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労基法3条違反

平成24年6月17日、子供が早く寝たので、もう一つ判例を読んでみました。
判例は、次の通りです。
中国人研修・技能実習生として働いているものに対して、賃金の支払いに関する訴えについて、最低賃金法で争っています。
これについては、いつもと変わらない結論であると思われますが、日本人従業員との賃金の違いについては、明確な結論が導かれていると思います。


(事件概要)

原告A・B・C・D・E(以下「Xら」)は、いずれも中国国籍の男性(平成19年6月25日)→ 外国人研修・技能実習制度に基づいて、第1次受入期間であるエヌ・ビー・シー協同組合(以下、「NBC」)を通じて来日(同年7月10日)→ 鋼材の加工および販売を主たる目的とする被告Y社の事業所で業務に従事(来日後)→ NBCの研修センターでの日本語教育、Yでの会社概要の説明や儀礼・態度の訓練などを受けた。(19年7月17日)→ 東松山工場内で実際の鉄筋加工の作業を開始(研修期間中)→ 工場において実際の作業を実施する中で、指導役の日本人授業員がXらに対し作業手順や注意事項、儀礼などを指導 → 座学などの非実務研修は行われなかった。

外国人研修・技能実習制度 :日本での滞在期間3年(1年目)→ 労働者ではない「研修生」として実習研修だけでなく、日本語、技術についての非実務研修を研修期間全体の3分の1以上行うこととされている。(2,3年目)→ 労働者である「技能実習生」として技能実習が行われる。(しかし)→ 業務・職種の範囲は法令で限定されている。

作業 :勤務カレンダー通りの勤務(時間外職務や休日職務はなかった。)→ 研修期間中、YがXらに支払った研修手当の額は、月額6万円(食事代含む)→ 技能実習期間、日本従業員と大きく異なるものではない。(勤務日や勤務時間)→ 時間外勤務や休日勤務も含め日本人従業員と異ならなかった。(技能実習期間)→ 月額12万2,000円、時間外勤務手当や休日勤務手当の額は、多い月では7万円を超えることも少なくなかった。

日本人従業員の賃金 :平成19年から21年におけるYの高卒初任給は16万5,000円(格差)→ 月額4万3,000円


<本訴事件>
XらはYの寮に居住(技能実習期間中)→ YはXらの賃金から住宅費・水道光熱費を控除 → 賃金控除についての労使協定が存在しない。→ 上記控除は労基法24条1項に反し無効

Yは、Xらの意思に反してパスポートおよび通帳を取り上げ、不快な漫画の提示などのセクシュアルハラスメントや人種差別的言動をする等の不法行為

<反訴事件>
Xらが平成22年6月24日退去するまでYの寮に居住(同年1月12日以降)→ 就業していなかった。→ Yが住宅費・水道光熱費および社会保険料を賃金から控除することが出来なかった。(これらの支払いを求めるとともに)→ 不法行為に基づき、Xらの退去時に要した粗大ごみの撤去費用などと同額の損害賠償を求めた。


(考察)

公序良俗 :研修契約および技能実習契約中、賃金に関する意思表示は、強迫によるものとは認められない。(Xが来日を決意した理由)→ 3年間日本に行って働けば少なくとも220万円を手にして帰国できる。→ 脅迫取り消し及び公序良俗違反の主張を退けた。

労基法3条違反 :制度の特質に基づく合理的な差であると認められれば、労基法3条の解釈上、当該格差は許容される。→ Xらが必ずしも十分な日本語能力を有せず。→ 完全に同等の業務遂行能力を有していたとは認めがたい。(有形無形の負担)→ YはXらを受け入れるために、3年間で、一人当たり約180万円の費用を負担している。(約74%という格差)→ 合理的な範囲内にあると解することが出来る。

労基法3条 :使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

最低賃金法 :法形式の如何にかかわらず、その実態が使用者の指揮監督の下における労務の提供と評価するにふさわしいものであるかによって判断(研修期間中)→ 労基法9条および最低賃金法2条1号の「労働者」にあたる。→ 最低賃金との差額につき、「一人当たり73万5,096円の未払い賃金請求権を有する」

労基法24条1項違反 :Yには、住宅費・水道光熱費を賃金から控除 → 労働者代表との間で書面による協定がある。→ 違反しない。

住宅費・水道光熱費の日本人従業員との格差 :福利厚生として平等に利用料を負担させるべき → Xらに過大な寮費を科すことにより最低賃金を潜脱することにもなりかねない。→ 従業員の負担額である1万円を超える額を控除する旨の合意は、労基法3条に違反 → 1万円を超える部分に相当する額について賃金請求権を有する。

慰謝料 :パスポートおよび通帳の保管およびセクシュアルハラスメントの点(不法行為に該当)→ 慰謝料および弁護士費用の請求を認容 → 原告Eについて45万円、その余のXらについて各40万円

寮費や社会保険料立替金、粗大ごみの撤去費用等 :一部を除き、Xらは、Yに対して支払い義務がある。
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