休職期間満了による退職
平成25年1月29日、この頃仕事が忙しすぎて、ろくに勉強ができていない自分を少し恥ずかしく思っています。
さて、今回の判例ですが、私傷病による休職に該当するか業務災害による労災事故か、今回のような「うつ病」では、実際の現場でも頭を悩ませる事があると思います。
今回の判例では、業務災害に該当しましたが、その考え方も勉強になると思いました。
(事件概要1)
Xは出勤したが体調が悪く、勤務先医師の診察を受けいったん帰宅 → 同日午後8時ごろ、出勤時間を誤って出勤 → 体調不良の様子だったので残業中の看護師Gが血糖値を図り、Xの希望もあって救急車で別の病院へ搬送 → 同年7月9日まで入院し、同月26日まで休職 → (ア)から(ウ)より不法行為(使用者責任)または安全配慮義務違反に基づき損害の賠償を求めた。
(ア) 休職期間満了による自然退職の効力を争い
(イ) 労働契約上の権利を有することの地位の確認
(ウ) Xが職場の上司および同僚からハラスメントを受けたことによりうつ病に罹患し、休業を余儀なくされた。
既往症 :糖尿病があり、入院当時、インシュリンを使用していなかった。
適応障害によるうつ病状態 :傷病手当の申請などについて書面を郵送 → 合計243万円を受領
職場復帰交渉 :担当医に復職可能時期などについて照会 → 不明とする診断書が提出(東大阪労基署長)→ 不支給決定(医師の見解)→ 発症原因は職場でのいじめや職場のパワハラ等
(争点)
① 業務上の疾病に当たるか否か :就業規則9条1項1号及び2項の「私傷病」とは、解雇制限の対象となる業務上の疾病でない場合をいうと解すべき(業務上の疾病とは)→ 労働災害補償制度における業務上の疾病かどうかと判断を同じくすると解される。→ 内在する危険を現実化したと認められ、相当因果関係にあることを要するとするのが相当
② 一連の説得活動により発症したものと認められるから、業務に内在する危険が現実化 → うつ病は「業務上」の疾病と認められる。→ うつ病が私傷病であることを前提とした自然退職は認められないというべき → Xの雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認の請求は理由がある。
③ Yの不法行為責任ないし安全配慮義務違反の有無 :Xのうつ病発症について不法行為責任を負うとして、Xの請求を認容(「糖尿病性ケトアシドーシス」による入院・休業についての安全配慮義務)→ Xが糖尿病の既往症があった事、インシュリンを使用していなかった事 → 長期の入院と休業を余儀なくされた原因は主にX側にあるというべき
民法715条1項(使用者等の責任) :ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
④ Xの被った損害の内容及びその額の4点 :不法行為と相当因果関係のある損害は、治療費、交通費、休業損害および慰謝料など合計640万6,573円であると判示し、その余の部分についてはXの請求を棄却
(うつ病の原因)
Xは、同年9月7日付でB1労組に対し脱退届を提出 → Iは、XがIに加入したことを伝える。→ I合同労組は、Bに対し嫌がらせやパワハラの防止に関する経営責任などの団交を申し入れた。→ 4回それぞれ45分から2時間程度、B1の組合員らは、Iに加入したことについてXを非難 → 脱退するよう説得(その際)→「ここの経営は組合がしてる」「これも業務のうちや」(説得活動)→ XがB1から脱退し、Iに加入した状態を続けた場合にはBで就業し続けることが困難となる可能性も示唆 → 職場での進退を迫られる状況であったことが認められる。→ 一連の説得活動は、Xに対し強い心理的負荷を生じさせたもの
説得活動 :いずれの説得活動もBセンター内で、就業時間中ないしそれに近接する時間内に行われている。→ 2回の話し合いには、Yの理事が2名出席している。(一連の説得活動)→ Yの支配下において行われたもの → 業務関連性が認められるというべき
過失相殺 :精神疾患の既往歴がない。うつ病を発症させる要因があったとは認められない。
さて、今回の判例ですが、私傷病による休職に該当するか業務災害による労災事故か、今回のような「うつ病」では、実際の現場でも頭を悩ませる事があると思います。
今回の判例では、業務災害に該当しましたが、その考え方も勉強になると思いました。
(事件概要1)
Xは出勤したが体調が悪く、勤務先医師の診察を受けいったん帰宅 → 同日午後8時ごろ、出勤時間を誤って出勤 → 体調不良の様子だったので残業中の看護師Gが血糖値を図り、Xの希望もあって救急車で別の病院へ搬送 → 同年7月9日まで入院し、同月26日まで休職 → (ア)から(ウ)より不法行為(使用者責任)または安全配慮義務違反に基づき損害の賠償を求めた。
(ア) 休職期間満了による自然退職の効力を争い
(イ) 労働契約上の権利を有することの地位の確認
(ウ) Xが職場の上司および同僚からハラスメントを受けたことによりうつ病に罹患し、休業を余儀なくされた。
既往症 :糖尿病があり、入院当時、インシュリンを使用していなかった。
適応障害によるうつ病状態 :傷病手当の申請などについて書面を郵送 → 合計243万円を受領
職場復帰交渉 :担当医に復職可能時期などについて照会 → 不明とする診断書が提出(東大阪労基署長)→ 不支給決定(医師の見解)→ 発症原因は職場でのいじめや職場のパワハラ等
(争点)
① 業務上の疾病に当たるか否か :就業規則9条1項1号及び2項の「私傷病」とは、解雇制限の対象となる業務上の疾病でない場合をいうと解すべき(業務上の疾病とは)→ 労働災害補償制度における業務上の疾病かどうかと判断を同じくすると解される。→ 内在する危険を現実化したと認められ、相当因果関係にあることを要するとするのが相当
② 一連の説得活動により発症したものと認められるから、業務に内在する危険が現実化 → うつ病は「業務上」の疾病と認められる。→ うつ病が私傷病であることを前提とした自然退職は認められないというべき → Xの雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認の請求は理由がある。
③ Yの不法行為責任ないし安全配慮義務違反の有無 :Xのうつ病発症について不法行為責任を負うとして、Xの請求を認容(「糖尿病性ケトアシドーシス」による入院・休業についての安全配慮義務)→ Xが糖尿病の既往症があった事、インシュリンを使用していなかった事 → 長期の入院と休業を余儀なくされた原因は主にX側にあるというべき
民法715条1項(使用者等の責任) :ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
④ Xの被った損害の内容及びその額の4点 :不法行為と相当因果関係のある損害は、治療費、交通費、休業損害および慰謝料など合計640万6,573円であると判示し、その余の部分についてはXの請求を棄却
(うつ病の原因)
Xは、同年9月7日付でB1労組に対し脱退届を提出 → Iは、XがIに加入したことを伝える。→ I合同労組は、Bに対し嫌がらせやパワハラの防止に関する経営責任などの団交を申し入れた。→ 4回それぞれ45分から2時間程度、B1の組合員らは、Iに加入したことについてXを非難 → 脱退するよう説得(その際)→「ここの経営は組合がしてる」「これも業務のうちや」(説得活動)→ XがB1から脱退し、Iに加入した状態を続けた場合にはBで就業し続けることが困難となる可能性も示唆 → 職場での進退を迫られる状況であったことが認められる。→ 一連の説得活動は、Xに対し強い心理的負荷を生じさせたもの
説得活動 :いずれの説得活動もBセンター内で、就業時間中ないしそれに近接する時間内に行われている。→ 2回の話し合いには、Yの理事が2名出席している。(一連の説得活動)→ Yの支配下において行われたもの → 業務関連性が認められるというべき
過失相殺 :精神疾患の既往歴がない。うつ病を発症させる要因があったとは認められない。
スポンサーサイト