災害補償規定作成による任意の保険契約の有効性
平成24年6月2日、今日は子供とウルトラマンのショーを見に行きました。
子供の表情を見るだけで、結構面白かったです。
今回の判例は、災害補償規定を作成して契約した任意の傷害保険の有効性を判断した判例です。
私のように、保険の代理店もしている人間については、かなり重要な判例であり、災害補償規定を作成した保険契約をするときは、本当に考えながら行わないと、取り返しのつかないものになると思いました。
(事件概要)
被控訴人Yの親方制度のもとで子方としてトラックの運転手をしていたAが、トラック運転中の交通事故によって死亡 → Aの妻である控訴人Xが、Aの使用者はYであるとして、Yに対し、YがAを被保険者とする交通事故傷害保険契約に基づいて取得した保険金に相当する額の弔慰金を求めた。
交通事故 :同年4月26日、高速道路をトラックで走行中に大型トレーラーに追突 → 自車進行方向の車外に投げ出され、自車後輪に頭部をひかれ、頭部打撲により死亡
交通事故傷害保険契約 :平成7年11月10日に訴外保険会社Nとの間で、本件契約を締結 → Nに対し、添付書類として、「災害補償規程」と記載された文書を差し入れ(この差し入れがあったことにより)→ Nは本件契約についての被保険者らの同意があったものとして、本件契約を締結(本件契約の約款)→ 締結の際、その者の同意を得なかったときは、本件契約は無効とする旨の規定(平成8年3月9日)→ Nとの間で、Aを本件契約の被保険者に追加する旨の合意(同年10月2日)→ Nは、Yに対し、Aの死亡による本件契約による保険金5,000万円を支払った。→ Yは、本件規定の存在を従業員や親方・子方に告知したことはなく、Xが本件契約の存在を知ったのも、本件事故後
Yでの運転手 :Yが仕事を発注ないし依頼する「親方」→ 親方の下で運転手として働く「子方」および純粋の従業員とに区分(平成8年1月22日)→ Aは、親方である訴外Sの子方として、Yの業務に関するトラックの運転手として働いていた。
<弔慰金>
① 主位的にはYの制定した災害補償規程に基づく。
② 予備的には、第三者のためにする契約に基づき、Xに支払う義務があると主張 → 災害補償金5,000万円等の支払いを求める。
③ YがAに過重労働をさせたという安全配慮義務違反に基づく損害賠償金を支払う義務がある。→ 同損害賠償金500万円等の支払いを求めた。
(考察)
<争点>
① Aは、Yの従業員といえるか :直接間接の指揮監督関係があったといえる。→ 本件規定の適用や安全配慮義務の前提となる実質的な使用関係を否定するものではない。→ AはYの従業員であったと認めた。
② Yの従業員は、本件規定に基づき、災害補償金の支払い請求権を取得するか、取得するとして、その金額はいくらか :(Yの従業員が交通事故により死傷などした場合)一括して単一の保険契約で付保する保険 → 死亡保険金だけでなく、後遺障害保険金および入院保険金などについてもYに支払われるもの → 団体定期保険以上に濫用などの危険性を包含するもの → これを無制限に認めると賭博的契約が行われたり、保険金目当ての犯罪を誘発する危険性がある。→ 団体定期保険以上に弊害を有する。(商法674条の準用)→「団体定期保険の沿革、趣旨、目的にその濫用の防止、弊害の防止のために運用の改善を行ってきた経緯に鑑みると」(個々の被保険者の同意がない場合)→ 保険契約者が災害補償制度を創設し、従業員に対する災害補償金の支払い原資に充てるために従業員を被保険者として保険契約を締結する場合 → 被保険者となる従業員やその遺族の利益にもなる。→ 個々の従業員が被保険者となることに同意しているものと合理的に推認されるだけでなく → 経営者による従業員に対する同意の押しつけや、安易な同意などによる同意主義の濫用の防止にも寄与(他方)→ 個々の従業員の同意を得ることは事実上困難 → 災害補償規定を保険会社に差し入れれば、前記約款などの趣旨は実質的に満たされているもの → 保険契約は有効(災害補償金の額)→ 本件規定における死亡補償金5,000万円の定めは、Yから死亡した従業員の遺族に支払う死亡補償金の上限を定めたものと解する。(災害補償金の具体的金額)→ 諸般の事情を考慮した社会的相当額と定めていた。→ YがXに支払うべき災害補償金を3,000万円と認めた。
商法674条1項 :「他人の死亡の保険契約」であれば、原則として被保険者の同意を要する。通説は、同意は契約成立の条件ではなくその効力発生のための要件と解する。したがって同意がない限り保険契約は効力を要しない。この規定の趣旨は、先ほど述べた、①保険契約を賭博的目的に使用されることの防止と②モラル・リスクが生じるのを防ぐこと、③他人を勝手に被保険者にするのはその人の人格権侵害となるからである。団体定期保険も「他人の死亡の保険」である以上は、商法674条1項の適用を受け被保険者たる従業員の同意は必要であり、同意がない場合には保険契約は無効となる。
③ 損害賠償請求に関して
(ア) YによるAに対する直接の指揮監督関係はあったか :争点①の通り
(イ) 本件事故の事故原因 :Aの疲労による居眠り運転である。
(ウ) Yの安全配慮義務違反の有無 :Aは激務により相当疲労していたと認められる。→ Yは、貨物自動車運送事業者として雇用する運転手が自動車の運転という高度な「注意義務に応じた集中力を維持したうえで業務に従事できるよう就労環境を整えるべき労働契約上の注意義務を負っている。」→ Aに疲労運転をさせないよう配慮する労働契約上の義務があったにもかかわらず、Aの勤務状態をかなり過重なまま放置したと認めざるを得ない。→ 安全配慮義務違反の過失
(エ) 損害額 :Aは本件事故時シートベルトをしていなかった。(過失相殺割合を2割)→ Xが給付された労災補償を控除した結果、損害残額は3,474万余円
子供の表情を見るだけで、結構面白かったです。
今回の判例は、災害補償規定を作成して契約した任意の傷害保険の有効性を判断した判例です。
私のように、保険の代理店もしている人間については、かなり重要な判例であり、災害補償規定を作成した保険契約をするときは、本当に考えながら行わないと、取り返しのつかないものになると思いました。
(事件概要)
被控訴人Yの親方制度のもとで子方としてトラックの運転手をしていたAが、トラック運転中の交通事故によって死亡 → Aの妻である控訴人Xが、Aの使用者はYであるとして、Yに対し、YがAを被保険者とする交通事故傷害保険契約に基づいて取得した保険金に相当する額の弔慰金を求めた。
交通事故 :同年4月26日、高速道路をトラックで走行中に大型トレーラーに追突 → 自車進行方向の車外に投げ出され、自車後輪に頭部をひかれ、頭部打撲により死亡
交通事故傷害保険契約 :平成7年11月10日に訴外保険会社Nとの間で、本件契約を締結 → Nに対し、添付書類として、「災害補償規程」と記載された文書を差し入れ(この差し入れがあったことにより)→ Nは本件契約についての被保険者らの同意があったものとして、本件契約を締結(本件契約の約款)→ 締結の際、その者の同意を得なかったときは、本件契約は無効とする旨の規定(平成8年3月9日)→ Nとの間で、Aを本件契約の被保険者に追加する旨の合意(同年10月2日)→ Nは、Yに対し、Aの死亡による本件契約による保険金5,000万円を支払った。→ Yは、本件規定の存在を従業員や親方・子方に告知したことはなく、Xが本件契約の存在を知ったのも、本件事故後
Yでの運転手 :Yが仕事を発注ないし依頼する「親方」→ 親方の下で運転手として働く「子方」および純粋の従業員とに区分(平成8年1月22日)→ Aは、親方である訴外Sの子方として、Yの業務に関するトラックの運転手として働いていた。
<弔慰金>
① 主位的にはYの制定した災害補償規程に基づく。
② 予備的には、第三者のためにする契約に基づき、Xに支払う義務があると主張 → 災害補償金5,000万円等の支払いを求める。
③ YがAに過重労働をさせたという安全配慮義務違反に基づく損害賠償金を支払う義務がある。→ 同損害賠償金500万円等の支払いを求めた。
(考察)
<争点>
① Aは、Yの従業員といえるか :直接間接の指揮監督関係があったといえる。→ 本件規定の適用や安全配慮義務の前提となる実質的な使用関係を否定するものではない。→ AはYの従業員であったと認めた。
② Yの従業員は、本件規定に基づき、災害補償金の支払い請求権を取得するか、取得するとして、その金額はいくらか :(Yの従業員が交通事故により死傷などした場合)一括して単一の保険契約で付保する保険 → 死亡保険金だけでなく、後遺障害保険金および入院保険金などについてもYに支払われるもの → 団体定期保険以上に濫用などの危険性を包含するもの → これを無制限に認めると賭博的契約が行われたり、保険金目当ての犯罪を誘発する危険性がある。→ 団体定期保険以上に弊害を有する。(商法674条の準用)→「団体定期保険の沿革、趣旨、目的にその濫用の防止、弊害の防止のために運用の改善を行ってきた経緯に鑑みると」(個々の被保険者の同意がない場合)→ 保険契約者が災害補償制度を創設し、従業員に対する災害補償金の支払い原資に充てるために従業員を被保険者として保険契約を締結する場合 → 被保険者となる従業員やその遺族の利益にもなる。→ 個々の従業員が被保険者となることに同意しているものと合理的に推認されるだけでなく → 経営者による従業員に対する同意の押しつけや、安易な同意などによる同意主義の濫用の防止にも寄与(他方)→ 個々の従業員の同意を得ることは事実上困難 → 災害補償規定を保険会社に差し入れれば、前記約款などの趣旨は実質的に満たされているもの → 保険契約は有効(災害補償金の額)→ 本件規定における死亡補償金5,000万円の定めは、Yから死亡した従業員の遺族に支払う死亡補償金の上限を定めたものと解する。(災害補償金の具体的金額)→ 諸般の事情を考慮した社会的相当額と定めていた。→ YがXに支払うべき災害補償金を3,000万円と認めた。
商法674条1項 :「他人の死亡の保険契約」であれば、原則として被保険者の同意を要する。通説は、同意は契約成立の条件ではなくその効力発生のための要件と解する。したがって同意がない限り保険契約は効力を要しない。この規定の趣旨は、先ほど述べた、①保険契約を賭博的目的に使用されることの防止と②モラル・リスクが生じるのを防ぐこと、③他人を勝手に被保険者にするのはその人の人格権侵害となるからである。団体定期保険も「他人の死亡の保険」である以上は、商法674条1項の適用を受け被保険者たる従業員の同意は必要であり、同意がない場合には保険契約は無効となる。
③ 損害賠償請求に関して
(ア) YによるAに対する直接の指揮監督関係はあったか :争点①の通り
(イ) 本件事故の事故原因 :Aの疲労による居眠り運転である。
(ウ) Yの安全配慮義務違反の有無 :Aは激務により相当疲労していたと認められる。→ Yは、貨物自動車運送事業者として雇用する運転手が自動車の運転という高度な「注意義務に応じた集中力を維持したうえで業務に従事できるよう就労環境を整えるべき労働契約上の注意義務を負っている。」→ Aに疲労運転をさせないよう配慮する労働契約上の義務があったにもかかわらず、Aの勤務状態をかなり過重なまま放置したと認めざるを得ない。→ 安全配慮義務違反の過失
(エ) 損害額 :Aは本件事故時シートベルトをしていなかった。(過失相殺割合を2割)→ Xが給付された労災補償を控除した結果、損害残額は3,474万余円
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