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名誉毀損、情報漏洩を理由の懲戒解雇及び、普通解雇の転換の有効性

(考察)
認識の誤りは否定できないが、懲戒解雇の難しさを感じる判例だと思われる。普通解雇の転換については本判例と同じ判決が出ていることが多いように思われる。

(重要文言)
<金融商品取引法166条(会社関係者の禁止行為)1項5号の解釈>
上場会社等と契約締結の交渉をしている法人の役員等がその者の職務に関し重要事実を知ったとして同号に該当するというには、
職務の遂行上重要事実を知ったというのでは足りず、
他の役員などが知った重要事実が法人内部でその者に伝わったという事の出来る場合でなければならないというべきであるが、
その者の職務に関し知ったといえる限りは、重要事実の伝達ないし流出の方法や経路は問わないものと解される。

<懲戒解雇が無効である場合の普通解雇の転換>
懲戒解雇は、就業規則上企業秩序違反に対する制裁罰として規定
普通解雇とは制度上区別されている
懲戒解雇の意思表示に普通解雇の意思表示が予備的に包含されているという事はできない

辞令書にも、予備的にも普通解雇の意思表示をする旨の記載は認められない

懲戒解雇の意思表示に普通解雇の意思表示が内包されているものとは認められない

(事件概要)
Y社との間で労働契約を締結していたXが、平成24年6月29日付懲戒解雇は無効であるとして、労働契約上の地位にあることの確認
月例賃金などの支払いを求める。
懲戒解雇はXに対する不法行為に当たると主張
民法709条に基づき、慰謝料1,000万円などの支払いを求める。

平成21年11月5日 E社は、公募増資を行うことを決定
22年1月以降 E社及び主幹事証券会社であるY社の役職員らによって準備
同年9月29日 公募増資は公表
平成24年6月8日 証券取引等監視委員会は、公募増資に関して検査
結果、C社およびAが、Xから、
Y社の他の社員らが交渉に関して知り、
Xがその職務に関して知った、
E社の業務執行を決定する機関が株式の募集を行う事についての決定をした事実の伝達を受け、
公表された時点より以前に、E社株式を売りつけたもの
いずれの行為も、金融商品取引法175条1項に規定する行為に該当するという事実が認められた。
内閣総理大臣および金融庁長官に対し、課徴金納付命令を発出するよう勧告するとともに、その旨を公表
平成24年6月29日 Y社はXに対し、Xを懲戒解雇する旨の意思表示をした。
<懲戒解雇辞令書>
<懲戒事由①>社外の者に対し未公表の法人関係情報を伝え、受領者がそれをもとにインサイダー取引を行ったとして証券取引等監視員会の勧告を受け、報道された
<懲戒事由②>顧客の情報も漏洩していた
就業規則42条(懲戒事由に関する規定)
11号 会社の名誉又は威信を傷つけた場合、
14号 機密情報に関する会社の規則に反した場合および、
20号 この規則あるいは会社の他のいかなる規則、方針、規程、あるいは他の日本の法律に定められた業界を規制する規則、方針、規程に違反した場合
に該当する旨の記載

(判決)
地位確認請求ならびに月例賃金などの支払いを求める部分は理由がある
慰謝料の支払いを求める部分は理由がない

平成22年9月12日以前 XとY社におけるE社担当のアナリストであったIとの接触
同月22日から24日 XとYにおける募集担当者であったJとのやり取り
これらを合わせ考えても、Yの内部においてXに本件情報又は公募増資の実施公表の日が同月29日であるとの情報が伝わったとは認められない

以上の他にXに伝わったと評価すべき事情は認められない
金融商品取引法166条1項5号に該当すると認めることはできない

懲戒事由①は就業規則所定の懲戒事由に該当するものとは認められず、
懲戒事由②はその一部が就業規則所定の懲戒中に該当するものと認められるものの、
上記会話を懲戒事由として懲戒処分の中で最も重い懲戒解雇処分を行うことは重きに失することが明らかである。
客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認めることはできず、懲戒権の濫用したものとして無効
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