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休職期間満了による退職の適法性と課長職への確認

平成24年8月4日、本日もすごく暑い日でした。

こんな日はなぜかカレーが食べたくなり、家の近くにできたインドカレーにて昼食を食べました。

久々のナンは美味しくて食べ過ぎましたところ、現在辛い物を食べすぎたせいか、お腹を下しております。

さて、本日の判例は、休職期間満了による退職が適法かどうかです。

就業規則でも唱っている休職ですが、今回のように安全配慮義務違反が認められた場合には、解雇制限がかかるため、退職は難しいようです。

また、昇給に関する訴えもありましたが、こちらは裁量の逸脱がない限り、使用者側に裁量が認められるようです。



(事件概要)

平成14年7月4日、Xは突然めまいに襲われ、Yを欠勤 → 自律神経失調症と診断(大病院の神経科精神科)→ うつ病と診断(同年8月頃)→ 休養加療が必要と診断 → 退職通知を受けた時点においても同病状は完治せず継続加療を要する状態 → Xは、未消化振替休日、年休(40日)、復活年休(50日)、有給の欠勤(10か月)(平成15年9月28日)→ Y就業規則33条に基づき24か月の休職扱い(平成17年7月25日)→ Xに対し同年9月27日をもって休職期間が満了 → 就業規則39条4号により退職となる旨を通知(Yは休職期間を同年10月31日までとする取り扱いを行った。)→ Xは同年10月31日をもって退職したとの取扱い(労災保険の給付申請)→ 認定し、療養・休業補償給付の支給決定(平成19年12月7日)→ 本件退職取り扱いは無効であるとして訴えを提起

(i) 労働契約上の権利を有する地位にあることの確認(仕事内容)→ Xが担当していた業務とXが発症したうつ病との間に相当因果関係を認め、労基法19条1項の類推適用により本件退職取り扱いは無効であるとの判断

 労基法19条1項 (解雇制限) :使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第81条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。

(ii) 課長の職位にあることの確認(仮に精神疾患を発症せずに勤務を継続していたならば19年2月には課長に昇格していたと主張)→ 課長職に就けるか否かは使用者であるYの裁量判断にゆだねられているもの → XがYに対して、課長職での就労請求権を有しているとは解しがたいとして請求が却下

(iii) 未払い賃金の支払い(ⅰ)→ 請求権を認める。

(iv) 安全配慮義務違反に基づく損害賠償の支払い →「一般的に、使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷などが過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負っている」→ Xの上司はXが毎日午後9時ころまで仕事をしていたことを認識していた。→ YはXの時間外労働時間が長時間に及んでいることを十分に把握できた。→ Xからの人員補充要請に対しYが真摯に対応していたことは窺えない。→ Yは、Xの本件精神疾患の発症について、当該業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷などが過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なわないよう注意すべき義務を怠ったといわざるを得ない。→ Yの安全配慮義務違反が認められた。(慰謝料)→ 200万円、弁護士費用として60万円

(v) 損害額 :以下の通り(消滅時効)→ 提起された平成19年12月7日前の17年11月25日支給以前の分については請求権の消滅

 損害額 :労災保険法に基づく休業補償給付の給付基礎日額をもとに算定を求めた。(しかし)→ 同金額は、本件精神疾患発症前3か月間の時間外労働賃金を含んだ金額 → Xが、発症後においても発症前と同程度の時間外労働を含めた就労が可能であったとは認めがたい。→ 基本給+調整給により算定

 賞与の請求 :利率連動率や出勤率など、個別具体的な支給額の算定要素に関する規定も存在 → 賞与について明確かつ具体的な支給額があらかじめ確定し、労働契約の内容になっているとまでは認められないとして請求が棄却

 退職金 :制度移行時点におけるXの退職金相当額は334万4,800円 - 厚生年金基金が解散したことに伴いXに対しては331万9,355円の清算金 = 差額25,395円の請求が認められた。(在籍すれば得られたであろう企業年金拠出金)→ 月額24,248円および29,590円についても請求が認められた。

 賃貸借契約 :平成17年11月30日をもって解約(居住の継続)→ Xは自ら家主との賃貸借契約を締結 → 駐車場使用料と上水道使用料が改定された新たな賃貸借契約を締結 → 従前Xが負担していた社宅使用料等(月額26,716円)と新たな契約での家賃等(月額72,500円)との差額(月額45,784円)ならびに契約締結時に支払った保証金(30万円についても損害と認めた。)

(vi) 休業手当請求にかかる付加金の支払い


(考察)

1. 仕事内容 :平成14年4月からXは西コールセンター課に配属(破産・弁護士介入債権案件係(以下、「破弁係」))→ クレジット債権の管理・回収業務のうち、自己破産、債務者方への弁護士介入案件について、調停・和解等を相手方弁護士と行う業務(加えて)→ 別の部署への債権の引継ぎ・移管作業 → 自動移管(3か月を超えて滞納があったもの)が月に1,000件、マニュアル移管が月に500件、処理後の残件数は約2,000件程度存在 → 業務量に対して破弁係の人員が少なかった。→ 移管作業は負担が大きな業務(このような状況の中)→ 本来の業務である申請後の決済申請書等の整理、調停調書の点検などの業務はたまる一方(さらに)→ Xは、社外から届くすべての郵便物を担当者へ配布したり、社内の各部署から届く各種書類などの仕分けをしたりする総務的な業務も担当(aからdの事実認定)→ Yの人員削減によって「Xが担当していた業務量が増大し、Xの時間外労働時間も長時間に及ぶなど、Xの業務量については、量的にも質的にも過重であった」→ 「Xの甲状腺悪性腫瘍が本件精神疾患の発症について多少なりとも寄与したことが窺われるものの、その主たる原因としては、質的にも量的にも過重性を有するXの業務にあると推認するのが相当である」
(a) Yの大幅な組織改編によりXの業務量は従前よりも増大
(b) Xは係長や課長に対して窮状を訴えて増員の要請をしたものの受け入れてもらえなかった。
(c) 上限として指示された時間外労働時間では業務を処理することが出来ないので上限を引き上げるよう上司に頼んだが拒否されなかった。
(d) 平成14年6月に、Xが担当していた未収債権について未処理のものが大量に発見 → 担当課長から叱責を受けていた。

2. 労働時間 :午前9時30分から午後5時45分(休憩時間12時から12時50分)→ 1日の所定労働時間は7時間25分(しかし)→ 管理センターグループでは毎朝午前7時50分頃から朝礼、Xはこれに出席 → Y社では、従業員が自ら勤務管理簿に勤怠について記載するという労働時間の管理 → Yは従業員の残業時間について上限時間を設けた。(これを超える残業)→ 残業時間扱いとしない。(勤務管理簿)→ 実態を反映したものであるとは認められない。(平成14年4月の異動から本件発症に至るまでの期間)→ 朝礼が始まる10分前の午前7時40分頃には出勤 → 連続とはいえないものの、夜は午後10時あるいは午後11時過ぎまで残業


参考文献
マナック事件<付・原審>
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