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年次有給休暇取得による不利益

平成24年5月16日、今日は朝から就業規則の作成に取り組んでいます。

今回は、お客様の就業規則の作成に当たり、皆勤手当を年次有給休暇の取得をした従業員に対しても支払わない方向で話が進んでいることから、法律的には規制がかけられていないまでも、判例でどのように提示されているかを検証してみました。

私自身、皆勤手当を支給しなければいけないという固定観念にとらわれていたため、今回の勉強は私の頭を見直すのにも良い判例を見る事が出来たと思います。



(事件概要)

原告4名は、被告に、タクシーの乗務員として勤務 → 被告は、乗務員が出番(月毎の勤務予定表に定められた始業から終業までの勤務単位)をすべて乗務した場合、安全服務手当9,000円を支給 → 年休権の行使を欠勤と同視(就業規則に基づいて、年休権を1出番行使した場合)→ 皆勤手当全額及び安全服務手当のうち4,500円の合計1万円を支給しない。(同じ月に年休権を2出番以上行使した場合)→ 上記に加えてさらに安全服務手当を4,500円支給しなかった。→ 年休権を行使した場合には行使しなかった場合よりも1か月最大1万4,500円を減額(訴え)→ 年休権の行使を理由に賃金の一部である安全服務手当及び皆勤手当を減額されたことは、労基法39条、136条に違反し、民法90条により私法上無効 → 減額分の支払いを求めて訴えを提起

労基法136条 :使用者は、第39条第1項から第3項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

民法90条 :公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。


(考察)

年休取得を理由とする安全服務手当及び皆勤手当の減額・不支給が私法上有効であるか否か :労基法136条によれば、使用者が労働者の年休権行使を何らかの経済的不利益と結び付ける措置をとること → 経営上の合理性を是認できる場合であっても出来るだけ避けるべき → 同条はそれ自体としては使用者の努力義務を定めたもの → 労働者の年休権行使を理由とする不利益取り扱いの私法上の効果を否定するまでの効力を有するものとは解されない。(年休権を保障した労働基準法39条の精神に沿わない面を有することは否定できないが)→ その趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、年休権行使に対する事実上の抑止力の強弱など諸般の事情を総合 → 年休権行使を抑制し、ひいては同法が労働者に同権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められるものでない限り → 公序に反して無効とはできない。(総合)→ 本件減額は、労基法39条および136条の趣旨から見て望ましいものではない。(しかし)→ 年休権行使を抑制し、同法が労働者に権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものとまでは認められない。→ 公序に反し無効であるとはいえない。

判決① 本件減額は、被告がタクシー事業者であり専ら営業収入により利益を上げている。→ 作成後の代替要員確保が困難(仮に確保できたとしても)→ 当該代替要員の常務が予定されていた別の出番が休車になってしまうという事情 → 車両の効率的な運航確保のために乗務員の出番完全乗務を奨励する目的で行われるもの → 原告ら乗務員の年休行使を一般的に抑制しようとする趣旨・目的があるとは認められない。

判決② 被告の賃金制度が一部歩合給制を採っている。(1か月あたり最大1万4,500円という減額分が当月の賃金総支給額の何%にあたるか)→ 各乗務員の営業収入に応じて異なり得る。(問題とされている減額分について)→ 対賃金総支給額割合がたまたま1.99ないし7.25%であるからといって、本権減額が乗務員に対して常に年休権行使の抑制に結びつくほど著しい不利益を課するものと断定できない。

判決③ 使用者として時季変更権を行使することが考えられるような場合でも、申請の通りに年休権を行使させる方向で運用されている。(年休権の行使の実情)→ 本件減額によって乗務員の年休権行使が一般的に強く抑制されているものとは認められない。
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