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管理監督者の長時間労働に対する安全配慮義務違反

(考察)
安全配慮義務に関する判例を見れば見るほど、義務を果たすという壁が高いことを実感する。

(重要文言)
使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷などが過度に蓄積して労働者の心身を損なう事がないよう注意する義務を負うと解するのが相当
使用者に代わって労働者に対し、業務上の指揮監督を行う権限を有する者は使用者の上記注意義務の内容に従ってその権限を行使すべき
本件)
口頭聴取をしたのみで、具体的な改善策を講じなかった。
退勤時間が遅くなっている理由については特段の聴取すらしなかった
労働時間が長時間に及んだ原因を特段分析もしておらず、軽減する措置を採っていないといわざるを得ない。

定期健康診断を実施したり、口頭聴取をしたというだけでは、Y1社が安全配慮義務を尽くしたとはいえず、違反が認められる。

<過失相殺>
労災事故による損害賠償の場合においても民法722条2項の類推適用を認めている。

民法722条(損害賠償の方法及び過失相殺)2項
被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
本件)
死亡1か月前の業務時間は軽減されていた
喫煙をやめるよう指摘されていたのに喫煙を続け
肥満を解消することもせず、食事制限もせず
過失割合を3割

(事件概要)
Y1社の従業員であったKの死亡は、過重な業務に従事したことによるものであると主張
Xらが、
Y1社については、労働時間を適正に把握し、適正に管理する義務を怠った不法行為による損害賠償などの支払い
代表取締役であったY2らについては任務懈怠があったとして会社法429条1項に基づく損害賠償などの支払いを求めた。

会社法429条1項(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

Kは、課長代理であったが、店長も兼務していた。
店長の労働時間管理は、各従業員と同様、自身でパソコンに入力して自主管理するというもの
課長代理を兼務していたため、GPSによる時間管理が行われていた。
死亡する前月分の賃金は45万4,250円で、うち役割手当は6万円

(判決)
Kの労働時間は、発症前1か月間に59時間57分、
同2か月間の平均が93時間11分
同6か月間の平均は112時間35分
少なくとも約5か月間、Kは、平均120時間以上の時間外労働を続けていたので、既往症の影響よりも、むしろ長期かつ長時間の過重労働が強く影響していた可能性も高い。

Kの死亡により生じた損害について
逸失利益を4,983万余円
慰謝料を2,700万円
遺族であるXらの固有の慰謝料として各100万円
葬儀・葬祭関係費150万円

過失相殺は3割
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