(事件概要)
東電に雇用されていたXが、傷病により休職し、就業規則の定めに基づく休職期間の満了により雇用契約が終了し、退職したとされたのに対し、休職期間満了時に復職が可能であったと主張
(判決)
原告Xについて休職の事由が消滅したというためには
① 休職前の業務が通常の程度に行える健康状態
本件)→ 提示に勤務できる状態にまで回復していたとはいえない。
② 当初軽易作業に就かせれば、ほどなく上記業務を通常の程度に行える健康状態
本件)→ 認めることもできない。
③ ①、②が十全にできないとき、Xと同職種、同程度の経歴のものが配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務を提供する事
本件)→ 現実的可能性があると認められる部署が存在したと認めることは出来ない。
④ Xがその提供を申し出ている事
が必要
地位確認請求が退けられた。
(事件概要)
Y協会の従業員Xが、精神的領域における疾病による傷病休職の期間が満了したことにより解職
(1) 同期間満了前に精神的領域における疾病が治癒し、休職の事由が消滅しており、解職が無効であり、
① 労働契約上の権利を有する地位の確認
② 休職期間経過後の賃金及び賞与の支払を求める。
③ テスト出局開始から傷病休職満了までの期間について、給与規定による賃金及び、これに対する遅延損害金の支払い
④ 不法行為に基づく損害賠償金及び、遅延損害金の支払い
(判決)
<違法性>
本件テスト出局を無休で実施したことに問題が認められるが、健保から傷病手当金等が支給されていることなどに鑑みると、本件テスト出局が無給であることをもって、違法であるとまではいえない。
<賃金請求権>
休職者は事実上、テスト出局において業務を命じられた場合にそれを拒否することは困難な状況
単に本来の業務に比べ軽易な作業であるから賃金請求権が発生しないとまではいえない
当該作業が使用者の指示に従って行われ、成果を使用者が享受している場合、労働基準法11条の規定する「労働」に該当する。
最低賃金法の適用によりテスト出局については最低賃金と同様の定めがされたものとされる。
賃金請求権が発生する。
最低賃金法4条2項 :労働契約で最低賃金に達しない賃金を定めるものはその部分について無効となり、最低賃金となる。
Xの行った作業が、X処遇区分の賃金に相当する対価に見合う労務を提供したものと認めることは困難
本来の債務の本旨に従った労務の提供を行ったとはいえず、職員給与規程による賃金の支払請求は認められない。
(事件概要)
Xらが、割増賃金として支払っていた運行時間外手当は労基法37条に定める割増賃金に当たらないと主張
賃金規程
乗務員については、時間外手当は運行時間外手当として支給
運行時間外手当=Y社が受託先から得る運賃収入に70%を乗じた額に一定の率を乗じて得られる額の方が多かった場合には、時間外手当相当額として支給
労基法37条等に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払う事を義務付けられるにとどまる。
運行時間外手当も、実労働時間を基礎に労基法37条所定の計算方法によって算出した割増賃金の金額に不足する場合には、その差額をXらに取得させることとされていた。
同条に違反する点はない。
(考察)
固定残業の考え方について記載されている判例であり、参考になる。
(事件概要)
Y社に雇用され、薬剤師として勤務していたXが、時間外労働、休日労働及び、深夜労働に対する賃金ならびに付加金などの支払いを求めた。
終業時間は休憩時間を除き1日8時間又は4時間で週40時間
日曜日並び祝日等を休日
基本給46万1,500円
業務手当10万1,000円(みなし時間外手当)
時間外手当は、みなし残業時間を超えた場合はこの限りではない
業務手当は、固定時間外労働賃金(時間外労働30時間分)
(判決)
労基法37条の趣旨
時間外労働等について割増賃金を支払うべきことを使用者に義務付けている。
使用者に割増賃金を支払わせることによって
① 時間外労働等を抑制
② 労働者への補償を行なおうとする趣旨
労基法37条が求めているのは、
同条ならびに政令及び厚生労働省令の関係規定に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払う事にとどまる
定額残業代の支払いを法定の時間外手当の全部または一部の支払いとみなすことができるのは、
① 定額残業代を上回る金額の時間外手当が法律上発生した場合にその事実を労働者が認識して直ちに支払いを請求することができる仕組み
② 発生していない場合にはそのことを労働者が認識することができる仕組み
③ 基本給と定額残業代の金額のバランスが適切
④ 労働者の福祉を損なう出来事の温床となる要因がない場合
⑤ 使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容、労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの事情を考慮して判断すべき
に限られる。
時間外労働等に対する対価として定額の手当を支払う事により、同条の割増賃金の全部又は一部を支払うことができる。
具体的判断)
第1
本件雇用契約書及び採用条件確認書並びに賃金規程の記載
X以外の各従業員とY社との間での確認書の記載から、業務手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものと位置付けられていた。
第2
業務手当は約28時間分の時間外労働に対する割増賃金に相当するものであり、Xの実際の時間外労働等の状況と大きくかい離するものではない。
Xに支払われていた定額の業務手当は時間外労働等に対する対価として支払われるものとされていたと認められる
当該手当の支払いをもって時間外労働等に対する賃金の支払とみることができる。
(事件概要)
平成24年1月頃 Y大学のハラスメント相談員に対し、D,E,FはXからパワハラを受けている旨相談
同月27日 Xに対し、労基法違反となるような行為は辞めるよう依頼
同年2月20日、3月14日 Xと面談し、調査委員会を立ち上げる可能性、調査の結果、ハラスメントの存在が認定されれば、議決を経て処分されることを説明
同年5月11日 Xと面談、平成24年4月8日付で調査委員会を設置し、事情聴取や聞き取り調査
平成26年9月18日 パワハラ、セクハラを行ったこと、改善指導を受けたにもかかわらず、非違事由
論旨解雇とする旨の審査説明書を交付することを決定
同月25日 同審査説明書を交付
同年10月7日 Xは、陳述請求書と共に懲戒処分をしない事、緩やかな懲戒処分を選択すべきことを求める陳述書を提出
同月15日 Yに対し、口頭での意見交換を求めるための要請書を提出
同月22日 Yは、陳述を受理したが、意見交換の必要性がないものと判断
同年11月20日午前9時30分頃 Xに対し、論旨解雇の応諾所又は応諾拒否所のいずれか一方にサインをするように求めた。
Yは、Xに対して、決定を保留することは認められない事等を告げ、
Xがこのまま帰宅した場合、Yは、Xが論旨解雇に応諾しなかったものとして懲戒解雇することになる旨を告げた。
同日午前10時30分頃 応諾書にサインすることなく帰宅する意向を示したため、懲戒解雇処分とする旨を告げて、懲戒処分所および処分説明書を交付
<懲戒事由>
① 業務の適正な範囲を超えた勤務時間に関する不適切な発言
② 業務の適正な範囲を超えた指導・叱責あるいは侮辱・ひどい暴言のパワハラ
③ 女性を蔑視したセクハラ発言
④ 私的な事に対する過度な立ち入り
⑤ 他のものを不快にさせるセクハラ
⑥ 他大学公募への応募や留学の強要など
Y大学と労働契約を締結していたXが、パワハラ及び、セクハラ等を理由とする解雇は無効であると主張
Yに対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認
賃金、期末手当、勤勉手当の支払いを求める。
YがXに対する論旨解雇処分を懲戒解雇処分に強行的に切り替えた行為により、意思決定の機会を奪われた。
精神的損害を被ったと主張
民法709条に基づく損害賠償請求として、慰謝料100万円を求めた。
民法709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害したものは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
判決)
懲戒解雇の手続きが違法であったとしても、手続き的瑕疵は軽微なものであり、懲戒事由の悪質性等に留意して本件懲戒解雇の有効性を検討
ハラスメントに当たると評価された各行為が就業規則所定の懲戒事由に該当することを認めた。
Xのハラスメント等の悪質性が高いとは言い難い。
Xには過去に懲戒処分歴がない
ハラスメントの一部を認め、反省の意思を示していた
懲戒処分として最も重い処分であり、即時に労働者としての地位を失う。
大きな経済的および社会的損失を伴う懲戒解雇とすることは、Xの懲戒事由との関係では均衡を欠く。
社会通念上相当性を欠くといわざるを得ない。
論旨解雇を本件懲戒解雇に切り替えた行為が不法行為を構成することを肯定
精神的損害に対する慰謝料を認め、金額としては15万円が相当