就業規則の不利益変更(規程休日の削除)
平成24年10月29日、今日は次回のセミナーの打ち合わせをして参りました。
内容としましては、「労働災害による会社への損害賠償とその額」「社会保険料の控除」「助成金の使用方法」の3点です。
今後、セミナーの日時が決定しましたら、またお話をさせて頂きます。
さて、今回の判例は、就業規則に記載されている休日を経費削減策として4日削除することが、妥当かを争った内容となります。
いつもと同様に次の4点が求められ、結果としては、合理性なしと判断されています。
①話し合い・説明
②必要性
③不利益の程度
④代償措置
11月にも出張勉強会を開催させて頂きます。
内容は、労働トラブルや経費の削減を中心に行っております。
詳細・申込はコチラ → http://www.nakamine-office.com/1211_seminar.pdf
(事件概要)APAC経費削減施策 → Y社は、平成21年4月28日に行われた本件組合との団体交渉の席で、上記休日のうち「5月1日、12月25日、12月30日および社員の誕生日」の4日間の廃止などの経費削減策を行う旨を発表 → 同施策により1億5,400万円の経費削減が見込まれる 旨を口頭で説明(本件組合)→ Yに対し、資料の配布もない口頭での説明に留まることに抗議 → 経営状況に関する資料や根拠となる具体的な数字の提出を求めた。(しかし)→ Yからは上記数字しか発表できない旨の回答(平成21年5月14日)→ 従業員代表に対し、本件会社休日を廃止する就業規則の変更について説明 → 同年に入り輸出が5割減、輸入が2ないし3割減のために、さらなる経費削減が必要 → 本件会社休日の削減で中・長期的に安定した労働環境を保ち、他社との競争力を保つことが必要であることなどを説明 → Yは、同月20日には成田地区で、同月21日には関西空港で、同月25日には再び成田地区で、各日2回ずつ、「レッツ・トーク・ミーティング」を行い、延110名の従業員が参加(訴え)→ 会社の定める休日とされていた4日間を休日から削除した就業規則の変更には合理性がない。→ Yに対し、4日間を休日として行使できる地位にあることの確認を求めた。
1. 上記休日 :日本の祝日の他、「社員の誕生日、年末年始(12月30日、同月31日、1月2日、同月3日)、メーデー(5月1日)及びクリスマス(12月25日)」の7日間が休日と定められた。
2. 本件組合 :Xら(107名)は、Y日本支社のエアポート部門の業務に従事 → Yの日本支社の従業員で組織されるフェデラルエクスプレス日本支社労働組合に所属
3. APAC経費削減施策 :平成20年秋のリーマンショック以降の世界的な経済危機および21年度第2四半期における業績を踏まえて(21年1月)→ 役員及び取締役全員の同年2月1日付の基本給の恒久的5%削減要請 → 21暦年度における昇給停止、22年度末までの昇給停止策を内容とする。(平成21年4月)→ 役員および専門職全員の同年5月1日付の任意の基本給の恒久的5%削減要請、太平洋横断便の運航本数の減便、希望無給休暇制度の導入、海外駐在員などの本国帰国等の推進などを内容とする。
4. 争点 :本件就業規則変更は労働契約法10条所定の合理性の要件を満たすもの → XらとYとの間の労働条件が変更されたといえるか → 5つの観点から本件就業規則変更の合理性に検討を加えた。(①から④より)→ 本件就業規則変更は労働契約法10条所定の合理性の要件を満たすものとはいえない。→ Xらには、労働契約法10条による就業規則変更の拘束力は適用されず、Xらの労働契約の内容としては本件会社休日の4日間はいずれも休日のまま → Xらは本件会社休日を休日として行使することが出来る。
労働契約法10条 :使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。
① 合理性の有無につき、労働者の受ける不利益の程度 :本件就業規則変更により年間総労働日数が243日または244日 → 従業員の年間所定労働時間数は29時間程度増加 → これにより約2%の賃金カットと同様の効果が生じる。→ 土日祝日を除いた休日が7日から3日に減っている。(半数以上になっている。)→ 労働者の受ける不利益の程度は必ずしも小さいとはいえない。
② 労働条件の変更の必要性 :賃金カットと同様の効果を生じさせる本件就業規則変更は、「高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであることを要する」(一方)→ Yの業績は大幅に落ち込んでいる。→ Yにおいてこれに伴う経費削減施策を行う必要性があったことは認められる。(他方)→ 平成21年の後半以降は早い段階で回復傾向に転じている。→ 業績が落ち込んだとはいえ、未だ経営破綻に近い状況に至っているわけではない。(APAC経費削減施策に加えて)→ Yにおける独自の経費削減施策として本件会社休日の廃止を行う旨のYの判断はいささか性急すぎている感が否めず(就業規則変更)→ 上記不利益を労働者に法的に受任させることを正当化するまでの高度な必要性があるとは言い難いというべき
③ 変更後の就業規則の内容の相当性 :「代償措置その他関連するほかの労働条件の改善状況」および「同種時効に関する我が国社会における一般的状況」も引き続き考慮すべき(本件就業規則変更後)→ Yにおける年間休日日数は同規模、同業種の他社と比べて格別相当性を欠いているとはいえない。(少なくとも)→ 5月1日と12月30日については休日としている航空会社が過半数以上を占めている。→ 4日間のすべてを通常の労働日とすることについてはいささか相当とは言い難い。(代償措置)→ 変更後の就業規則の内容の相当性については当然に認められるというものではなく、相当性があるといえるのか疑問が残る。
代償措置 :なんも取られていない事などを指摘
④ 労働組合などとの交渉の状況 :「労働組合等」とは、多数組合、少数組合、過半数代表その他労働者を代表するもの等が広く含まれる。→ それらとの交渉状況全てが合理性の判断の際の考慮対象となると指摘 → それなりの具体的な資料を示したうえでの説明はなされていない。→ 本件就業規則変更について合理もなされていない。→ 意見を述べてもYがこれに対して十分な検討および対応をしていない。→ 十分に労使間の利益調整がなされた上で本件就業規則変更がなされたとは到底言い難い。(判決)→ 労働組合などとの合意がないことをもって直ちに合理性が否定されるというものではない。(しかし)→ 合理に至らなかった理由やその間の交渉状況などによっては合理性を否定する方向の一要素となる場合もある。
内容としましては、「労働災害による会社への損害賠償とその額」「社会保険料の控除」「助成金の使用方法」の3点です。
今後、セミナーの日時が決定しましたら、またお話をさせて頂きます。
さて、今回の判例は、就業規則に記載されている休日を経費削減策として4日削除することが、妥当かを争った内容となります。
いつもと同様に次の4点が求められ、結果としては、合理性なしと判断されています。
①話し合い・説明
②必要性
③不利益の程度
④代償措置
11月にも出張勉強会を開催させて頂きます。
内容は、労働トラブルや経費の削減を中心に行っております。
詳細・申込はコチラ → http://www.nakamine-office.com/1211_seminar.pdf
(事件概要)APAC経費削減施策 → Y社は、平成21年4月28日に行われた本件組合との団体交渉の席で、上記休日のうち「5月1日、12月25日、12月30日および社員の誕生日」の4日間の廃止などの経費削減策を行う旨を発表 → 同施策により1億5,400万円の経費削減が見込まれる 旨を口頭で説明(本件組合)→ Yに対し、資料の配布もない口頭での説明に留まることに抗議 → 経営状況に関する資料や根拠となる具体的な数字の提出を求めた。(しかし)→ Yからは上記数字しか発表できない旨の回答(平成21年5月14日)→ 従業員代表に対し、本件会社休日を廃止する就業規則の変更について説明 → 同年に入り輸出が5割減、輸入が2ないし3割減のために、さらなる経費削減が必要 → 本件会社休日の削減で中・長期的に安定した労働環境を保ち、他社との競争力を保つことが必要であることなどを説明 → Yは、同月20日には成田地区で、同月21日には関西空港で、同月25日には再び成田地区で、各日2回ずつ、「レッツ・トーク・ミーティング」を行い、延110名の従業員が参加(訴え)→ 会社の定める休日とされていた4日間を休日から削除した就業規則の変更には合理性がない。→ Yに対し、4日間を休日として行使できる地位にあることの確認を求めた。
1. 上記休日 :日本の祝日の他、「社員の誕生日、年末年始(12月30日、同月31日、1月2日、同月3日)、メーデー(5月1日)及びクリスマス(12月25日)」の7日間が休日と定められた。
2. 本件組合 :Xら(107名)は、Y日本支社のエアポート部門の業務に従事 → Yの日本支社の従業員で組織されるフェデラルエクスプレス日本支社労働組合に所属
3. APAC経費削減施策 :平成20年秋のリーマンショック以降の世界的な経済危機および21年度第2四半期における業績を踏まえて(21年1月)→ 役員及び取締役全員の同年2月1日付の基本給の恒久的5%削減要請 → 21暦年度における昇給停止、22年度末までの昇給停止策を内容とする。(平成21年4月)→ 役員および専門職全員の同年5月1日付の任意の基本給の恒久的5%削減要請、太平洋横断便の運航本数の減便、希望無給休暇制度の導入、海外駐在員などの本国帰国等の推進などを内容とする。
4. 争点 :本件就業規則変更は労働契約法10条所定の合理性の要件を満たすもの → XらとYとの間の労働条件が変更されたといえるか → 5つの観点から本件就業規則変更の合理性に検討を加えた。(①から④より)→ 本件就業規則変更は労働契約法10条所定の合理性の要件を満たすものとはいえない。→ Xらには、労働契約法10条による就業規則変更の拘束力は適用されず、Xらの労働契約の内容としては本件会社休日の4日間はいずれも休日のまま → Xらは本件会社休日を休日として行使することが出来る。
労働契約法10条 :使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。
① 合理性の有無につき、労働者の受ける不利益の程度 :本件就業規則変更により年間総労働日数が243日または244日 → 従業員の年間所定労働時間数は29時間程度増加 → これにより約2%の賃金カットと同様の効果が生じる。→ 土日祝日を除いた休日が7日から3日に減っている。(半数以上になっている。)→ 労働者の受ける不利益の程度は必ずしも小さいとはいえない。
② 労働条件の変更の必要性 :賃金カットと同様の効果を生じさせる本件就業規則変更は、「高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであることを要する」(一方)→ Yの業績は大幅に落ち込んでいる。→ Yにおいてこれに伴う経費削減施策を行う必要性があったことは認められる。(他方)→ 平成21年の後半以降は早い段階で回復傾向に転じている。→ 業績が落ち込んだとはいえ、未だ経営破綻に近い状況に至っているわけではない。(APAC経費削減施策に加えて)→ Yにおける独自の経費削減施策として本件会社休日の廃止を行う旨のYの判断はいささか性急すぎている感が否めず(就業規則変更)→ 上記不利益を労働者に法的に受任させることを正当化するまでの高度な必要性があるとは言い難いというべき
③ 変更後の就業規則の内容の相当性 :「代償措置その他関連するほかの労働条件の改善状況」および「同種時効に関する我が国社会における一般的状況」も引き続き考慮すべき(本件就業規則変更後)→ Yにおける年間休日日数は同規模、同業種の他社と比べて格別相当性を欠いているとはいえない。(少なくとも)→ 5月1日と12月30日については休日としている航空会社が過半数以上を占めている。→ 4日間のすべてを通常の労働日とすることについてはいささか相当とは言い難い。(代償措置)→ 変更後の就業規則の内容の相当性については当然に認められるというものではなく、相当性があるといえるのか疑問が残る。
代償措置 :なんも取られていない事などを指摘
④ 労働組合などとの交渉の状況 :「労働組合等」とは、多数組合、少数組合、過半数代表その他労働者を代表するもの等が広く含まれる。→ それらとの交渉状況全てが合理性の判断の際の考慮対象となると指摘 → それなりの具体的な資料を示したうえでの説明はなされていない。→ 本件就業規則変更について合理もなされていない。→ 意見を述べてもYがこれに対して十分な検討および対応をしていない。→ 十分に労使間の利益調整がなされた上で本件就業規則変更がなされたとは到底言い難い。(判決)→ 労働組合などとの合意がないことをもって直ちに合理性が否定されるというものではない。(しかし)→ 合理に至らなかった理由やその間の交渉状況などによっては合理性を否定する方向の一要素となる場合もある。
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