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試用期間中の解雇

平成24年6月28日、この頃は、一人親方や、下請を使用して仕事をしている工務店などでも、事故が気になったり、元請けからの指導の下で、労災保険の加入数が増えているように思います。

私でも、この頃だけで4件の労災新規手続きを行いました。

さて、今回の判例は、試用期間中の解雇についてです。
私の認識では、学卒者の試用期間中の解雇は、皆無に等しいという考えでしたが、この判例では、途中解雇が認められていることに驚きと、教養を広めることが出来たという喜びを感じております。



(事件概要)

Xは、平成20年4月から新卒者(試用期間6か月)として勤務(試用期間中の同年7月29日)→ 技術社員としての資質や能力などの適格性に問題があるとして、同月31日付の解雇の意思表示を受けた。→ 解雇権の濫用に当たり無効であると主張(判決)→ 試用期間開始から4か月弱経過したところで、繰り返し行われた指導による改善の程度が期待を下回るだけでなく、睡眠不足については改善とは言えない状況(研修に臨む姿勢)→ 疑問を抱かさせるもの → 今後指導を継続しても、能力を飛躍的に向上させ、技術社員として必要な程度の能力を身に着ける見込みも立たなかったと評価されてもやむを得ない状態(Xの認識・Yの努力)→ 解雇回避義務違反、手続き違反というXの主張を退けた。→ 本件解雇の相当性を認め、Xの控訴を棄却

1. 就業規則 :平成20年4月1日付で変更(改正前)→ 就業規則7条は「新たに採用する職員には、原則として6か月間の見習い期間を設ける。見習期間中は、会社はいつでも採用を取り消すことが出来る。」(改正後)→ 規定8条には「見習い期間中の途中又は終了時に、能力、勤務態度、健康状態などに関して不適当と認められるものについては、定められた手続きによって解雇する。」

2. Xの研修時 :入社当初の平成20年4月からの全体研修において、本人や周囲の者の身体や安全に対する危険を有する行為を3件行い指導員から注意を受けた。
<その他>
① 研修日誌の提出期限を守れないことが多く、時間意識に薄く門限を破るとか消灯時間を守れないことが複数
② 寝坊して玉掛研修を受講できなかった。
③ 作業中に居眠りするなど睡眠不足から事故を起こす懸念を指導員から指摘

機械研修 :同年7月24日のスクイズポンプ操作に当たり、ショートを起こした。(加えて)→ 指導員から、パーツ表の確認不足、睡眠不足、集中力欠如を何度も指摘 → 事前の段取りを怠ったり、作業に必要でないことにこだわったり、指導員に聞くことなく、事故の判断で行ったことで手戻りが多い。→ 想定されている時間より時間を要することが多かった。→ Yは、本来の予定であれば機械研修を終えて実施研修に移行すべき時を超えて機械研修を受けていた。

3. 解雇経緯 :Xの時間に対する意識や規則を守るべきとの意識について疑問を抱く。(改善の可能性について難しいと判断)→ 技術社員としての適格性を有しないとして、試用期間中の平成20年7月20日前後頃、Xとの雇用契約を解消(自主退職を促し、それが受け入れられない場合には解雇)→ 同月24日にXの母親と面談 → 試用期間中は自由に解雇できる旨の話をした。(同月29日)→ YのE部長は、I部長、D部長と共にXと面談 → 7月末日をもって退職してもらうことになったが、自主退職を選択するか、解雇を選択するかを問う。(解雇理由)→ 自分から辞めることは出来ないので、納得するまで考えさせてほしい、退職願は自分では出さない旨の返答
<解雇理由>
① 睡眠不足で集中力を欠くことが多い。→ 指導員が注意したが改めることがない。→ 現場に行ったときにけがをする危険性が高い。
② 改正前の就業規則を示して、現時点では見習いで、正式な社員ではない。
③ 研修中、門限を破ったり、やることをやったうえで外出すべきところをそうしなかった等

4. 試用期間中の解約権の留保 :採否決定の当初においては、その者の資質、性格、能力その他適格性の有無に関連する事項について必要な調査を行い、適切な判定資料を十分に蒐集することが出来ない。→ 後日における調査や観察に基づく最終決定を留保する趣旨でされるものと解される。→ 今日における雇用の実情に鑑みるときは、一定の合理的期間の限定の下にこのような留保約款を設けることも、合理性を有するものとしてその効力を肯定できる。(留保解約権に基づく解雇)→ 通常の解雇と全く同一に論ずることは出来ない。→ 前者については、後者の場合よりも広い範囲における解雇の事由が認められてしかるべきものと言わなければならない。

5. Xの認識・Yの努力 :改善の必要性を十分認識 → 必要な努力をする機会を十分与えられていた。→ Yとしても本採用すべく十分な指導、教育を行っていた。→ Yが解雇回避の努力を怠っていたとは言えないし、改めて告知・聴聞の機会を与える必要もない。
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