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分限免職処分者への捜索や事情聴取に対する違法性


(考察)懲戒権者への捜索や事情聴取についても、これらに対する行き過ぎた対応は損害賠償に当たる事を理解しておく必要があると思われる。

(本文)
平成26年5月15日 巡回業務を懈怠したXに対する指導として、Xの制服の胸倉部分を掴み、持ち上げる等の行為を行った。
同月22日 Xが、大学時代に他人名義のキャッシングローンカードの所持利用の申告
E主席は上記の情報の提供を受け、捜索
その後、Xの車両から数社のキャッシングローンカードを取り出したため、事情聴取
事情聴取書を読み聞かせ、Xに閲覧して確認するよう申し受けたところ、Xの身体の震えは止まらない状態が続いたため、病院へ緊急搬送
同月30日まで 勤務
同年6月5日まで 年休を取得
同月6日以降 病気休暇を取得
27年1月9日 復職
同年2月2日以降 再度病気休暇を取得
同年3月26日 分限免職処分

被告国Yの処分行政庁から分限免職処分(公務の運用維持が妨げられると判断される場合に行われる。)を受けたXが、
主位的請求)
① 本件処分は裁量権を逸脱し、労基法19条1項に違反し違法である等と主張
Yに対し、本件処分の取消を求める。
労基法19条1項:業務上負傷し、休業する期間及び30日前後、産前産後期間及び30日は解雇×
② 暴行脅迫などの違法な行為を受けたために長期間の休暇を余儀なくされ、就労できない状況にある旨主張
国家賠償法1条1項に基づき、休業損害、慰謝料などの損害賠償を求めた。

予備的請求)
職場で暴力行為等の違法な行為を受けたことによりPTSD(強い精神的打撃が原因のストレス障害)を発症・悪化し、長期間の休暇を余儀なくされたと主張

(判決)
(1) 労基法19条1項違反の有無
国家公務員について、労基法19条1項の適用はない。

(2) 憲法14条1項違反の有無
国と地方公共団体では、経済的基礎や職務の内容、性格などにおいて相違があるのは当然
労基法の適用についても異なった定めがなされている。
憲法14条1項 :すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

(3) 裁量権の逸脱・濫用の有無
任命権者に相応の裁量権が認められる。
純然たる自由裁量ではなく、その処分が合理性を持つものとして許容される限度を超えた不当なものであるときは裁量権を逸脱・濫用したものとして違法というべき
Xの勤務成績は不良と言わざるを得ず、条件付き採用期間中のXを引き続き任用しておくことは適用ではないとの処分行政庁の判断には合理性がある。

(4) 指導行為を理由とする損害賠償請求が認められるか
D副看守長が、Xの胸倉をつかんで引き寄せ、激しい口調で詰問(きつもん、相手を責めながら、返事を迫って問い立てる)した行為は、巡回業務を懈怠したXに対する指導としてみても、不適切で行き過ぎた行為であると言わざるを得ず、国家賠償法上違法

(5) 捜索を理由とする損害賠償請求が認められるか
懲戒権者に認められる調査にも、非違行為が疑われる国家公務員のプライバシーへの配慮などから制約があることは当然
調査の必要性・相当性を欠いている場合には、認められる調査権限を逸脱したものとして国家賠償法上違法
Eらが目的を説明しないままXに向かったことは、Xが拒否することを困難にさせると共に、関係資料を任意で提出させる機会を十分に与えないまま捜索を行なおうとするもの
Xからの承諾を得る方法において相当性を欠くものであり、任命権者の調査権限を逸脱したものとして国家賠償法上違法

(6) 事情聴取を理由とする損害賠償請求が認められるか
他人名義のキャッシングローンカードの所持利用という非違行為に該当し得る事実の調査として、Xに事情聴取
カードや預金口座への入金について説明させる必要がある。
本件事情聴取の態様も相当性を欠くとはいえない。

(7) 配置転換義務を怠ったことを理由とする損害賠償請求が認められるか
業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なう事がないように注意する義務がある。
職場復帰後、Xが構内外巡回や監視卓勤務をすることによって精神障害を悪化させることの予見可能性があったといえず、Xにこれらの業務を命じたことは違法ではない。

(8) Xに生じた損害の有無及び額
Xが故意に巡回を懈怠したうえに虚偽の説明・報告をした
原因の一端はXにもある
Xが自由な意思で回答できる状況か否かの配慮が不足していたものの、態様は相当性を逸脱するようなものではなかった。
精神的苦痛に対する慰謝料の額は、10万円と認めるのが相当
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