本訴)→ Xは、本件各賃金カットなどを理由とする未払い賃金と、本件各賞与カットを理由とする未払い賞与の支払いを求める。
労基法7条 :公民権の行使などに要した時間を有給とすることを使用者に求める規程であるか。(解釈)→ 労働者がその労働時間中に公民権の行使などのために必要な時間を請求した場合 → 使用者はこれを拒んではならないことを規程するにとどまる。(公民権の行使などに要した時間に対応する賃金)→ 有給とすることを要求するものではない。→ 当事者間の取り決めに委ねるという趣旨
本件旧就業規則15条 :不可抗力の事故のため、又は公民権行使のため遅刻又は早退したとき → 届出により遅刻、早退の取り扱いをしない。(「遅刻、早退の取り扱いをしない」の意味)→ 単に就労義務を免除し、不利益な取り扱いをしないとの意味にとどまるのか(もしくは)→ 就労したものとして取り扱い、その時間に対応する賃金についてこれを有給とする趣旨を含むものであるか(判決)→「勤務時間及び休憩時間」の中に、公民権の行使などに伴う遅刻、早退に関する規定 → 単なる就労義務の免除を意味するのではなく、ノーワーク・ノーペイの原則の例外として → 公民権の行使などに伴う遅刻、早退についてはこれを就労したものとみなす。→「労務時間」の中に組み入れることを明らか。→「本件旧就業規則15条が適用される限り、Xの本件各府就労はいずれも有給として扱われ、本件各賃金カットは違法」
給与規程3条 :正規職員が所定時間内に休業した場合には、不就労時間数に応じて基準内給与から控除する旨の規定
(考察)
不利益変更の合理性 :合理性要素(不利益の程度、変更の必要性、変更後の内容自体の相当性、代償措置、交渉の経緯、国社会における一般状況)→ 一定の合理性があると推認できる。(不利益の程度)→ 労基法91条が減給の制裁額を一賃金支払期における賃金総額の10分の1の範囲に制限していることを踏まえると → 倒産回避のための必要性の高さや代償措置を考慮しても、X1らの各月の賃金について、20%以上減額する限度で合理性が認められない。(大阪京阪タクシー事件)(本件)→ 変更が高度の経営上の必要性に基づくものであるとの評価が成り立つためには、人件費の抑制という大きな目標の実現にとって、有給扱いをも削減の対象とする高度の必要性が存在していることが求められるものであるところ、そうした必要性の存在が認められない。→ その他の諸事情(労働組合との交渉の状況など)を勘案したとしても、変更に同意しない原告Xのような職員に対して、これを法的に受任させることを許容することが出来るだけの合理的な内容のものであるということは出来ない。
必要性 :Yにおいてかなり大掛りな人件費の削減に着手せざるを得ない状況(有給取り扱い)→ それ自体決して根拠にかける不要な賃金の支出に当たるものということはできない。→ Yのような公益性の強い社会福祉法人にとっては、有用な規程であるとみることもできる。(加えて)→ 頻繁に生ずる出来事ではなく、支出額それ自体もそれほど高い金額に上ることは想定されない。(人件費削減)→ 余り大きく寄与するものとは考えがたい
代償措置 :変更に伴って消滅する「既得の権利」の存在は看過しがたい。→ 有給扱いの廃止について然るべき代償的措置などが講じられた形跡は認められない。
相当性 :経済的不利益はさほど大きくなく、むしろ些少である。→ 減少する賃金の額が小さいからといって、変更の不利益性が小さいということにはならない。
保険外診療についても、もう少し加味してもらえたら良いのにとつくづく思います。
さて、本日勉強をした判例は、就業規則の不利益変更です。
金額的には、些細な賃金減額であり、僕としては認められても良いのにと思いますが、判例では、やはり不利益変更に対する必要性、相当性、代償措置、話し合いといった毎回決まった内容の検討が認められました。
難しいというか、辛い現実です。
(事件概要)
(平成21年5月から22年9月)Xは東京都労働委員会から6回にわたり証人として呼び出しを受け出頭 → いずれの呼び出しとも午後2時からの出頭を求めるもの → Xには各日につき不就労が発生 → Y(社会福祉法人)は、給与から控除(本訴)→ Xは、本件各賃金カットなどを理由とする未払い賃金と、本件各賞与カットを理由とする未払い賞与の支払いを求める。
労基法7条 :公民権の行使などに要した時間を有給とすることを使用者に求める規程であるか。(解釈)→ 労働者がその労働時間中に公民権の行使などのために必要な時間を請求した場合 → 使用者はこれを拒んではならないことを規程するにとどまる。(公民権の行使などに要した時間に対応する賃金)→ 有給とすることを要求するものではない。→ 当事者間の取り決めに委ねるという趣旨
本件旧就業規則15条 :不可抗力の事故のため、又は公民権行使のため遅刻又は早退したとき → 届出により遅刻、早退の取り扱いをしない。(「遅刻、早退の取り扱いをしない」の意味)→ 単に就労義務を免除し、不利益な取り扱いをしないとの意味にとどまるのか(もしくは)→ 就労したものとして取り扱い、その時間に対応する賃金についてこれを有給とする趣旨を含むものであるか(判決)→「勤務時間及び休憩時間」の中に、公民権の行使などに伴う遅刻、早退に関する規定 → 単なる就労義務の免除を意味するのではなく、ノーワーク・ノーペイの原則の例外として → 公民権の行使などに伴う遅刻、早退についてはこれを就労したものとみなす。→「労務時間」の中に組み入れることを明らか。→「本件旧就業規則15条が適用される限り、Xの本件各府就労はいずれも有給として扱われ、本件各賃金カットは違法」
給与規程3条 :正規職員が所定時間内に休業した場合には、不就労時間数に応じて基準内給与から控除する旨の規定
(考察)
不利益変更の合理性 :合理性要素(不利益の程度、変更の必要性、変更後の内容自体の相当性、代償措置、交渉の経緯、国社会における一般状況)→ 一定の合理性があると推認できる。(不利益の程度)→ 労基法91条が減給の制裁額を一賃金支払期における賃金総額の10分の1の範囲に制限していることを踏まえると → 倒産回避のための必要性の高さや代償措置を考慮しても、X1らの各月の賃金について、20%以上減額する限度で合理性が認められない。(大阪京阪タクシー事件)(本件)→ 変更が高度の経営上の必要性に基づくものであるとの評価が成り立つためには、人件費の抑制という大きな目標の実現にとって、有給扱いをも削減の対象とする高度の必要性が存在していることが求められるものであるところ、そうした必要性の存在が認められない。→ その他の諸事情(労働組合との交渉の状況など)を勘案したとしても、変更に同意しない原告Xのような職員に対して、これを法的に受任させることを許容することが出来るだけの合理的な内容のものであるということは出来ない。
必要性 :Yにおいてかなり大掛りな人件費の削減に着手せざるを得ない状況(有給取り扱い)→ それ自体決して根拠にかける不要な賃金の支出に当たるものということはできない。→ Yのような公益性の強い社会福祉法人にとっては、有用な規程であるとみることもできる。(加えて)→ 頻繁に生ずる出来事ではなく、支出額それ自体もそれほど高い金額に上ることは想定されない。(人件費削減)→ 余り大きく寄与するものとは考えがたい
代償措置 :変更に伴って消滅する「既得の権利」の存在は看過しがたい。→ 有給扱いの廃止について然るべき代償的措置などが講じられた形跡は認められない。
相当性 :経済的不利益はさほど大きくなく、むしろ些少である。→ 減少する賃金の額が小さいからといって、変更の不利益性が小さいということにはならない。
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