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労基署長による休業補償と療養補償の不支給処分

今日は、顧問先様の次年度の雇用契約書作成と労働時間、労働日の打ち合わせに行ってきました。

固定の時間外労働を付けたり、計画年休などで対策を打っていますが、本当に現法律は、中小企業には出来ないと思う今日この頃です。

さて、本日の判例は、業務災害に関する業務起因性を争った内容です。

当たり前のように、業務起因性について、考察を行なっています。



(事件概要)
X(A社の従業員)は、平成7年4月から、使用後のガスボンベに残っているガスを抜き取り、検査、洗浄、再塗装などといったガスボンベの再生作業に従事 → 12年12月16日の就労を最後に休職(13年12月31日)→ Aを退職 → Y労基署長に対し、Aの作業場内においてガスボンベ再生作業に従事したため科学物質過敏症を発症 → 休業補償並びに療養補償の保険給付を請求 → Yは、Xが発症した傷病は業務との相当因果関係が認められないとして、休業補償と療養補償のいずれについても不支給とする本件処分(平成15年4月)→ 行政不服申し立ての手続き → 審査請求を棄却(16年2月27日)→ 再審査請求を行い、この請求は同年4月30日に受理(同年6月12日)→ 本件取消訴訟を提起 → 相当因果関係を否定して不支給とした本件処分は違法として取消

(考察)
再審査請求が受理された日から3ヶ月を得ないうちに提起された本件訴えは不適法なものとして却下されるか :訴え提起の時点で不適法であったとしても受理の日から3ヶ月を経過した時点 → 瑕疵が治癒されると解するのが相当

業務起因性 :XがAでの業務に従事する中で化学物質過敏症に羅患したと認定(労働基準法施行規則別表第1の2)→ 第1から8号については、業務起因性の推定が働く(9号)→「補償給付の請求者側で、業務との因果関係を具体的に立証しなければならない。」(化学物質過敏症)→ 赤外線瞳孔検査、重心動揺検査及び、付加テストも陽性(症状)→ 最初は症状が少なく、次第に多様な症状が出てくる傾向(症状経過)→ 平成9年頃から平成13年に至るまでそのような経過をたどっている。→ 5年半もの期間にわたり有機溶剤にかなりの程度曝露されていたと認められる。→ 羅患していたと認めるのが相当
① 平成7年10月頃以降9年4月までの時期、ボンベの数が増えた。→ 毎日と総作業をしていた。
② 塗装を終えたボンベが数十本以上、乾燥を終えるまで置かれていた。
③ 有機溶剤や塗料を入れた缶が密閉されずに置かれていた。→ これらが常に蒸発
④ 廃棄設備がない。(9年5月)→ 自動塗装となった局所排気装置が取り付けられた。(12年4月と14年6月)→ 換気扇が取り付けられた。
⑤ 塗装機を導入する以前は屋外で塗装作業をしていた。→ 冬の寒い時期や雨の降り込むときは窓を閉めたりシャッターを閉めたりする。→ 工場内で作業をすることもあった。
⑥ 作業環境測定では管理濃度以下(測定当日)→ 局所排気装置・換気扇・扇風機が稼動 → 出入口ないし窓を開けた状態(当該測定結果)→ 作業状況を忠実に再現していることは出来ない。→ 作業していた当時の作業環境においては、上記測定結果よりもトルエンなどの化学物質がより高い濃度で存在していたものと推認
⑦ 噴出したシンナーがXの顔面に当たって右目に入り眼科を受診 → 右角膜科学傷と診断されたことがあるが、当日だけ治療を受けるにとどまったこと(当日のみ)
⑧ 14年7月11日、FはYから求められ、Xの症状は「化学物質過敏症」との意見書を提出→ 現在に至るまで診断基準として普遍性を持ったものとはなっていない。
 化学物質過敏症 :統一的な定義や診断基準が認められているわけではない。→ 原因となる化学物質に暴露されることにより反応して症状が現れ、その後微量の化学物質であっても再接触の場合に再び過敏状態として症状が現れるような病態がある。→ それほど異論があるわけではなく、一般に医師らは合意事項や具体的診断基準を参考に診療に当たっている状況にある。→ 化学物質過敏症の存在は肯定

(化学物質過敏症の経緯)
就職間もない平成7年9月頃から体調不良を訴えて各種医療機関を受診(休職期間中の13年4月18日)→ C病院のD医師から「化学物質過敏症の疑いもある。」と診断 → Dは、E病院アレルギー科のF医師を紹介 → Fに診断を依頼(13年12月)→ Fは、ホルムアルデヒド、キシレン、トルエンを使用した負荷テストを行なった。(本件負荷テスト)→ G医師は、病状説明書において、「化学物質過敏症としてよい」と報告
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