期間途中の解雇の有効性
平成24年7月1日、今年も半年が過ぎてしまいました。本当に一年が年々早くなる気がします。
明日からは算定基礎届の提出も始まり、バタバタ日々が続きますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
バタバタですが、ミスをしないようにもう一度気持ちを入れ替えて頑張ろうと思います。
さて、本日の判例ですが、管理監督者に対する解雇の有効性です。
細かい内容はございますが、大まかな内容は従業員に対する場合と変わりはありません。
(事件概要)
Xは、Y1によるAの塾長の公募に応じ、平成21年4月付で塾長に採用 → 学校法人東奥義塾Y1が設置するA高校の塾長であったXが、塾長を解職されたことを争い、Y1に対し、塾長としての労働契約上の地位の確認並びに塾長としての賃金などの支払いを求めた。
1. 労働契約 :その期間が21年4月1日から25年3月31日までの4年間(賃金)→ 給料月額50万200円、管理職手当月額4万円、住居手当月額2万6,000円、賞与は期末手当57万228円、勤勉手当130万520円、入試手当16万5,060円(就任後)→ 運営方針などに関してY1理事会とたびたび衝突(A構内)→ 東奥義塾同窓会事業部がY1から委託を受けて設置していたコカコーラなどの炭酸飲料の自動販売機の撤去などを求めて同事業部と対立 → 張り紙を張るなどの行為を行った。
2. 解雇通知 :平成22年3月12日のY1理事会において、Y2はXを解雇する旨の緊急動議を提出(可決)→ Y1は翌13日付でXを解職する旨の解職通知 → 解職予告手当(50万200円)を支払った。(同年3月19日)→ Xは解職処分の理由を明らかにするように求めた。
(考察)
<解職理由>
Y1は、XがY1の理事会を非難し、A、生徒及び教員を誹謗し、寄付行為に違反した行動や塾長としての品位に欠ける行動をとることにより、A内の秩序を乱したとの理由でXを解職した旨通知(判決)→ これまで何らの処分歴のないXに対して、より具体的かつ丁寧な指導や教示を十分に行うこともないまま、いきなり最も重い解雇という手段を選択したのは処分としては重すぎるもの → Xが塾長という管理職及び専門職労働者として中途採用されたものであることを考慮しても、本件のような有期契約労働者の期間途中の解雇に必要な法17条1項に定める「やむを得ない事由がある」とまではいえない。
<Xの言動>
(i) Xには、教職員や生徒らといった対内的な問題だけでなく対外的にも、塾長の言動としての相当性や謙虚さに欠ける面があったことは否定できない。(しかし)→ 表現方法に問題があったとはいえ、XなりにAの生徒の健康や教育、交換留学生の留学内容の充実などを図り、また、これまで欠席する教員が多かった職員会議を全員出席させるようにするといった改善を行っている。(職員会議において解職処分に対する反対決議がなされた。)→ 教職員らの信頼もある程度得ていた様子が窺える。
① XがAの卒業祝賀会において「落ちこぼれ」「 停学くらった」等の発言を行ったこと → 父兄の労苦をねぎらうなどの意図でなされたものと認められる。→ 極めて不適切とはいえない。
② 同校の卒業生のうち青森県内における企業の社長経験者で構成される団体の定時総会において、知能が低い生徒がいる、同校の教員らは外界の知識に乏しいといった趣旨の発言をしたこと
③ Xが炭酸飲料水の自動販売機の撤去などを求めて張り紙を張り、これが問題となった際に、学校組織の長である塾長としていささか配慮に欠ける言動があったこと → Aの生徒の健康を図る目的
④ Aの礼拝説教において、Y1の外部団体が自動販売機排除に関連してXを排除する計画を立てている旨の発言したこと等 → Xが、Aから排除される懸念を抱いたことによりなされたものとも推測(その後)→ 実際に本件解雇処分が行われたことも踏まえると、いずれもきわめて不適切とはいえない。
(ii) Xの採用から本件解職処分に至るまでの経緯に鑑みれば、Y2をはじめ多くの理事らは、塾長としてのXに対し、対外的にはAのよき広告塔となり、また、理事長や理事会の意向に従い(教職員側をまとめ上げた上で理事会側と対立する場合)→ 理事長や理事会の意向に沿うよう教職員に納得させ(他方)→ Aのこれまでの慣習や伝統、教育体制などに内在する改善点を指摘し、改革していく能力を期待していたように見受けられる。(ところで)→ 一般的にこのような期待に応えるためには相当の能力や期間が必要(本件)→ Y2をはじめ理事会がXに期待する職務内容や限度について具体的に教示していたとは未だ認めがたい。(そして)→ Xには、そもそも管理職経験はおろか国内における一般的な教職経験も有しておらず、Y2をはじめとする理事会もこれを承知であえて採用した。
(iii) Xの塾長としての活動により、職員会議への職員の出席率が向上 → 学制の態度に良好な変化があったと認められる。(4年の任期の初年度において)→ 塾長として一定の成果を出していた。→ 教職員らからの一定の信頼を得ていた。
3. 解雇の有効性 :法17条1項にいうやむを得ない事由があったとは認められない。→ 地位確認請求及び賃金などの支払い請求を認めた。
法17条1項 :やむを得ない事由 → 客観的に合理的な理由及び社会通念上相当である事情に加えて、当該雇用を終了させざるを得ない特段の事情と解するのが相当(Xの言動)→ 概ね一審の認定を踏襲したうえで、理事会への批判、塾友会の定時総会における発言などは「不適切とはいえ」ず、「やむを得ない事由の有無を検討するうえで、考慮することは出来ない。」
4. 不法行為の成否 :Xの言動にも不当なものやいささか配慮に欠けるとみられるもの → 本件解職処分当時、法17条1項にいう「やむを得ない事由」が存在しないことが明らかであったとまでは言い難い。
明日からは算定基礎届の提出も始まり、バタバタ日々が続きますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
バタバタですが、ミスをしないようにもう一度気持ちを入れ替えて頑張ろうと思います。
さて、本日の判例ですが、管理監督者に対する解雇の有効性です。
細かい内容はございますが、大まかな内容は従業員に対する場合と変わりはありません。
(事件概要)
Xは、Y1によるAの塾長の公募に応じ、平成21年4月付で塾長に採用 → 学校法人東奥義塾Y1が設置するA高校の塾長であったXが、塾長を解職されたことを争い、Y1に対し、塾長としての労働契約上の地位の確認並びに塾長としての賃金などの支払いを求めた。
1. 労働契約 :その期間が21年4月1日から25年3月31日までの4年間(賃金)→ 給料月額50万200円、管理職手当月額4万円、住居手当月額2万6,000円、賞与は期末手当57万228円、勤勉手当130万520円、入試手当16万5,060円(就任後)→ 運営方針などに関してY1理事会とたびたび衝突(A構内)→ 東奥義塾同窓会事業部がY1から委託を受けて設置していたコカコーラなどの炭酸飲料の自動販売機の撤去などを求めて同事業部と対立 → 張り紙を張るなどの行為を行った。
2. 解雇通知 :平成22年3月12日のY1理事会において、Y2はXを解雇する旨の緊急動議を提出(可決)→ Y1は翌13日付でXを解職する旨の解職通知 → 解職予告手当(50万200円)を支払った。(同年3月19日)→ Xは解職処分の理由を明らかにするように求めた。
(考察)
<解職理由>
Y1は、XがY1の理事会を非難し、A、生徒及び教員を誹謗し、寄付行為に違反した行動や塾長としての品位に欠ける行動をとることにより、A内の秩序を乱したとの理由でXを解職した旨通知(判決)→ これまで何らの処分歴のないXに対して、より具体的かつ丁寧な指導や教示を十分に行うこともないまま、いきなり最も重い解雇という手段を選択したのは処分としては重すぎるもの → Xが塾長という管理職及び専門職労働者として中途採用されたものであることを考慮しても、本件のような有期契約労働者の期間途中の解雇に必要な法17条1項に定める「やむを得ない事由がある」とまではいえない。
<Xの言動>
(i) Xには、教職員や生徒らといった対内的な問題だけでなく対外的にも、塾長の言動としての相当性や謙虚さに欠ける面があったことは否定できない。(しかし)→ 表現方法に問題があったとはいえ、XなりにAの生徒の健康や教育、交換留学生の留学内容の充実などを図り、また、これまで欠席する教員が多かった職員会議を全員出席させるようにするといった改善を行っている。(職員会議において解職処分に対する反対決議がなされた。)→ 教職員らの信頼もある程度得ていた様子が窺える。
① XがAの卒業祝賀会において「落ちこぼれ」「 停学くらった」等の発言を行ったこと → 父兄の労苦をねぎらうなどの意図でなされたものと認められる。→ 極めて不適切とはいえない。
② 同校の卒業生のうち青森県内における企業の社長経験者で構成される団体の定時総会において、知能が低い生徒がいる、同校の教員らは外界の知識に乏しいといった趣旨の発言をしたこと
③ Xが炭酸飲料水の自動販売機の撤去などを求めて張り紙を張り、これが問題となった際に、学校組織の長である塾長としていささか配慮に欠ける言動があったこと → Aの生徒の健康を図る目的
④ Aの礼拝説教において、Y1の外部団体が自動販売機排除に関連してXを排除する計画を立てている旨の発言したこと等 → Xが、Aから排除される懸念を抱いたことによりなされたものとも推測(その後)→ 実際に本件解雇処分が行われたことも踏まえると、いずれもきわめて不適切とはいえない。
(ii) Xの採用から本件解職処分に至るまでの経緯に鑑みれば、Y2をはじめ多くの理事らは、塾長としてのXに対し、対外的にはAのよき広告塔となり、また、理事長や理事会の意向に従い(教職員側をまとめ上げた上で理事会側と対立する場合)→ 理事長や理事会の意向に沿うよう教職員に納得させ(他方)→ Aのこれまでの慣習や伝統、教育体制などに内在する改善点を指摘し、改革していく能力を期待していたように見受けられる。(ところで)→ 一般的にこのような期待に応えるためには相当の能力や期間が必要(本件)→ Y2をはじめ理事会がXに期待する職務内容や限度について具体的に教示していたとは未だ認めがたい。(そして)→ Xには、そもそも管理職経験はおろか国内における一般的な教職経験も有しておらず、Y2をはじめとする理事会もこれを承知であえて採用した。
(iii) Xの塾長としての活動により、職員会議への職員の出席率が向上 → 学制の態度に良好な変化があったと認められる。(4年の任期の初年度において)→ 塾長として一定の成果を出していた。→ 教職員らからの一定の信頼を得ていた。
3. 解雇の有効性 :法17条1項にいうやむを得ない事由があったとは認められない。→ 地位確認請求及び賃金などの支払い請求を認めた。
法17条1項 :やむを得ない事由 → 客観的に合理的な理由及び社会通念上相当である事情に加えて、当該雇用を終了させざるを得ない特段の事情と解するのが相当(Xの言動)→ 概ね一審の認定を踏襲したうえで、理事会への批判、塾友会の定時総会における発言などは「不適切とはいえ」ず、「やむを得ない事由の有無を検討するうえで、考慮することは出来ない。」
4. 不法行為の成否 :Xの言動にも不当なものやいささか配慮に欠けるとみられるもの → 本件解職処分当時、法17条1項にいう「やむを得ない事由」が存在しないことが明らかであったとまでは言い難い。
スポンサーサイト