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労基法19条1項適用の有無と解雇の有効性


(考察)
労基法19条1項について、明確な説明をしてもらえた判例である。

(事件概要)
Y社では週末出勤は認めないとの指示が繰り返し行われ、残業や休日対応については事前承認が必要とされていた。
Xは事前承認を得ることなく休日出勤をしたり、深夜又は早朝まで勤務したりすることを繰り返し行っていた。
平成25年2月9日午後10時頃 Xは、Y会社内の29階で転倒して左足を骨折する事故に遭った。
本件事故については労災保険法による業務災害に関する保険給付の支給決定がされている。

平成25年5月29日 解雇予告通知書をもってXを解雇する旨を通知
<解雇事由>
 勤務態度が悪く、業務命令に従わない等、会社からの再三の注意、指導にも応えようとしないこと
 その改善の見込みがないこと

Xが平成25年6月29日付解雇は無効であると主張
労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めた。

(判決)
<労災事故の有無>
AがXに対して9日の休日出勤を指示したとはいえないものの、事前承認を得ずに勤務することの多いXが宿題提出のために休日出勤をすることは想像に難くなく、許容していたといえる。
業務起因性がある。

<本件解雇の有効性>
労基法19条(解雇制限)
1. 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第81条の規定によって打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、この限りでない。

事故があったとされる日から解雇を通知し以後の就労を免除した日までの間において、Xは午前給や全休の取得を主張するものの、Xの主張する日は勤務実績がある。
休業の事実が認められず、労働基準法19条1項の解雇制限の適用がない。
労基法19条1項はあくまで業務上の傷病の「療養のために休業する期間」の解雇の意思表示を禁止している規定である事は文理上明らかである。

Y社は、勤務改善指導書を交付する等、再三にわたってXに対する注意指導を行った。
XはYが指摘した事項に該当する事態については思い当たらないとした。
具体的なエピソードを指摘して業務遂行上・勤務態度につき重大な指摘を受けている。
Xからは反省の言がなく、上司などの教育指導に真摯に向き合っていないと言わざるを得ない。
客観的に合理的理由があり、本件解雇は有効である。

定年退職後の有期労働者の労契法20条違反の有無

(考察)
定年再雇用による賃金の調整が否定されたわけではないが、話し合いを持つ必要と皆勤手当については継続して付帯した方が良いと思われる。

(事件概要)
Xらは、定年前にはY社と無期労働契約を締結し、バラセメントタンク車の乗務員として勤務
満60歳で定年退職後、有期労働契約を締結し、嘱託社員としてバラ者の乗務員として勤務

Y社を定年退職した後、有期労働契約を締結して就労しているXらが、
無期労働契約をYと締結している正社員との間に、労契法20条に違反する不合理な労働条件の相違が存在すると主張

主位的に
正社員に関する就業規則等が適用される労働契約上の地位にある事の確認を求める。
差額及び、これに対する遅延損害金の支払いを求める。

予備的に
不法行為に基づき上記差額に相当する額の損害賠償金及び、遅延損害金を請求

<賃金体系>
正社員 →再雇用者(26年4月1日付改定)
基本給 →基本給(月額12万5,000円)
能率給 →調整給(老齢厚生年金の報酬比例部分が支給されない期間について月額2万円)
職種による職務給 →歩合給(職種により7から12%)
精勤手当(5,000円) →×
判決)精勤手当はその支給要件及び内容に照らせば、従業員に対して休日以外は1日も欠かさずに出勤することを奨励する趣旨で支給される
嘱託乗務員と正社員との職務の内容が同一である以上、両者の間で、その皆勤を奨励する必要性に相違はないというべき
労契法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当

無事故手当(5,000円)
住宅手当(1万円) →×
家族手当 →×
役付手当 →×
時間外労働等の超勤手当
嘱託乗務員の時間外手当の計算の基礎には精勤手当が含まれないという労働条件の相違は、不合理であると評価することができる。

通勤手当
賞与 →×
3年以上勤務した乗務員に退職時に退職金を支給 →×

(判決)
<高年齢法>
60歳を超えた高年齢者の雇用確保措置を義務付けられており、定年退職した高年齢者の継続雇用に伴う賃金コストの無制限な増大を回避する必要がある
定年時より引き下げることそれ自体が不合理であるという事は出来ない。

定年退職後の継続雇用において職務内容やその変更の範囲等が変わらないまま相当程度賃金を引き下げることは、Y社が属する業種又は規模の企業を含めて広く行われている。

<労契法20条>
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

有期契約労働者が定年退職後に再雇用されたものであることは、労契法20条にいう「その他の事情」として考慮される。

当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきものと解するのが相当

労契法20条に違反する場合、同一のものとなるものではないと解するのが相当

精勤手当及び、超勤手当(時間外手当)に係るXらの主位的請求は理由がない

予備的請求について
不法行為に基づく損害賠償として、損害賠償金及び遅延損害金の支払い義務を負う。

正社員と契約社員の労働条件の相違

(事件概要)
Y社と有期労働契約を締結して勤務しているXが、
無期契約を締結している正社員とXとの間で、
無事故手当、
作業手当、
給食手当、
住宅手当、
皆勤手当、
通勤手当、
家族手当、
賞与、
定期昇給、
退職金

に相違があることは労契法20条に違反しているなどと主張

・労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認めらえるものであってはならない。

(訴え)
① 正社員と同一の権利を有する地位にあることの確認を求める
② 主位的に、平成21年10月1日から27年11月30日までの間に正社員に支給された本件諸手当との差額の支払いを求め、
予備的に、不法行為に基づき、上記差額に相当する額の損害賠償を求める。

契約社員と正社員との間に相違はなく、当該業務に伴う責任の程度に相違があったとの事情もうかがわれない。

<正社員就業規則>
配転条項 :業務上必要がある場合は従業員の就業場所の変更を命ずることができる旨の定めがあり、正社員については出向を含む全国規模の広域異動の可能性がある
等級役職制度 :公正に評価された職務遂行能力に見合う等級役職への格付けを通じて、従業員の適正な処遇と配置を行うと共に、教育訓練の実施による能力の開発と人材の育成、活用に資することを目的として、等級役職制度が設けられている。

<契約社員就業規則>
配転条項 :配転又は出向に関する定めはなく、就業場所の変更や出向は予定されていない。
等級役職制度 :設けられていない。

(判決)
無事故手当、
作業手当、
給食手当、
通勤手当、
→ これらは不法行為に当たると判断

住宅手当 :不合理と認められるものに当たらない
正社員については、転居を伴う配転が予定されているため、契約社員と比較して住宅に要する費用が多額となり得る。
正社員に対して上記の住宅手当を支給する一方で、契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は、不合理であると評価することができるものとはいえない。

皆勤手当 :不合理と認められるものに当たらないとした判断は是認できないとして、高裁に差し戻し
Y社の乗務員については、契約社員と正社員の職務の内容は異ならないから、
出勤する者を確保する事の必要性については、職務の内容によって両者の間に差異が生ずるものではない。
労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当

<差額賃金請求>
① 労契法20条は、職務の内容等の違いに応じた均衡の取れた処遇を求める規定である。私法(私人としての利益や関係について規定した法律)上の効力を有し、有期労働契約のうち同条に違反する労働条件の相違を設ける部分は無効となる。
② 同条の効力により当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなるものではないと解するのが相当
③ 労契法20条に違反する場合、正社員の定めが契約社員であるXに適用されることとなると解することは、就業規則の合理的な解釈としても困難

→ 本件確認請求及び本件差額賃金請求は理由がない。

<損害賠償請求>
① 両者の労働条件の相違が不合理であるか否かの判断は規範的(何が理想で何が理想でないかに則って)評価を伴うものである。
② 当該相違が同条に違反することを争うものが、それぞれ立証責任を負うものと解される。



社保庁廃止に伴う分限免職処分の取消請求

(事件概要)
A3は、うつ状態により、20年6月から病気休暇を取得し、同年12月10日から休職
A1は、19年4月27日、3か月間棒給の月額の10分の1を減給する懲戒処分
A2は、17年12月27日で、1か月間棒給の月額の10分の1を減給する懲戒処分

日本年金機構職員の社保庁職員からの採用について
 懲戒処分を受けたものは採用しない
 職務遂行の支障のない健康状態である事
 心身の故障により長期にわたって休養中のものについては、回復の見込みがあり、長期的にみて職務遂行に支障がないと判断される健康状態である事

社会保険庁が廃止
国Yの処分行政庁である社会保険庁長官および同東京社会保険事務局長、事務承継者厚生労働大臣が、国家公務員法78条4号に基づいて、

国公法78条(本人の意に反する降任及び免職の場合)
意に反して降任し、又は免職することができる。
4号 :官制(行政官庁の規定)もしくは、定員の改廃又は予算の減少により、廃職又は過員を生じた場合

平成21年12月25日付で同月31日限り社保庁の職員であったXらを分限免職(分限は身分保障の限界、本人の意に反して免職)する旨の各処分

(訴え)
本件処分の取消を求める。
国家賠償法1条1項または民法415条に基づく損害賠償

国公法1条1項 :公務員が故意又は過失によって損害を加えた時は国が賠償する責を負う。
民法415条 :債務不履行による損害賠償

(判決)
本件各処分は、国公法78条4号の要件を満たす。
処分権者である社保庁長官などは、最終的な分限免職処分の段階に至るまでに、可能な範囲で、廃職の対象となる官職に就いている職員について、機構への採用、他省庁その他の組織への転任又は就職の機会の提供などの措置を通じて、分限免職処分を回避するための努力を行うことが求められる。

省略①から⑫の取組が行われている。
国公法78条4号の廃職を理由とする分限免職処分に先立って行うべき分限免職回避のための努力を行っていたという事が出来る。

裁量範囲を超え又はこれを濫用してA1及び、A2に対する本件処分をしたという事はできない。

A3における損害賠償請求権
Yが消滅時効を援用したことにより消滅したというべきである。
請求を退けた。

国賠法1条1項に基づく損害賠償請求につき、国賠法4条、民法724条前段に基づく消滅時効を援用

民法724条 :不法行為による損害賠償請求権の期間の制限
知ったときから3年間行使しないと消滅

市職員の自殺と公務起因性

(事件概要)
平成19年11月 勤務時間中に市庁舎から飛び降りて死亡
公務外災害認定処分について、取消を請求
(一審判決)
本件処分を取り消ししたため、Yが控訴
(二審判決)
Yの控訴を棄却

(詳細)
公務起因性について
 公務と疾病の間に相当因果関係を要し
 相当因果関係があるといえるためには、その疾病が公務に内在又は随伴する危険が現実化したものであることを要する
公務起因性の判断
 強度の精神的または肉体的負荷を与える事象を伴う業務に従事したために精神および行動の障害又はこれに付随する疾病が生じた場合といえるかを判断
 本人を基準とするのは相当でなく、平均的な職員を基準とすべき
 平均的な職員を基準として、心理的負荷の有無や程度を判断するのが相当
<平均的な職員>
完全な健常者のみならず、一定の素因や脆弱性を抱えながらも勤務の軽減を要せず通常の公務につき得る者を含む
(本件)
精神的負荷は一般的にみても強度の域に達していた
① 他の室長と比べると精神的、肉体的負荷が大きかった
② 具体的業務は相当程度負荷の大きいもの
③ 上司との関係が強い精神的負荷となっていたこと
④ 公園の設備計画をめぐる技術職職員らとの対立による強度の精神的負荷があったこと
⑤ 異動の希望がかなわないまま、事故対応や議会対応があったため休むことができなかったこと
⑥ 業務以外の精神的疾患を生じさせるような問題はなかった
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Author:roumutaka
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